【ホース・チューブ・継手特集】
東拓工業
TACダクト耐摩耐油
耐摩耗性、耐油性を両立
東拓工業は4期にわたり過去最高の売上高を達成している。今期もその更新に向けて事業の展開を図ってきたが、全社売上高については期待した数値には届かない見込み。
工業用ホースについては、米中問題による設備投資の減速傾向が改善の兆しを見せており、半導体関連市場の一部回復などから前年並みを確保すると見ている。
土木資材は、昨年の大型台風など激甚災害の復興需要に押し上げられた一面もあったが、好調であった前年実績には届かない見込み。現在もなお河川の防災対策工事の計画などの需要案件が立ち上がっているが、長期的な展望に基づいた施策だけに工期も長く、製品供給を継続することで防災・減災に積極的に貢献していく。
電設資材においては前期比105%程度で伸びを見せており、太陽光発電や風力発電といった再生エネルギー関連などが引き続き好調に推移している。今後については電線地中化の流れに注目しており、街中の景観だけでなく防災の意味からも、国や自治体の取り組みへの対応を目指している。電線地中化に適した角型多条敷設管「角型TACレックス」は外側のリブは角型、内側は円形という同社の独自の形状を採用。電線共同溝や電線・光ファイバーの多条敷設用として開発され、コンパクトな多条敷設を可能にしたことで高い評価を得ている。
橋りょう関連資材は、高速道路や橋りょうの老朽化による補修工事が各地で実施されているほか、リニューアルが必要な案件も多い。インフラ面においても、同社の高付加価値製品の拡販を図ることで、来期は売上高の拡大を目指す。
同社では工業用ホース分野の新製品として「TACダクト耐摩耐油」を新たに投入。耐摩耗性と耐油性を両立し、静電気防止性能にも優れる。金属加工の事業者などから「ホースが長持ちするようになったという声が聞かれた」と言い、油や粉粒体への耐性が一番のキーポイントとなっている。身近な用途例としては、金属加工の廃油、廃材/集じん機/ガソリンべーパー回収/穀物・飼料搬送などがある。
生産・物流体制については、〝働き方改革〟による業務の見直しも重要な課題。生産面では自動化設備による省人化・時短対応で生産効率を上げていく。従業員の能力開発にも注力しており、多能工の育成による生産効率の向上にも軸足を置く。物流面ではコスト以上に時間的制約などの厳しさが増す中、顧客の理解を得ながら時代の変革の波に対処している。同社では2018年より「ロジスティクス・ソリューション活動」を推進。情報・ヒト・モノの流れを改善し、現場のニーズに基づいた製品の加工から出荷までを一貫して行い、適正納期・十分な製品の品ぞろえを強化している。「お客様との距離が縮まることで、商品企画などにつながる情報をスピーディーに交換できるメリットは大きい」(豊田耕三社長)。
同社では一昨年5月に関東おやま工場を開業し、メーン工場の関西りんくう工場や他工場と合わせて全国の生産・物流体制を整え、全体最適によりメーカーとしての戦力を増強。本社が親会社の長瀬産業大阪本社(大阪市西区)に移転したことで人的交流の機会が増え、組織的な価値創造や新製品開発に向けた原材料の共同開発などといったメーカーとしての新たな可能性が引き出される。
豊田社長は言う。「社員研修制度への合同参加、安全・品質改善への認識の共有、レクリエーションによる〝一体感の醸成〟が新たなイノベーションを生み出す根幹となる」。
同社では、2020年度を着地とする5年間の中期経営計画を推進中。そこには新規事業の創出という目標も含まれており、残り一年間をかけてメーカーとしてのさらなる成長を果たす。