2022年4月5日

【ホース・チューブ・継手特集】八興
ロボット関連需要に注力

フッ素チューブ新製品好評

樹脂ホース・チューブ・継手の専門メーカーである八興の今期(2022年3月期)の業績は売上高は前年比20%増で着地する見通し。前期ではコロナ禍によって主力の食品・飲料関係が大きな需要の低迷に見舞われたが今期では前年の売り上げ減少分をほぼ回復。年明けの1、2月ではオミクロン株の急拡大による影響や昨秋実施した価格改定に起因する駆け込み需要の反動もあったものの、昨年に引き続き半導体関連のほか、医療機器向けが好調に推移したことが販売拡大の追い風となった。

今後の営業面での方針としては、主力需要先の飲料業界のほかにもロボット、医療・分析機器といった〝デジタル分野との親和性が高いビジネス〟の一層の拡大を図る。一例を挙げると、同社ではこれまで災害時の倒壊家屋で威力を発揮する捜索用のヘビ型ロボットなどでの導入事例もあり、今後はそういった知見と実績を生かしながら「配膳ロボットやロボットバーテンダーなど、新しい生活様式の中で活躍の場が広がるロボット関連の需要の取り込みに注力していく」(同社営業部)。

社内の組織体制においては21年の10月から営業部に「DX(デジタルトランスフォーメーション)グループ」を設置。また、海外を含めた「新市場・新製品開発グループ」も同時に立ち上げており、DXグループはウェブ関係などのインサイドセールスを強化。新市場・新製品開発グループではプッシュ型の営業によって顧客ニーズを吸い上げ、2つのグループで意見を交換しながら新規マーケットの開拓に向けた取り組みを加速させていく。同社ではこれまでも医療分野やロボットをターゲットに新製品の芽を育てる活動を展開してきたが「目的に対する意識の醸成と共有を図り、さらに組織としての責任を明確にするため、グループごとに一定の権限を付与して推進している」(同)。

新規の顧客開拓を視野に引き続き注力する製品は、卓越した柔軟性が市場で好評な柔軟フッ素ホースシリーズ。中でも「スーパー柔軟フッ素ホース」は、これまでのフッ素ホースと比較して柔らかく折れにくいことがユーザーの評価につながっており、近年では医療・分析機器やロボット関連などでの採用が増えつつある。また、同社では〝さらに柔軟性に富んだ製品を〟というユーザーの要望を実現した「スーパー柔軟フッ素チューブ(ウルトラソフト)」も昨年から市場投入。積層構造により従来品(スーパー柔軟フッ素チューブ)より柔軟性を4倍にアップさせており、ユーザーの作業性の向上に非常にメリットが高い。一般的に新製品は市場での認知に相応の時間を要するが「ウルトラソフトは従来品との比較においてさらに柔らかい特性が分かりやすく顧客の反応が良い。今後もサイズを拡充しながら、さまざまなお客様のニーズに追随していく」(同)。

また、継手製品についてもカーボンで強化した「PEEKナット締め継手」を昨年8月から販売開始。耐熱性・耐薬品性・機械的強度に優れることに加えて重量はSUS継手の5分の1以下を実現している。作業時の簡易さも秀でていることから柔軟性フッ素ホースシリーズとセットでの使用を提案することでユーザーの〝安全・安心〟に貢献していく。

今後の大きな課題としては、同社ではコロナ禍がもたらした市場への影響は今期も継続するものと見ており、県をまたぐ移動をはじめ従来の営業活動にも制約があることで、新規ユーザーの開拓に向けてはITを駆使しながら需要先との接点を見いだしていくことに努める。顧客とはオンラインでの打ち合わせの頻度を増やし、ウェブからの問い合わせにも迅速できめ細やかな対応を実践。特に首都圏以外のユーザーについては電話やメールだけでは商談が円滑に進まないケースが多いため、デジタルツールをうまく使ったコミュニケーションを念頭に推進する。

また昨年からの相次ぐ原材料の高騰が収益を大きく圧迫しており、同社としては出来うる限りのコスト削減対策を講じてきたものの「製品の安定供給を努めるためにも今後、価格改定を検討せざるを得ない」としている。