西部工業用ゴム製品卸商業組合
「ホース商工懇談会」
コロナで大きな打撃
樹脂はリーマン時より悪化
西部工業用ゴム製品卸組合(岡浩史理事長)は11月20日、大阪市北区の中央電気倶楽部において「ホース商工懇談会」を開催した。新型コロナウイルス感染症対策を徹底しながら、当日はメーカー側から10社14人、商業者側から14人が参加。メーカー側からのホースの生産販売状況の説明のほか、商業者からは「第24回ホース流通動態調査結果」報告も行われた。
開会に先立って、あいさつに立った岡理事長は「昨今のコロナ禍にさいなまされ、日本の経済は非常に厳しい状態に陥っており、商工ともに大変な苦境に立たされているかと思う。10月辺りから全般に回復の兆しを見せ始めたことで、期待感を持って情勢を見守っていたが、このところの様子を見ると、災禍がもたらす先行きの見通しの難しさを改めて知った。海外でもコロナ禍によって大きな打撃を受けているが、株価だけは記録的な上昇を続けており、もはや理解に苦しむ状況に陥っている。今回は年に一度だけ開かれるホース商工懇談会ということで、互いに意見を交わし合い、有意義な会合にしてほしい」と述べた。
懇談会では、ホース流通動態調査結果の報告が行われた。売り上げと市場価格については、ゴム・樹脂ホース、高圧ホースともに〝落ちている〟の割合が多く、価格競争の状態の推移としては〝問題ない〟が増加。回答者の要望や意見としては「洗浄機向けホースの価格が安すぎる」「コロナ禍になり、相応の販売価格低下圧力が予想されたが、実際には思ったよりも順調に価格推移している」「値上げ基調が続いている」などという声が上がっていた。流通動態調査の結果全般に、コロナ禍の影響が数字となって出ており、今後に向けても懸念材料となっている。
引き続き、メーカーによる生産・販売状況の説明に移り、一般ホース業界については十川ゴム・大阪支社の須井滋次長が担当。今年の1~9月のゴムホースの生産量は高圧用、自動車用、その他用とも全項目で前年同期を下回っており、生産量全体で同19・4%減、出荷金額で同17・2%減となり、思わしくない結果が出た。樹脂ホースの概況については、タイガースポリマー・大阪支店の植富男支店長が説明。樹脂ホースの分野においては、実態が不明りょうであることから樹脂ホースに多く使われている軟質塩ビ樹脂の生産・出荷動向の基準に置き換えて検証した。生産・出荷動向は過去5年間で最も落ち込んでおり、その落差はリーマンショック時よりも35%悪化している。米中貿易摩擦による原料価格の低下の影響もあるが、新型コロナウイルス感染症拡大による影響が色濃く表れている。近況では公共工事がストップしており、住宅設備、半導体製造も思わしくない。自動車は上期より回復基調にあるが、設備投資案件は聞かれない。エアコンはコロナ対応による効果で好調に推移しており、半導体も同様の流れで動き始めている。
圧ホースについては、住友理工ホーステックス・大阪事業所の亀山修平所長が報告。コロナ禍により自動車の輸出が減退、高圧ホースは建設用機械が伸び悩んでおり、7~9月において全体で前年同期比76%と厳しい結果となった。9月単体では基礎機械、道路機械が前年同期の実績を上回った。工作機械は前年同期比65%と厳しい状態が続いており、輸出は中近東や中国で盛り返してきているものの、いまだ減少傾向からは脱し切れていない。
続けて、商業者とメーカーによる懇談に入った。
商業者から「前回のホース懇談会で、物流費の高騰の問題については、商工で話し合うことでアイデアを引き出し、ともに解決できればという話だったが、どう取り組めばよいのだろうか」といった題目を提議。それに対しては梱包費の削減、パレットの持ち帰りなど、物理的なコスト削減による緩和もあるが、実際の運送費に話が及ぶと話は複雑になってくる。現場にモノを送る場合、価格を決定してから実際に運ぶ段階になってから、見積もりよりも経費が高くなり、収益に影響するケースも少なくない。対策としては「沖縄などの離島に送る場合は運賃が変わってくるので、見積もり段階でそうした事情を条件として添える。大きさや場所によってはチャーター便に切り替える必要性が出てくることから、慎重に見積もる必要がある。運賃の高騰にはメーカーも苦慮しており、ノウハウを蓄積した上で、現場の住所を把握し、選択肢の中から最も安価な方法を選定して送るやり方を実践している」という返答が得られた。
次の課題として「経済状況が回復に向かい、商売が通常軌道に戻れば顧客からのコストダウンの要請が出てくる可能性が高い。ナフサ価格が下落している現状にあって、価格的にメーカーとしてはどういった姿勢で動いてくれるのか教えてほしい」との商業者の質問に対して、メーカー側からは「ナフサ価格の下落幅は極端であり、下がり過ぎている。米中貿易摩擦の影響で、産油国が増産に踏み切った上、コロナ禍で需要が大幅に下がっている背景があり、今後の価格動向は全く予測がつかない。一時的な状況の可能性でもあり、現状では動きようがない」と回答。一部では、価格設定をフレキシブルに考えるメーカーとしての側面も存在しており、値上げ要請に対して容易に応じた顧客には、一時的な原料価格の下落であっても、それに追随した価格設定を考えることはできるのだが、それ以外においては、コスト環境を要因とした価格の頻繁な変動には抵抗感が伴うという思惑が存在している可能性がうかがわれた。
最後の質問項目として「今後のホース業界を取り巻く環境について、メーカーとしてはどのように見ているか」との問い掛けに対しては「上期よりも下期の方が良くなってくるだろう」と返答。その背景として「今後は5G関連需要も活発化するなど半導体関連業界の見通しが明るい。重機は厳しいがショベル機などが動き始めており、自動車なども上期において停滞の底を打ったと思う。下期において新しい需要が出てくる見通しもあり、今回のコロナ禍によって換気に対するニーズから市場拡大が見込める業種もあり、実際の見通しは不透明ながら、現状よりは明るくなると見ている」と答えた。それに対して商業者サイドは「市場が良くなっていくという話が聞くことができて非常にうれしい。これからは新しいユーザーさんからの宿題も頂きながら、われわれも頑張っていかなければならないと思う」(加藤廣ホース部会長)と述べ、懇談会を締めくくった。