2020年8月20日

関西ゴム技術研修所
第58回研修生が7月に卒業

36人が学び舎巣立つ
コロナ禍の逆境の中研修

関西ゴム技術研修所(駒水謙二所長)で研修を受けた第58回研修生が7月31日に卒業の時を迎え、10カ月間にわたってゴム技術者としての研修にいそしんできた36人が学び舎を巣立った。

昨年9月3日に入学式が行われ、規定のカリキュラムをこなした生徒たちが、7月31日に卒業式という〝晴れの舞台〟に臨む予定が組まれていたが、「大阪府や周辺の府県でも、新型コロナウイルス感染症の陽性者が増加している。今回の研修生には大阪府内15人、他府県からも21人が参加しているが、長時間の移動が伴うことから、7月31日の卒業式はやむなく中止することに決まった」(駒水所長)。今年の卒業生のうち、出席率100%の皆勤賞が26人、成績優秀賞(平均点85点以上、出席率90%以上)が29人となり、コロナ禍という逆境にあっても頑張れる心の強さを印象付けた。

第58回研修生は、昨年9月の入学式以降、11月には、久留米工業高等専門学校の藤道治名誉教授による特別講義を受講し、今年1月には、化学物質評価研究機構(CERI)大阪事業所において6日間にわたる物理試験の実習を受けるなど研修は順調に進行。そんな状況にあって、新型コロナウイルス感染拡大による影響が2月末から出始め研修が延期、5月25日に解除が宣言されるまで、研修再開の見通しは全く立たなかった。しかしながらこの間、駒水所長を中心にカリキュラムの再編が何度となく検討され、新型コロナウイルス感染症の感染防止対策についてもあらゆる観点から議論。6月8日に、山口慎太郎氏(山口慎太郎特許事務所)による「知的財産」の講義を皮切りに研修は100日ぶりに再開された。

式辞で駒水所長は「今回の研修は、新型コロナウイルス感染症という全世界を取り巻く感染症に大きく影響された。皆さんには、大変申し訳ないと思うと同時に、この第58回の研修生は一段と印象に残る生徒になると思う。皆さんの中には、大阪府以外の他府県から長い時間をかけて研修所に通ってきた人もおり、公共交通機関の利用という、感染リスクを乗り越え無事に最後まで研修を受けた。受講した研修は、ゴム工業におけるゴム技術の初級編にあたるが、ゴム工業がどのような構成で成り立っているのかを理解できたのではないかと思う。研修所の卒業は、ゴム技術の初級者から次の中堅への足掛かりをつかんだことになり、今後は自分の職場でどんなことが行われているのかを見ながら、先輩に質問してほしい。現状を理解し、改良するためには何が必要で、今利用している技術がどのような効果があるかを見直す。疑問があれば、研修所のテキストをもう一度見直して、それでも分からないときは、講師の先生に質問する。さらには、研修所に相談してほしい。このような行動の繰り返しが大切で、これができるようになることが、研修所を始めた先輩たちの思いでもある。この10カ月で、皆さんは確実に成長された。これからも、一緒に学んだ仲間とともにコツコツと進んでくれることに期待する」と喜びの言葉を送った。

今回の卒業生のうち、9人の研修生が特別賞を受けた。近畿経済産業局長賞はバンドー化学の高須直人氏、大阪ソーダの三木翔太氏の2人、大阪府知事賞はタツタ電線の竹田梨紗氏、加貫ローラ製作所の河尻育美氏、共和の加茂慎治氏の3人、大阪ゴム工業会会長賞にはTOYO TIREの唐津秀一氏、山崎一樹氏、ユー・エム・アイの山田諒氏の3人で、研修生全員の投票で選ばれる山下晋三賞には十川ゴムの松本拓也氏が選出された。

次の第59回研修については、例年9月に入学式が行われていたが、新型コロナウイルス感染症防止対策による研修日程の延期により、前期の卒業日程が7月31日まで遅れたことで、入学式は11月に予定されている。今後の研修運営は、研修生および研修にかかわる関係者の安全と安心を最優先に置きながら、新型コロナウイルス感染症防止対策を継続。新しい研修の方法としては対面式研修からオンライン式研修を取り入れて、より安全な研修が可能になるように取り組んでいく。