2021年4月5日

【トップインタビュー2021】ユーシー産業
永𠮷昭二社長

空調排水配管=ユーシー産業
市場に適合し、求められる製品を

ホーステクノミストとして、社会のさまざまな領域で利便性を提供しているユーシー産業。近年季節による寒暖差が極端に大きくなり、未知のウイルスの感染症拡大、台風や地震などといった激甚災害など、われわれを取り巻く環境は大きく変化している。そうした自然の猛威に対してフレキシブルホース・パイプの専業メーカーとして、同社では技術力を前面に効果的な対応力を発揮し、生活環境の安心・安全・防災・減災、復興などに貢献している。高品度の製品をいち早く現場に届けられるよう、リードタイムを主眼に置いた国産化への移行、開発技術、生産現場の再構築など、常に未来を先読みしながらトラブルや市況による外圧、業界の風向きの変化に対して対応する。強い信念の下、業界の正道をひたすら突き進む永𠮷昭二社長に話を聞いた。

【2020年12月期の決算概要について】
売上高は前期比98・9%、計画比では96・0%となり、利益面でもほぼ前期並みで着地した。20年度は、空調機器メーカー向けのドレンホース、キッチンメーカー向け排水ホース、エアコン用換気用ホース、ハウジング向け換気ダクトなどといった前年度の10月より立ち上がった新製品における新規受注効果に期待を寄せていたが、コロナ禍により期待していたほどの増収結果が得られなかった。政府による緊急事態宣言の発出により、各施工現場においては工事の停止や延滞などを余儀なくされたことで、業務用空調機器配管材料、各排水材関連も伸び悩んだ。工事店向け商材も同様の打撃を受けたが、前期の12カ月中、6カ月間は前年同期を上回る数字を確保できたことで、最終的には、ほぼ前年並みの売り上げを維持することができた。

【今期(21年12月期)に入ってからの出だしと中期的見通しは】
2月末の現在の業績においては前年比110%、予算比105%で推移している。昨年大きく減少した空調機器分野以外の家電向けについても受注を順調に伸ばすなど、今期で予測したプラス要素がそのまま実績に反映された。エアコンについては、ウイルス対策の観点から換気機能付きエアコン需要の高まりが予想される。季節要因としてはこの夏も猛暑予測が出ており、各空調機器メーカー向けドレンホースの需要増も期待できる。各エアコンメーカーにおける生産量が増加することで、施工時に使用されるNDH(断熱ドレンホース)をはじめとする、ドレンホース等の排水配管関係の販売量も伸びる見通しから、当社としても在庫のレベルを例年よりも引き上げることで、こういった動きに対応する。

ハウジング向け換気ダクトについては、前年度の10月より立ち上がったユーザーの新規受注による増加分が、今期通年で受注できる需要環境にあったことから大幅増を期待していたものの、コロナ禍の影響によってハウジングそのものの市場が大きく冷え込こんだ。そのため大幅な軌道修正を余儀なくされ、ほぼ前年並みの業績を予測している。ただし22年度は大きな需要の伸びが期待される。21年度12月期については前期比3%増を予想しており、増収増益を見込んでいる。

【コロナ禍によってサプライチェーンなどに受けた影響は】
中国で生産していたNDHシリーズは、既にコロナ禍前に国産化を完了しており、その混乱における供給問題は発生しなかった。中国依存が継続していた場合、供給に支障がきたす可能性も高かっただけに、正しい選択であったと自負している。総出荷量は19年度には届かなかったものの、納期遅延を発生させることなく安定した供給体制を維持できた。同時にYDH(断熱ドレンホース)シリーズも昨年初めから国産化しているが、認知度の高まりもあって出荷量を25%程度伸ばしている。シーズン前ながら、今期も引き続き出荷量は高まっており、前年比で30%以上出荷量が増えている。コロナ禍にあって、いまだ直接訪問による営業活動が制限される状況にあるが、NDH、EDU(エバックドレンアップホース)、YDHなどといった当社のブランド主力製品を中心にSNS等を利用したキャンペーンや販促活動を活発化させ、各アイテムとも猛暑の予想が外れた場合であっても、昨年を上回る出荷量へと引き上げていきたい。

【貴社の強みと、各業界からの信頼度の高い背景、そして今後の展望は】
ホース業界における当社の位置付けをふかんすると、特殊な市場に身を置いていると考えている。フレキシブルホース業界そのものが、ホース業界全体においても特殊な位置付けに置かれている状況にあり、限られた市場として存在している。そうした環境にあって当社はサクション、ダクト、電線保護管などの規格品を中心とした市場へは参入することなく、規格品(自社ブランド品)として参入している市場は、空調用排水配管市場や建築建設用排水材等電材・空調資材チャネルや管工機材チャネルで取り扱われる商材が中心となっている。売り上げ構成比の65%が各機器メーカーに対する売り上げであって、部品の一つとして使用されている。そうした背景にあって一般的なホース・ダクト業界の変化がそのまま当社における変化要素には当てはまることなく、当社の考える事業展開と業界全体の動向は、同じベクトルを描くことはないと考えている。中国における生産時には、鳥取工場の生産比率は60%程度であり、NDHなどの内製化に伴って、前期はその比率が70%を超え、25年には80%にまで拡充する構想を立てている。そのロードマップにおいて自動化・合理化を進め、工場生産量の増加に対して、スタッフは逆に減少させる方向性で取り組み、安定したコンパクトな工場を目指していきたいと考えている。ターゲットの市場としては、現在販売している空調排水配管市場において、さらにその存在感を高め「空調排水配管=ユーシー産業」と称される位置付けにまで持っていきたい。同時に建築建設分野におけるフリーパイプシリーズも〝曲がる塩ビ管〟として〝屋内・屋外・埋設〟の各分野で〝塩ビ管継手の一つ〟として定着させるための活動を継続していく。当社としては、世の中に物理的な物の移動(空気・液体・その他物体)が発生するところには必ず管路が必要とされ、そこにはホースやダクトが必ず存在するという摂理を重くみている。その中での役割が各製品によって異なるだけで、今後ともその総合的な需要がなくなることはないと信じており、各ニーズの変化によって、求められる製品は異なるものの、各社の得意な分野から細かなセグメントの新製品が生まれ、当社としても各ニーズに対応し続ける姿勢を大切に持ち続けている。そうした状況にあって、地道に事業の歩みを進める各メーカーとの協働によって、社会から求められるメーカーとしての当社の存在価値は決して揺るがないものと信じている。

当社におけるハウジング向け換気ダクト市場における展望は、今期においてはハウジング業界全体の落ち込みよる影響は受けたものの、今後とも換気需要の安定した成長とともに市場は拡大すると考えており、販売量は増加し続けると見込んでいる。その市場に適合し、求め続けられる製品の開発を続けていくことこそが、今後の成長と発展を果たす自明の理であると常に自らを奮い立たせている。