2021年2月5日

2021年3月期第3四半期決算説明会
日本ゼオン

純利益は4・7%増
ラテックス需要好調で増産

日本ゼオン(田中公章社長)は29日、ウェブを通じて「決算説明会」を行った。それによると当期の売上高は前年同期比10・8%減の2163億400万円、営業利益は同2・2%減の210億7000万円、経常利益は同2・5%減の229億2500万円、四半期純利益は同4・7%増の174億4500万円となった。概況としては「手袋向けでラテックスの需要が好調に推移しており、ラテックスを可能な限り増産していく。S―SBRもタイヤ業界が回復を遂げており、6月で底を打った。ZΣ運動など原価低減活動が成果を上げ、営業利益の伸びが目立った」(田中社長)。

セグメント別では、エラストマー素材事業部門の売上高は前年同期比15・6%減の1143億9800万円、営業利益は同37・8%減の53億1700万円。合成ゴム関連では、主要市場である自動車産業向けを中心に需要は回復傾向にあるものの、前四半期までの落ち込みをばん回するには至らなかった。合成ラテックス関連では化粧品材料や一般工業品、樹脂改質用途などの需要が低調に推移、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした医療・衛生用手袋向けの需要拡大により営業利益は前年同期を上回った。化成品関連では欧米、アジアとも需要は底堅く販売数量が増加。売上高は前年同期を下回ったが、営業利益は前年同期を上回った。営業利益における増減要因は、化成品出荷量増による数量差で3億円、原料価格および需給バランスの影響によって売価が上昇したことで39億円のプラス要因が発生し、為替差損2億円、原価差4億円、販管費差による1億円の収益圧迫要因を打ち消した。

高機能材料事業部門の売上高は同3・4%増の701億9800万円、営業利益は同23・3%増の163億2600万円。高機能樹脂関連では光学樹脂、光学フィルムともに販売が堅調に推移。高機能ケミカル関連では化学品および電子材料は売上高、営業利益ともに前年同期を上回った。営業利益における増減要因は、工場稼働率および原料価格の影響等で8億円の原価差利益があり、出荷量増により6億円の数量差益、費用圧縮などで5億円の販管費用圧縮効果により、価格差による2億円、為替差損1億円の収益圧迫要因を打ち消した。

その他の事業部門全体の売上高は同18・8%減の331億500万円、営業利益は同34・5%減の10億9400万円。

高機能材料事業が増収増益で好調に推移。当期における光学樹脂の状況は全体でYoY(前年同期比)が110%、QoQが124%。光学用途向けはYoYが150%、QoQが125%。携帯端末マルチカメラ化などにより、需要は堅調で、今年7月完工予定の能力増強工事および定期検査に向けて引き続き出荷量を調整中。医療、その他用途向けのYoYは95%、QoQが96%。需要は堅調であり、光学用途と同様に出荷量を調整している。光学フィルムは当期全体でYoYが112%、QoQが99%。このうち中小型向けのYoYが131%、QoQが105%。テレワークを背景としたモバイル端末向けの需要が引き続いて堅調に推移している。大型向けはYoYが106%、QoQが97%。一部の需要減を織り込みながらも、中国市場向けが伸びたことで堅調を維持。電池材料については全体のYoYが128%、QoQが123%。EV向けについてはYoYが112%、QoQが142%。欧米向け、中国向けともに荷動きが回復傾向をたどっている。民生他向けのYoYは173%、QoQは98%。

エラストマー事業については「これまで当社の屋台骨として支えてきた事業領域であり、ゴムとしての重要さは変わっておらず、需要面では信頼している。ただし将来的には競争が厳しくなる見通しから再編を行ってでも、勝ち抜いてみせる」(田中社長)。

通期については、高機能材料事業部門において光学フィルムの販売が堅調に推移、エラストマー素材事業部門においても全体として回復基調であり、加えて費用の圧縮で成果を出せたことにより、前回公表の予想値を上回る見込みであることから上方修正を行った。売上高は3000億円(修正前2750億円)、営業利益は290億円(同160億円)、経常利益は320億円(同190億円)、当期純利益は230億円(同130億円)。配当についても現在の業績動向を踏まえ、期末の予想を1株当たり1円増配し11円に修正する。これにより、年間配当は同22円となり、前期(2020年3月期)実績から1円増配となる。