2020年9月15日

住友ベークライト
植物由来のフェノール樹脂を開発

量産機での生産実証
熱硬化性の環境対応プラとして提供

住友ベークライト(本社・東京都品川区、藤原一彦社長)は、植物の主要成分である「リグニン」を活用した固形ノボラック型フェノール樹脂を開発、課題であった製造技術を確立し、量産機での生産を実証した。主力の自動車分野をはじめ、各種分野に熱硬化性の環境対応プラスチックとして提供していく。

リグニンは、セルロース、ヘミセルロースとともに植物を構成する3大成分の一つで、バインダーとして植物体の細胞に物理的強度や化学的安定性を付与する役割を担っている。石油由来の芳香族系原料の転換資源が限られる中にあって、近年、天然のフェノール系高分子であり、芳香族有機資源として地上最大の賦存量を有するリグニンを、再生可能資源として耐熱性芳香族樹脂に活用することが期待されている。

同社の主力製品であるフェノール樹脂は、石油を原料として製造されており、今後の人口増加に伴う石油資源の調達リスクや、気候変動対策としての温室効果ガスの削減などの地球規模の将来の課題への対応に向けては、食料と競合しない非可食性バイオマスなどの植物資源の利用による原料転換が必要になると考えられている。

同社では、主力製品のフェノール樹脂について環境対応ニーズが将来的に高まることを想定し、10年以前からリグニン成分の樹脂利用の基礎研究に着手。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業「グリーン・サステイナブルケミカルプロセス基盤技術開発(10~12年度)」、「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発(13~19年度)」への参画も含めて、さまざまなリグニンを用いた樹脂合成の基幹技術と産業利用を目指した樹脂開発を進めてきた。

液状レゾール型のリグニン変性樹脂については古くから研究がなされており、近年、欧州を中心に木材接着剤などへの適用が進展。同社ではこれら液状レゾール型樹脂に加え、製造プロセス面で難易度が高い固形ノボラック型のリグニン変性樹脂を開発し量産技術を確立した。基盤研究の知見を基に実用化検討を重ね、既存の石油由来フェノール樹脂とそん色のない加工性、樹脂材料特性、コストの並立を実現。バイオマス比率も用途によっては50%以上の樹脂設計が可能で、ノボラック型リグニン変性フェノール樹脂を開発したことにより、同社主要用途の自動車分野をはじめ、広範なフェノール樹脂材料分野での利用が可能となった。

今後は、非可食性バイオマスなどの植物資源の活用に対する市場の多様なニーズにこたえる目的から、環境対応への需要が一層高まっている自動車や航空機関連部材をはじめとする、さまざまな産業分野において用いられているフェノール樹脂材料への適用・実績化を目指し、国内外の各種産業分野への利用展開を図る。コスト競争力を備えた、再生可能な原料である非可食性バイオマスを利用したフェノール樹脂製品の製造プロセスを実現し、二酸化炭素の排出量削減によって持続可能な低炭素社会を実現する産業基盤の構築とSDGsの実現にも寄与していく。

なお、今回の開発品を含む新規材料は、10月19日~11月18日にかけて行われる「ケミカルマテリアルジャパン2020―オンライン―」において展示される予定。