2021年3月5日

横浜ゴム
「YX2023」発表

次世代の成長へ向け変革

横浜ゴム(山石昌孝社長)は19日、2018年度から取り組んできた中期経営計画「グランドデザイン2020(GD2020)」の終了を受け、21~23年度までを実行期間とした新中期経営計画「Yokohama Transformation(ヨコハマ・トランスフォーメーション)2023(YX2023)」を発表した。「Y」はヨコハマ、「X」はトランスフォーメーションを指し、横浜ゴムを深化と探索で変革するという意味が込められている。

山石社長は、昨年度に着地したGD2020を振り返り「タイヤ消費財事業では〝プレミアムタイヤ市場における存在感の更なる向上〟を掲げ、〝プレミアムカー戦略〟〝ウインタータイヤ戦略〟〝ホビータイヤ戦略〟〝コミュニケーション戦略〟の4つの戦略を推進し、市場でのプレゼンスを向上させることに成功した。〝タイヤ生産財を次の100年の収益の柱へ〟という目標の下、OHT(オフハイウェイタイヤ)事業、TBR(トラック・バス用タイヤ)事業の強化に取り組み、16年に買収したATGの力強い成長によって、売上高におけるタイヤ生産財事業の構成比率は当初計画を上回ることができた。TBR事業では、設備面や人材面の課題に対応するなど供給改善に取り組み、販売拡大に努めている。MB事業では〝得意分野への資源の集中〟を掲げ、自動車部品事業や海洋事業を強化し、自動車部品事業では北米での自動車用ホース配管の納入拡大、海洋事業では世界最大の超大型空気式防舷材の納入などを行うことができた。こうして事業ごとに成長戦略を進めてきたが、売上収益、事業利益に関しては昨年発生した新型コロナウイルス感染症の全世界拡大に伴う経済減速などによって、当初目標の売上収益7000億円、事業利益700億円を達成するには至らなかった。しかしながら、財務体質は着実に改善することができ、16年のATG買収時に3359億円だった有利子負債は20年度には2078億円と大幅に削減し、D/Eレシオは0・5倍となり、GD2020の財務目標の0・6倍を達成した」と報告した。

新中計であるYX2023は、自動車産業を取り巻く環境であるCASE、MaaS、DXなどを踏まえて策定。同社では、既存事業における強みの〝深化〟と、大変革時代のニーズにこたえる新しい価値の〝探索〟を同時に推進し、次世代の成長に向けての変革を遂げる。23年度には過去最高の売上収益7000億円、事業利益700億円の達成を目指す。新計画着地後には、その体質を一段とブラッシュアップし、25年に06~17年度の中期経営計画「グランドデザイン100(GD100)」で掲げた売上収益7700億円、事業利益800億円を達成し、過去100年の集大成とする。

YX2023においてタイヤ消費財事業では高付加価値商品の販売拡大に向けた取り組みの深化を推進、タイヤ生産財事業では4つのテーマに沿った市場変化の取り込みを探索する。消費財タイは高付加価値品の比率の最大化を掲げ、高付加価値商品の主力であるグローバルフラッグシップタイヤブランド「ADVAN(アドバン)」、SUV・ピックアップトラック用タイヤ、ウインタータイヤの3つのカテゴリーに注力。アドバンと「ジオランダー」の新車装着拡大、補修市場でのリターン販売強化、ウインタータイヤを含む商品のサイズラインアップ拡充ならびに各地域の市場動向に沿った商品の販売を強化する〝商品・地域事業戦略〟に取り組む。これにより23年度には19年度比でアドバンは150%、ジオランダーは115%、ウインタータイヤは120%の販売伸長を計画し、3つの商品カテゴリーにおいて合計の販売比率を現在の40%から50%に引き上げる。

生産財タイヤにおいては〝コスト〟〝サービス〟、〝DX〟〝商品ラインアップの拡充〟をテーマに掲げて市場変化を探索していく。CASE、MaaSなどの大きな市場変化を取り込むことによって新たな提供価値を探索する。OHT事業、TBR事業の強化にも力を入れる。

コスト面への取り組みについては、インドの乗用車用タイヤ工場を〝横浜ゴムグループで最も安くタイヤを作る工場〟と位置付け、低コストモデルの確立を目指す。タイのTBR工場においても低コストモデルでの増産を検討する。サービス面においては、車両保有の法人化の進展を見越し、タイヤ単体だけではなくサービスのセット提供を推進する目的から、全国の販売・物流ネットワークを活用。サービスカーの導入を拡大することによりサービス体制の強化を図る。DXの推進に向けては、先進タイヤセンサー開発を加速化、機能の追加に従い段階的にサービスや顧客を拡大し、新たな付加価値サービスを創出していく。商品ラインアップでは、運輸・物流業界では車両の電動化・無人運転に伴い、運行距離や使用状況に応じて多様な品種のタイヤへのニーズが広がると推測。この物流の変革に向け、同社の強みである幅広い商品ラインアップをさらに拡充し、市場での優位性を一段と確立する。

21年度から開始した横浜ゴム、ATG、愛知タイヤ工業の事業統合による成長をさらに加速化。マルチブランドによる市場展開と、顧客対応力を強みに事業の強化を進める。積極的な増産投資を行い25年度には売上収益1400億円、全社利益の3割を占める事業に育て上げる。TBR事業については、引き続き米国ミシシッピ工場の安定供給の確保に努め、おう盛な需要にこたえるため増産投資を計画、25年度には1000億円までの売り上げ拡大を目指す。

MB事業では〝成長性・安定性の高いポートフォリオへの変革〟をテーマに掲げ、強みであるホース配管事業と工業資材事業にリソースを集中しMB事業の成長をけん引し、安定収益を確保できる体制を構築する。ハマタイト事業は得意分野への集中により事業体質を改善、航空部品事業は構造改革を断行し、時代に見合った事業展開を目指す。

人事戦略については、人事制度の変革による経営・管理職層のレベル強化や環境変化に迅速に対応できる強い組織づくり、従業員の働き方改革などを推進する。ESG経営はCSRスローガン〝未来への思いやり〟の下、今後も環境に配慮した製品の提供に努め、カーボンニュートラルを達成する取り組みや地域社会に根差した支援活動を推進する。コーポレートガバナンスの一層の強化と安心・安全で働きやすい職場づくりを目指す。