2020年1月15日

弘進ゴム
新春トップインタビュー

“空中戦”と”地上戦”で販路を拡充

【昨年を振り返って】
今期の上期(2020年5月期、2019年6月―11月)の業績については、売上高は64億1100万円(前年同期比1・8%減)となり、計画未達で折り返した。部門別の内訳では、SW(シューズ・ウェア)部門が売上高37億4900万円(同1・6%減)、化工品部門が売上高26億9200万円(同2・1%減)となり、そのうち工業用品(ホース)が売上高20億4300万円(同4・3%減)、シート製品など産業資材が売上高6億4900万円(同5・7%増)となった。

シューズ製品は、昨年9月まで計画通り順調に推移したが、10月以降は台風など悪天候による消費の冷え込みや、想定していた以上の消費増税後の反動減に見舞われ、近年では例を見ないほど急速な落ち込みを見せた。商品別に見ると、厨房用シューズは堅調を維持したが、暖冬によって秋冬ものの動きが例年に比べて弱く、ゴム長靴、安全スニーカーも一時の勢いがなかった。量販店においては、業態を変更した一部のワークショップ以外は苦戦を強いられており、市場全体に及ぶ低迷も急ブレーキの背景にあると感じている。

一方、化工品部門においては、これまで自動車および建機向けのおう盛な需要に支えられきたが、ここに来て米中貿易問題による中国、東南アジアの減速の影響を受け、建機向けホースが伸び悩んでいる。また、自動車用ホースもユーザーが台風でサプライチェーンを寸断され、減産を余儀なくされたことで当社の受注にも陰りが表れた。台風被害の復旧需要でサクションホースは量が出ているが、全体的には不透明感が強まっており、楽観できない状況が続いている。収益面では、為替の円高による輸入商品の調達コスト低減や価格改訂効果によって計画を上回る水準の利益を出せているものの、今後は売り上げの確保が大きな課題になると考えている。

【通期の見通しと今後の取り組みについて】
今期は前期比2%アップの売上高132億円を目標に掲げており、シューズ・ウェア部門の売上高は同1・5%増の78億円、化工品部門の売上高は同1・6%減の54億円の計画で推進している。下期以降も市況の減速から苦戦を想定しており、今後の売上高の拡大に向けては大手量販店との取り組みを再構築し、改めて売り場の確保に努めていく必要があると考えている。また、大手作業服専門店の躍進やスポーツメーカーの参入で競合が激化する中、当社としてもメジャーなコンテンツを武器に新たなカテゴリーでの展開を図っていく。

「ハマー」は当社において唯一成功しているブランドビジネスだが、今年3月から販売を開始する「ウルトラマンブランド」も、それに次ぐものに育て上げていきたい。

化工品部門では災害復旧工事におけるサクションホースの引き合いが強い。そのほかの案件も含めてタイムリーな供給で需要を着実に取り組んでいくため、工場ではフル生産で対応している。

【ネット販売の取り組みについて】
売上高に占める割合はまだ高くないが、ネットによる販売は年々大きな伸びを示しており、その傾向は今後も拡大していくと思う。業務用通販サイトを中心に展開しており、さらに注力していく方向性で考えている。流通の変わり方もワーク商品に限ったことではなく、いかに当社の商材をeコマースにマッチさせていくかを検討している。ユーザーにどのルートで製品を供給するのかバランスをとっていくことも重要だと考えており、既存の売り場も大切にしながら、〝空中戦〟と〝地上戦〟で販路を拡充させていきたい。

【労働力不足の対応と自動化や効率化に向けた取り組みは】
昨年は初めて春先から採用活動を行ったが、生産現場、一般職を含めて14名ほどの若手を獲得することができた。本社のある宮城県仙台市は受け皿となる大企業が少ないため、首都圏に就職先を求める人も多く、採用にあたっては2017年に仙台市陸上競技場(弘進ゴムアスリートパーク仙台)の施設命名権を獲得したことも効果があったと思う。

生産現場においては、労働力の不足を補うためにではなく、自動化・省人化を進めていきたいと考えている。前後の工程や運搬作業など付加価値を生んでいない作業は自動化を図り、手の空いた人員をより付加価値の高い仕事へと振り向けていく。将来的にはAI、IoTも導入し、販売、間接部門も機械で可能な仕事は機械に任せて、生まれた時間を有効活用する取り組みで効率化を図りたい。

【注力製品の展開について】
機能による差別化商品としては、国産P.V.Cブーツ「ハイブリーダーガードHB―500」が注目を浴びている。もともとは鳥インフルエンザなど畜産の防疫対策で開発した商材だが、新開発の〝クリーンウェーブソール〟により泥や汚れが詰まりにくく、付着した汚れも落としやすいなど、優れた衛生機能を搭載している。さらには耐滑性も抜群なことから、畜産だけではなく農林業や食品関係でも高い評価を獲得しており、今後の拡大に期待を寄せている。クリーンウェーブソールは厨房用シューズにも搭載しており、「シェフメイト クリーンウェーブソール」として展開している。

【今年の抱負と展望を】
シューズ・ウェア、化工品の両部門で自社生産品の販売を伸ばし、国内工場の稼働率を上げることで利益を出していきたい。

一方、海外展開にも引き続き取り組んでいく。中国をはじめ、韓国、東南アジアはこれから大きな伸び代が見込める。国産製品の品質と高付加価値をキーワードに、さらに販売の拡大を目指したい。