2020年2月25日

日本触媒
ハイブリッド亜鉛蓄電池を開発

AI等融合のT―MODE活用

日本触媒(五嶋祐治朗社長)は、自社独自技術によって開発した「亜鉛電池用セパレータ」と「亜鉛負極」に、活性炭を組み合わせることで新しい亜鉛蓄電池「カーボンー亜鉛ハイブリッド畜電池」を開発した。この新しい亜鉛蓄電池は主な構成要素が水・炭・亜鉛と資源的に豊富でかつ毒性のない材料で作ることできる点が特長で、水系電池であるために燃える心配がない上、出力性能・低温性能に優れた電池となっている。また亜鉛蓄電池で課題とされてきた寿命については、同社が開発したセパレータと亜鉛負極技術により1万サイクル以上の長寿命性能を実現した。

亜鉛蓄電池は負極に亜鉛を用いた充放電可能な電池で、ボルタやエジソンも研究した非常に古い電池。最近市場の拡大が著しいリチウムイオン電池が小型・軽量を重視した電池であるのに対し、亜鉛蓄電池は、安心・安全を重視した電池となる。具体的には有機溶媒を使わない高い安全性、鉛等の有毒材料を使わない高い環境調和性、そしてレアメタル等を用いない元素戦略的利点も有しており、次世代蓄電池の一翼を担うことが期待されている。しかしながら、亜鉛蓄電池の最大の弱点はその寿命とされ、「亜鉛は乾電池には使えても、蓄電池としては使えない」ことがこれまでの常識とされてきた。これは、亜鉛蓄電池の充放電を繰り返すと、亜鉛電極からデンドライトと呼ばれる亜鉛の針状の結晶が対極へ向かって成長することにより、正極と負極が短絡しやすいことが大きな原因となっている。

そこで、同社はこれまでの樹脂製セパレータとは異なる、鉱物粉末をシート化した独自構造のセパレータを開発し、このデンドライトによる短絡を抑制し、さらに充放電サイクル劣化を抑える独自の亜鉛負極材料の開発にも成功した。これら要素技術を組み合わせ、カーボン―亜鉛ハイブリッド蓄電池を開発した。この電池は正極に活性炭を用い、物理容量である電気二重層容量を利用。一方負極は亜鉛の電気化学反応を行うため、物理容量と化学容量のハイブリッド電池となっている。そのため、電気二重層キャパシタ(EDLC)の長所である高出力特性・長寿命特性を持ちながら、弱点である容量性能を、電池材料を用いることで克服している。EDLCでは負極に正極と同じ活性炭を用いるが、ハイブリッド電池では負極を亜鉛にすることにより、理論的に静電容量が2倍になるとともに、カーボン―亜鉛間に起電力を持てるため高容量化する。エネルギー密度の高い亜鉛負極側を薄く設計できるため、同体積のパッケージでは正極活性炭をより多く搭載でき、EDLCの5~10倍の容量になることで、鉛蓄電池同等の容量性能を得ることができることになる。

このハイブリッド亜鉛蓄電池は、物理容量を利用するキャパシタの高出力をそのままに、マイナス20度以下の低温でも充放電駆動が可能なことが特長となる。化学反応を用いる多くの電池では、反応速度が温度と密接にかかわっているため、特に低温での充電が困難であった。しかし亜鉛は電気化学反応が非常に高速で行える物質であるため、キャパシタの高速応答に追従できるとともに、低温~高温まで動作可能で、あらゆる温度環境に適合する。さらに物理容量を用いるキャパシタはサイクル劣化が非常に小さいため、寿命性能は亜鉛側に依存する。同社で開発されたセパレータ/亜鉛電極を用いることにより、既に1万サイクル以上の寿命性能を観測しており、数百サイクル程度で交換寿命がくる鉛蓄電池と比較すると100倍以上と言える。それ故、従来の鉛蓄電池が使用されている車載バッテリーなどへの展開のほかに、活発化する自然エネルギーの電力貯蔵などの新しい用途展開が期待されている。