2020年4月15日

業界の新型コロナ関連の動向
デンカ
「アビガン」原料 マロン酸ジエチルを生産

デンカ(山本学社長)は、日本政府の要請を受け、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID―19)の患者を対象とした抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠(一般名はファビピラビル、以下、アビガン)」の原料となるマロン酸ジエチルを供給することを決定した。同社が新潟県糸魚川市で稼働ざせている青海工場において、来月より生産を開始する予定。同社では、新型コロナウイルス感染症への対策を社会的責務ととらえ、迅速に生産体制を構築。確実な供給を図っていく方針。

アビガンは、富士フイルム富山化学(岡田淳二社長)が開発した抗インフルエンザ薬で、COVID―19への治療効果も期待されている。COVID―19は現在、治療法が確立されていない疾患で、急速かつ世界的な感染拡大を受けて、3月11日には世界保健機関(WHO)がパンデミックを表明するなど、有効な治療法の早期発見と開発が急務となっている。今回、アビガンの国内薬事承認を進めている日本政府によって、国内での一貫した供給体制を構築する目的から、国産の原料を使用したいとの要請を受け、マロン酸ジエチルの供給を決定した。

マロン酸ジエチルは、合成香料・農薬・医薬品などの原料として使用される有機化合物で、アビガンの原料。デンカは国内唯一のマロン酸ジエチルメーカーであり、その原料となるモノクロル酢酸も国内で唯一、デンカ関連会社のデナックが生産している。デンカのグループ内で、原料から最終製品に至る一貫生産体制の下、2017年4月までマロン酸ジエチルの生産を行ってきた。これからのマロン酸ジエチルの生産にあたっては、17年4月まで使用していた設備を再稼働させる必要があり、他の製品の生産ラインから人員配置や転換などによって振り向けるなど一部製品の減産などといった一時的な影響も予想される。現時点では未定ながら、今後の精査により開示すべき事項が発生した場合は、速やかに公表される。