2020年5月10日

日本ゼオン
2020年3月期決算

高機能材料事業過去最高益
光学フィルム等堅調

日本ゼオン(田中公章社長)は28日、音声ライブ配信により「2020年3月期決算説明会」ならびに「中期経営計画進捗状況(SZ―20PhaseⅢ)」「新型コロナウイルス感染症への対応」のテーマで中期経営計画の進ちょく状況を説明した(4面に詳細記事)。決算説明は同社の松浦一慶取締役執行役員が担当し、田中社長は中計の経過報告と諸問題への対応策について説明した。

決算説明によると、売上高は前期比4・6%減の3219億6600万円、営業利益は同21・2%減の261億400万円、経常利益は同20・9%減の287億4400万円、当期純利益は減損損失などの特別損失が減少したことにより、同9・4%増の202億100万円となった。取り巻く概況としては、エラストマー素材事業は世界経済減速、市況軟化の影響で鈍化。その一方で高機能材料事業は高機能樹脂関連、電池材料の販売が堅調に推移したことで売上高、営業利益ともに増加し、利益面は過去最高となった。新型コロナウイルスによる、直接的な業績への影響は軽微で、同社の中国生産拠点は2月10日から順次操業を再開し、以降は平常通りの操業を維持している。

セグメント別では、エラストマー素材事業部門の売上高は同9・7%減の1788億4700万円、営業利益は同45・5%減の96億4200万円。営業利益にける損益要因は、原料価格の下落により46億円、販管費減で7億円のプラス要因があったものの、原料価格に連動した単価下落(合成ゴム、ラテックス)ならびに市況軟化で89億円、為替差損18億円、数量差で27億円のマイナス要因により減益となった。合成ゴム関連では、自動車産業向けを含む一般工業品用途の需要が弱く、国内販売・輸出・海外子会社とも低調に推移。合成ラテックス関連では、経済減速の影響による化粧品材料や一般工業品用途などの需要減に加え、原料動向に連動した手袋用途の販売価格下落により、全体の売上高、営業利益はともに前期を下回った。化成品関連では、主力の水島工場における定期検査の実施に伴い、生産量見合いの出荷を継続。アジア市況が軟化したことも重なり、全体的に伸び悩んだ。

高機能材料事業部門全体の売上高は同7・8%増の917億4900万円、営業利益は同7・4%増の173億1100万円。営業利益における損益要因は、出荷増加による運賃の上昇、包装費などの増加ならびに光学フィルムの開発試作関連費の増加がかさみ販管費増で34億円、価格差で9億円、為替差損による4億円のマイナス要因があったものの、光学樹脂、光学フィルム、電池材料の出荷の堅調による数量差で34億円、光学フィルムの稼働率向上で25億円のプラス要因が収益面を押し上げた。高機能樹脂関連では、光学樹脂、光学フィルムともに販売が堅調に推移した。高機能ケミカル関連では、化学品およびトナーは伸び悩んだが、電池材料は販売が堅調に推移、売上高、営業利益ともに前期を上回った。電子材料は、売上高は前期を上回ったものの、営業利益は前期を下回った。

その他の事業部門の売上高は同5・7%減の534億7300万円、営業利益は同24・7%減の20億9800万円。子会社の商事部門などの売上高が前期を下回った。

当期の資本的支出については、光学フィルムの生産設備増設などにより前期比144億円増の291億円。研究開発費については、前期よりも12億円減の153億円で、対売上高研究開発費率は4・8%で前期並みとなっている。

今期については、新型コロナウイルスによる影響の収束時期の見通しは立たず、長期にわたる可能性を念頭に入れ、同社では不測の事態に即応する目的から「緊急対策本部」を設置。全事業所、拠点においては引き続き感染予防を徹底し、感染例が発生した場合には、対応措置に則り速やかに対処する。20年度の業績予想および配当予想については、新型コロナウイルスの影響で合理的な業績予想の算出が困難であることから、発表時点では未定としている。