2021年1月10日

住友ゴム
新春トップインタビュー

経営基盤強化に拍車
新企業理念策定し経営計画達成

【昨年を振り返って】
昨年は世界的に新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた一年であり、当社においても厳しい事業環境に立たされた。第2四半期にあたる4~6月は世界的な需要低迷によって大きなダメージを被ったが、7月からは持ち直しのムードが漂い始め、想定よりも回復が早く進んでいる地域も出始めた。その兆候が広がりを見せ、当社としても7―9月の第3四半期のQoQにおいて、各利益ともに上回った。社内的には新型コロナウイルス感染症の対策本部を昨年2月に設置し、情報をとりまとめるとともにグローバルに発信し、互いの情報の共有を図った。困難に直面している地域や従業員に対しては社長自らが耳を貸し、「必ず乗り越える」というメッセージを発信して勇気づけた。国ごとの状況に合わせて対応策を模索し、回復に向けての取り組みを行った結果、それぞれが改善に向かっていった。新型コロナウイルス感染症は、世界中に大きな災いの種をまき散らし、当社の事業にも大きな打撃を与えたが、その一方で経営課題があぶり出され、課題ごとに改革するきっかけづくりとして機能した。

【コロナ禍で気づかされた内容とは】
技術的に差別化された高機能商品は、コロナ禍による環境下であっても売れ続けた。実際の経験によって、技術に裏打ちされた商品の強みを再認識し、飽くなき技術革新(スマートタイヤコンセプト)への意欲がかき立てられ、次のステージに到達するマイルストーンとした2025年に向けての重要な要素であることを確信した。昨年2月に発表した中期計画の諸課題の一つである「経営基盤強化」における具体的な活動として「Be the Changeプロジェクト」を新たにスタートさせたが、コロナ禍にあっても基盤強化の手を緩めることなく継続した結果、新しい時代に向けての骨格づくりもやり遂げられた。

【Be the Changeプロジェクトについて】
中期計画を達成させる目的から、継続的に利益を生み出せる体制づくりを行うことで、持続可能な企業体質を培っていく取り組みで、生産から物流、販売、設備投資といった利益改善施策のほか、組織体質・人材戦略、デジタル戦略、投資判断・意思決定といった全社施策に至るまで、数百人のメンバーが課題をあぶり出し、その改善に向けて取り組んでいる。昨年の本社部門を中心とした活動では「組織体質の改善」と「利益基盤の強化」を目指す複数のテーマを選定し、部門横断的な活動を展開した。この活動によって仕事の〝やりがい〟や会社全体としての事業効率は確実に高まっている。組織体質の改善と利益基盤の強化が両輪となって活動が進められているが、従業員の行動も変容しつつあり、キャッシュ創出・利益改善の施策実現化に一定のめどがついた。今年はこのプロジェクトを一段とブラッシュアップし、さらにステージを持ち上げて、成長拡大に向けた経営基盤の強化に拍車を掛ける。

【活動を加速させるための施策としての活動について】
従業員2000人以上からオンラインを活用した直接対話によって意見や考えを聞いたほか、実際に、社長自身の言葉でコミットメントを行う機会を定期的につくり出すことで、会社との一体感と使命感を醸成した。人事組織制度の見直しや研修の実施、コミュニケーション変革の仕掛けづくり、500人以上が参加して行う部門横断型のプロジェクトによって活動を加速させている。これらによって生産、技術、販売、管理領域において、新たな価値を創造する取り組みや、あらゆるコストを削減する取り組み、キャッシュを創出する取り組みなど1200件以上の施策を立案し、改善に向けての着手に入った。

【今後における取り組みについて】
中期計画では、そのバリュードライバーとして高機能商品の開発・増販、新たな価値の創出、ESG経営への推進の3つの項目を掲げており、タイヤ事業はスマートタイヤテクノロジーによって新たな価値をつくり、市場に送り出してきた。世界市場でEV車両への切り替えが進んでおり、中国では2035年をめどに新車販売の50%を新エネルギー車両へと置き換える構想を立てている。中国は大市場であり、当社としては中国の方針に則って、率先してEV車両への積極参入を果たす。新たな価値の創出については、タイヤ空気圧管理ソリューションサービスの実証実験を開始しており、このサービスを一刻も早くすべての車両に導入したいと考えている。レベル4自動運転車のタイヤ空気圧モニタリングシステムを構築しており、未来を開くイノベーションとして今後も意欲的に取り組んでいく。

ESG経営については一段と重要性が高まっており、さらに戦略的な対応が求められるようになっている。今月からサステナビリティ推進本部を設立しており、長期視点に立った施策を企画・推進することで、サステナビリティ活動を一段と強化し、ESG経営における枠組みを強めた。カーボンニュートラルについても目標を明確にしながら、サステナビリティ推進本部において抜本的な対応策をまとめている。社内的には、グループ全体の心が一つになって取り組みを進めていくための共通のよりどころとして、当社の企業理念を再編・整備して新たに〝Our Philosophy(アウアフィロソフィー)〟を策定した。およそ1年かけて再制定した企業理念であり、激しい環境の変化にあって世界の4万人の従業員とともに、経営計画を達成させることで社会も豊かにしていく。