2020年3月15日

ランクセス
植物系ゴム用加工助剤追加

タイヤ製造CO2削減

金沢工業大学革新複合材料研究開発センター(ICC)と産業廃棄物処理・リサイクルを手掛ける三栄興業(本社・埼玉県三郷市、鈴木義弘社長)は、金沢工大COI(平成25年度国立研究開発法人科学技術振興機構センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム採択「革新材料による次世代インフラシステムの構築~安全・安心で地球と共存できる数世紀社会の実現~」(中核機関・金沢工業大学)の一環として、従来の炭素繊維複合材料よりも強度が高く、帯電防止特性を持つ新規の熱可塑性炭素繊維複合材料を開発した(特開2018―145245「炭素繊維複合材料」)。

金沢工大COIでは炭素繊維に含浸させる樹脂として、成形加工性が良く、リサイクル可能な熱可塑性樹脂の利用を促進しており、熱可塑性樹脂でも最も生産量が多いポリプロピレン(PP)に注目し、研究に取り組んでいる。今回開発された熱可塑性炭素繊維複合材料は高比強度、高比弾性率などの機械的特性が要求される自動車や航空機関連の部材や建材などでの用途が期待されるほか、静電気などの帯電防止性能が高いレベルで求められる半導体などの精密部品の成形分野で利用価値が特に高く、今後の需要が見込まれている。

炭素繊維と樹脂を混ぜると軽くて強い材料となり、省エネルギーが求められる航空機や自動車分野での用途が近年進んでいる。その一方、炭素繊維と樹脂は一般的には相性が良くないため、上手に混ざらないことが多く、強度の面において課題となっていた。また樹脂は電気絶縁性を有するため、半導体や電子部品などの精密部品の分野では、静電気などを帯電しない、導電性に優れた複合材料が特に要求されている。炭素繊維と樹脂を混ざりやすくする「相溶化剤」として、従来から無水マレイン化ポリプロピレン(MAPP)が使用されているが、MAPPを用いた複合材では炭素繊維と樹脂間は面ではなく点で接着するため、界面接着性が十分でなく、導電性も十分に得られないという問題を抱えていた。複合材の界面接着性を向上させるためにMAPPを大量に添加しなければならないが、MAPPの配合量を増大させると、複合材の導電性が低下してしまうという問題もあった。

ICCと三栄興業の研究チームが共同開発したiPP―PAA(アイソタクチックポリプロピレンポリアクリル酸共重合体)は炭素繊維と樹脂間が面で結合する相溶化剤で、少量でも界面接着性が向上するため、優れた機械的特性が得られるだけでなく、導電性にも優れた複合材を可能にした。さらに本発明によって、炭素繊維の繊維長が0・1~50㍉の短繊維でも剛性が保てるため、熱可塑性炭素繊維複合材料としての射出成形や押出成形などの成形性も向上し、幅広い分野での用途の拡大が期待される。