レゾナック
6G向け半導体の新材料開発
新設オープンイノベ拠点で始動
昭和電工と昭和電工マテリアルズの統合により発足したレゾナック(髙橋秀仁社長)は今月、次世代通信規格6G向け半導体の新材料開発を分子設計レベルから進めるプロジェクトを立ち上げる。横浜市にオープンした同社のR&Dの中核拠点〝共創の舞台〟において、ベンチャー企業や大学と協業。この施設には昨年12月末までに、計算科学や材料解析などのプロフェッショナルな機能組織が集結しており、それらの力を今回の開発にも生かす。2030年前後に実用化されると言われる6Gは世界各国で開発競争が始まっており、同社はテラヘルツ帯を活用した高周波対応材料の開発を進める。
6Gの新材料開発においては、通信速度が5Gの100倍となることから、伝送損失を大幅に削減する新しい半導体材料へのニーズが浮上。この課題に対し、同社では複合材料用の樹脂、フィラー向けのセラミックス・界面制御技術などといった、素材合成の段階からゼロベースで開発に取り組んでいく。新材料の開発においては、必要となる特性を出す目的において、材料同士の組み合わせを、分子設計の段階からシミュレーションやAIを活用して探索。従来は見いだすことができなかった化学構造式を短期間で導き出すことが可能になる。人間のみで行う実験では、1つの素材の組み合わせの検証に3カ月の期間を必要としていた状況を、1日で1つの組み合わせによって計算可能となり、3カ月で90種類の組み合わせの検証が可能となる。
こうした開発を支える組織が、基盤機能のプロフェッショナル集団であり、レゾナックR&Dの中核となるオープンイノベーション拠点である共創の舞台には、同社の強みである計算科学、材料解析、量産化のための製造プロセス技術・設備管理、化学品安全管理・評価の専門機能を持つメンバーが集結。計算情報科学研究センターには、これまで石油化学や基礎化学分野において、分子設計レベルの触媒開発などに携わってきたシミュレーション・AI・MIなどについてのスペシャリストが70人在籍しており、その多くが半導体材料の開発にシフトし、今回のような開発を支える。生産プロセスの検討段階では、量産化技術の専門家が活躍する。
共創の舞台では、中長期の社会課題の解決をテーマとして稼働。最初に取り組むテーマとして、6G向け半導体材料以外にケミカルリサイクルがあり、50年カーボンニュートラルの実現に向けて、プラスチックの原料であるエチレンなどの使用済みプラスチックから直接作る方法を探っている。技術課題の克服だけでなく、事業化のための課題解決には回収に協力し、リサイクル製品を使う人々の声も不可欠。共創の舞台では、自治体や生活者などの幅広いステークホルダーとの対話や共創を通じて、課題の解決を目指す。