日本ゼオン
“ものづくり”への転換強く推進
新中期経営計画を策定
3つの全社戦略立案
日本ゼオン(田中公章社長)は4月28日、「2021年3月期決算ならびに中期経営計画の説明会」をZoomウェビナーによるライブ配信によって実施し、2021-22年度の新中期経営計画ならびに30年のビジョンについての概要説明は田中社長自らが行った。
今後の展開に向けて、前中計「SZ―20PhaseⅢ」の成果を振り返り、実績と課題の洗い出しを実施。高機能材料事業では、光学樹脂・光学フィルム・電池材料が堅調に推移し、18年には売上高の過去最高である3375億円に貢献したが、エラストマー素材事業については、米中貿易摩擦や新型コロナ感染拡大による世界経済停滞による影響に見舞われ、目標として連結売上高計画に置いていた5000億円以上については未達となった。こうした経験を踏まえ、30年を目標とする事業堅ろう化施策としては〝既存事業の磨き上げ〟〝新規事業の探索〟を徹底的に追求し、レジリエンスに富んだ企業体を構築する。既存事業の磨き上げに向けてはエラストマー事業(合成ゴム・ラテックス・化成品)において、差別化製品の強化・各生産ラインの効率化を実施。高機能材料事業(化学品・トナー・電子材料・光学フィルム・メディカル)に対しては、強みである部分を一段とブラッシュアップし、製品開発と能力増強に拍車を掛ける。その方策には資源や設備の利用効率の向上、既存事業の持続可能性の追求といった精神が強く息付いている。
かなめとなる方策としては全社戦略としては、カーボンニュートラルならびにサーキュラーエコノミーを実現する〝ものづくり〟への転換を強く推進。
既存事業の磨き上げにおいては、高機能樹脂と電池材料の強化、既存SBUの勝ち残りに徹底して取り組み、30年に目指す目標値としてSDGs貢献製品の売上高比率50%、既存事業のROICを9・0%として置いている。電池材料の強化を図り「リチウムイオン電池に求められる5大性能(容量)(生産性)(寿命)(安全性)(充放電レート)の向上に継続して取り組み、先に発表したAFL(セパレータ用接着剤)を開発したように、リチウムイオン電池の長寿命と高性能性の実現への貢献を果たす」(田中社長)。
高機能樹脂の強化に向けては、成長市場をけん引するタイムリーな能力増強に対する投資を積極的に実施し、7月完工する水島工場においては、年間生産量を3万7000㌧から4万1600㌧にまで増強する。「成長市場をけん引するだけでなく、安全で快適な生活空間を支える用途に展開し、すべての人々の快適な暮らしを支える」(同)。
新規事業の探索に向けては、重点分野を定めてリソースを集中投入し、新規事業売上高として600億円(19年度比)の上乗せを図る。医療・ライフサイエンス、CASE・MaaS、情報通信(5G、6G)、省エネルギーといった4つのテーマに軸足を置き、検査分析用途部材であるマイクロ流路チップにCOP(シクロオレフィンポリマー)が用いられており、こういった材料分野向けに積極的に販売。くっ付かない物質同士を接着する新開発素材による自動車マルチマテリアル用接着剤、AI向けのCFRPなどを早期に市場投入し、CASE、MaaS、医療・ライフサイエンス分野で早期に役立てられることによって、安全と軽量化の観点から社会の発展に尽くす。省エネルギー・情報通信の分野では、新開発耐熱COPを用いたフィルム回路基板・半導体容器、TIM、ソーラーカードに力を注ぎ「現在は新製品であるシート系熱界面材料TIMソーラーカードの商品化に力を入れており、テスト販売によってユーザーの意見を聞きながらデザインなどの決定に向けて取り組んでいる。上市後はマーケティングに力を注ぐ」(同)。
ガバナンス面では、顧客価値の創造に貢献するDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を目指して、デジタル基盤の整備に注力。人材育成(パワーユーザー育成など)、既存事業のシミュレーション高度化、スマート工場の推進を図り、デジタル基盤の整備を推し進める。市場・事業のグローバルでのリアルタイム把握によって、経営・事業マネジメントを変革。MI・AIによるビジネスモデルの変革によって顧客価値の創造力を高める。「これまでにないスピードで取り組み、スマート工場の立ち上げ、人材育成の構築を早期に実現させる」(同)。
社会的には、カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを実現するものづくりへの転換を推進。50年を見据えたカーボンニュートラルマスタープランを策定し、長期的なものづくり転換に必要な研究開発・技術革新を粘り強く実施することで、バイオマスから原料ブタジエンを生成する技術開発を行ったかつての案件のような事例を拡大し、CO2総排出量を13年の72万2000㌧レベル以下にもっていく。
企業理念(使命)である「大地の永遠と人類の繁栄に貢献する」に加えて「持続可能な地球」と「安心で快適な人々のくらし」に貢献する姿勢を堅持しながら、30年の企業としてのビジョン「社会の期待と社員の意欲に応える会社」を目指す。