2020年5月20日

日本触媒
2020年3月期決算

修正値よりも上回る業績
年間配当は過去最高

日本触媒(五嶋祐治朗社長)は5月8日、「2020年3月期決算発表」を電話会議を利用したリモート形式で行った。出席者は五嶋社長ならびに小林髙史執行役員財務本部長で、米中貿易摩擦による影響、原油情勢の動向および新型コロナウイルス感染症拡大による経済活動の停滞、化学工業界においては、世界景気の減速による需要が低迷するなど非常に厳しい環境下において、同社の前期の業績は減収減益を余議なくされた。売上収益は前期比10・8%減の3021億5000万円、営業利益は同49・6%減の131億7800万円、税引前利益は同51・0%減の157億4800万円、当期利益は同53・5%減の110億9400万円となった。原料価格や製品海外市況下落に伴い販売価格が低下、景気減速による需要低迷などを受けて販売数量の減少も大きく影響した。利益面については営業利益は原料価格よりも製品価格の下がり幅が大きく、スプレッドが縮小、販売数量の減少、増設による減価償却費などの加工費が増加。税引前利益は、営業利益や持分法による投資利益が減少した。

同社では既に今年の2月4日、取り巻く事業環境を見越して通期業績見通しを下方修正。企業努力によって「修正値よりも上回る業績で着地させることができた」(小林本部長)。

配当については経営環境、業績ならびに今後の事業展開を勘案した結果、当期の期末配当は1株当たり90円とし、年間配当は過去最高の1株当たり180円を予定している。「当社では、今後も引き続き両者のバランスに十分配慮した利益配分を行っていく」(五嶋社長)。

セグメント別では、基礎化学品事業の売上収益は前期比13・8%減の1200億6800万円、営業利益は同41・7%減の62億4800万円。生産・販売数量の減少に加え、原料価格よりも製品価格の下がり幅が大きく、スプレッドが縮小、加工費が増加したことなどもあって、前年度実績に及ばなかった。アクリル酸およびアクリル酸エステルは、原油価格や国産ナフサ価格の下落に伴い、プロピレンなどの原料価格が下落した事態や、製品海外市況が下落したことで、販売価格が低下、販売数量も減少したことなどによって伸び悩んだ。酸化エチレンは、景気の減速などに伴う需要低迷により、販売数量が減少したことや、エチレンなどの原料価格が下落したことに伴って販売価格が低下したことから減収。エチレングリコールは、輸出などで拡販に努めたことで販売数量を伸ばしたものの、製品海外市況下落によって販売価格が低下に見舞われた。セカンダリーアルコールエトキシレートは、需要が低迷したことで販売数量が減少した。

機能性化学品事業の売上収益は同10・2%減の1703億8900万円、営業利益は同63・9%減の48億3900万円。原料価格よりも製品価格の下がり幅が大きく、スプレッドが縮小したことに加え、増設による減価償却費などの加工費が増加したことや生産・販売数量が減少したことなどにより、前年度の実績に及ばなかった。高吸水性樹脂は、プロピレンなどの原料価格や製品海外市況の下落により販売価格が低下、販売数量が伸び悩んだ。特殊エステルは、米中貿易摩擦などによる世界景気の減速により需要が低迷、製品海外市況が下落した状況からも影響を受けた。電子情報材料、コンクリート混和剤用ポリマー、無水マレイン酸、粘着加工品、樹脂改質剤およびヨウ素化合物は、需要低迷などにより販売数量が減少。洗剤原料などの水溶性ポリマーおよび塗料用樹脂は、拡販に努めたことで販売数量を伸ばしたことで増収となった。エチレンイミン誘導品は、販売価格が低下したことや販売数量が減少した。

環境・触媒事業の売上収益は同16・7%増の116億9300万円。営業利益は加工費が増加したことなどにより同7・8%減の8億4400万円。プロセス触媒は、景気低迷による触媒交換時期の延期の影響によって販売数量が減少。燃料電池材料、リチウム電池材料、脱硝触媒および排ガス処理触媒は拡販に努めたことで販売数量を伸ばした。

今後の見通しとしては、新型コロナウイルス感染症の世界各国における拡大による影響、それに伴う景気動向への影響などといった同社グループを取り巻く事業環境は厳しいものと想定されるものの、現時点では予想不可能。同社としては引き続き数量およびスプレッドの拡大、コスト削減などといった収益拡大への取り組みに力を注ぐ。決算説明会開催時点では「ウイルスの感染者の報告もなく、各生産拠点における稼働状況に与える影響も出ていない」(五嶋社長)。次期連結業績については合理的な算出が非常に困難を極めている状況から、現時点では発表されていない。同社では業績予想の発表が可能となった段階で、速やかに開示するとしている。