2020年1月10日

ニッタ
インタビュー

新たなアプリケーション発掘
“ニッタイズム”共有の深化不可欠

ニッタ 石切山 靖順社長

【新社長としての抱負は】
 134年という長い歴史を持ち、お客様にメーカーとしての厚い信頼を得ているニッタという会社のトップに就くことに対して重い責任を感じる。新田元庸前社長とは、オランダ赴任中に一年間現地でともに仕事をした仲。当時から大切にする考え方や信念などには大いに共感していた。新田前社長は、代表取締役会長として経営全般を、コーポレート機能に関しては、同分野での業務経験の豊富な小林武史取締役兼専務執行役員のサポートを得ながら取り組んでいく。1981年に入社して以来、長く工業資材事業部門での業務に携わってきたことから、そうした経験を生かしながら、それぞれの役割分担によって企業としての強みを最大限に発揮できるような舵取りをしていきたいと考えている。新田前社長は過去最高の業績を上げるなど、経営者として優れた手腕を発揮した。その経営者としての姿勢を継承しながら、中長期経営計画において目標として定めた2020年度の売上高1000億円の達成を目指す。同時にガバナンス体制も強化し、売上高1000億円企業にふさわしい企業としての体制づくりにまい進する。

【今後の経営課題と目標について】
 1000億円企業を目指すに当たり、これまで主力分野として手掛けてきた既存事業のシェアを伸ばすことで一層の成長を目指す。多くの分野が成熟期にあり、新たな伸び代を見いだしていく必要があるが、海外にも目を向けてグローバルでの事業拡大を図る。当社の売り上げはベルト・ゴム製品事業、ホース・チューブ製品事業、化工品事業といった3つのセグメントによって8割以上を占めているが、地政学的な問題や取り巻く環境の変化、規制の強化などといった将来的なリスクの可能性を考えると、従来のビジネスに力を入れているだけでは、経営の安定には至らない。1000億円企業を実現するためには、新規事業の立ち上げが不可欠であり、当社が手掛けている空調、デバイス、ロボットハンドなどの製品分野を育てることで、事業の大きな柱として自立させる必要がある。浪華ゴム工業ともビジネスモデルを共有することで、医療分野等において今後の可能性を模索していく。

【既存事業の強化に向けての手法は】
 昨年の10月から取り組みを始めている新中長期経営計画を通じて明確化する。役員と各部門のプロジェクトメンバーが両輪となって策定を進めており、海外のグループ企業の声も反映されることからグローバルな中長期経営計画に仕上がるだろう。将来の成長には新規事業や新製品開発は重要なテーマであるが、既存業においても新しい分野を開拓することによってまだ成長させる手立てもある。空調分野では除菌バリデーション装置の販売を開始し新たな事業領域を獲得するほか、ニッタ化工品の海外展開については、ニッタグループの海外ネットワークの活用も図っていく。

【ニッタが持っている強みについて】
 顧客の要望にコツコツとこたえる現場力に、当社としての強みが象徴されていると考えている。お客様の困り事を真しにとらえ、解決に向けて全力で取り組むことでお客様に貢献する。創業者が残した理念である〝発明〟〝改良〟〝円満〟という3つの理念のうち、顧客や社会との良好な関係を築き上げるという意味で、円満という要素がまさに当てはまる。2015年以降、グローバルにおいて3社の企業がニッタグループに新たに加わった。グループ企業拡大において、当社の強みを最大限に生かしていくためには、各企業において当社の企業理念である〝ニッタイズム〟共有の深化が不可欠であり、横串を通すことで共通理念としての浸透を図る。当社では良質な製品を効率的に生み出すための〝NS活動〟、業務改善に向けた〝QC活動〟などといった活動を各社共通で行っており、そういったグループ横断的な取り組みから理念の共有化を確固たるものにしていく。

【今後の展望と意気込みは】
 環境の変化に柔軟に対応し、新たなアプリケーションを発掘することで事業を成長させていく。投資については、市場を見ながら精査を行い、採算面でプラスになると判断できる案件であれば進めていく。人材育成も重要な課題であり、海外での市場拡大を見据えた上で、現地での人材育成にも力を入れる。M&Aも視野に入れているが、ドラスティックな変革を遂げようとは考えていない。社長職を引き受けた時に「神は乗り越えられない試練は与えない」という気構えで決意した。工業資材事業に従事していた時には、すべてにおいて正面から物事を受け止め、クレームについても矢面に立って対応し、問題解決に全力で取り組んできた。その過程によって、製品の改良による品質の高まりがあり、相手先から信頼されることで、つながりが深まることを経験した。厳しいクレームも、その後の対応によって新たな可能性を呼び込むことができる。経営においても同じことであると考えており、前社長と同じように実直でフェアネスな経営を継続していく。