JSR
インプリアを完全子会社化
半導体材料事業利益拡大
米国にSPC設立
JSR(エリック・ジョンソンCEO)は、米国の次世代EUV用メタルレジストメーカーであるインプリア・コーポレーション(アンドリュー・グレンビルCEO、以下、インプリア)における株式の79%分を追加取得し、JSRの子会社とすることについて合意し、9月17日に契約を締結した。これにより、2017年と昨年に取得した21%分の株式と合わせて、全株式を保有することとなる。今回の買収は規制当局の承認の取得などを前提としており、来月末までの完了を予定している。
JSRグループはグローバル市場での成長性が大きく、JSRの強みである技術革新力を一段と発揮できるデジタルソリューション事業ならびにライフサイエンス事業を成長のドライバーとして事業拡大に注力している。デジタルソリューション事業の中でも特に半導体材料事業においては、技術力に裏打ちされた高付加価値製品に特化し、製品能力も増強してきた。主力であるフォトレジストは高い利益率を維持しながら市場拡大に合わせて拡販し、事業成長を実現している。現在、半導体製造に使用される最先端リソグラフィ工程においてはEUV技術が量産適用されており、JSRのEUVフォトレジストは高い信頼を獲得。今後の半導体製造においては微細化が進み、EUVフォトレジストの使用量も増加することが予想されている。今後の半導体は3㌨㍍、2㌨㍍世代へと移行し、半導体が微細化するにつれて高解像度のEUVフォトレジストが必要とされ、その達成に向けた有望な素材として、メタルレジストに高い期待が持たれている。
インプリアは07年の設立以来、メタルEUVレジストの開発に取り組んでおり、今年6月30日現在の資本金は7422万4000米㌦。主要製品となっているスズ酸化物を主成分とするメタルレジストは、EUV露光系で世界最高性能の限界解像度を達成している。従来のレジストに比べてドライエッチング時のパターン転写性能が高く、半導体の量産プロセスに対しても優れた適正を保有。今回の買収完了によってJSRの強みであるフォトレジストの製品ポートフォリオに対し、有力な将来技術であるメタルレジストを加えることで、顧客のさらなる微細化技術を支える先端材料企業として、シームレスに価値を提供していく。
今回の買収に向けて、JSRでは米国デラウェア州に特別目的子会社(以下、SPC)を設立。インプリアと合併させる手法によって買収を行った。合併後の存続会社はインプリアとなる。インプリアにおいては既存の株主が保有する株式が消却される代わりに、その対価としてJSRから現金を受領する権利を取得する。SPCの株式は、合併の効果によってインプリアの株式に転換され、インプリアはJSRの完全子会社となる。
今回JSRとインプリア間で、インプリアの事業価値5億1400万米㌦(約565億4000万円)で合意。インプリアの将来収益力に基づくDCF法や類似企業比較法によってJSRが総合的に評価した算定結果のレンジに含まれている。
JSRでは半導体材料事業における売上高の伸び率を市場成長の2倍に設定しており、コア営業利益率についても23%という高利益率維持を目指している。M&Aを含む事業規模および事業分野の拡大を積極的に進める戦略を打ち出しているが、今回のインプリアのメタルレジストに対する価値として、将来に向けた技術障壁のブレークスルーを生み出す重要なカギとしても期待しており、先端EUVレジストの重要性・価値が持続的に高まっていく状況にあって、JSRが半導体分野における技術革新を主導していく。