日揮ホールディングス
廃食用油原料に航空燃料
国産SAF供給体制
脱炭素化向け各社と構築
日揮ホールディングス(本社・横浜市、石塚忠社長COO、以下、日揮HD)は、レボインターナショナル(本社・京都市、越川哲也社長)、SAFFAIRE SKY ENERGY(本社・横浜市、秋鹿正敬社長)、横浜赤レンガ倉庫(本社・横浜市、五十嵐光晴社長)との4社の取り組みを通じて国産の持続可能な航空燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)が供給できる体制を整えていく。同事業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より採択を受けた助成事業であり、SAFは使用済み食用油(以下、廃食用油)などを原料とする航空燃料として従来の航空燃料と比較し、CO2排出量を大幅に削減することが可能となるエネルギーとして大きな注目を集めている。航空機は自動車などとは違って、電気や水素などの燃料では代替が難しいことからSAFの利用によるCO2排出削減が世界で求められている。
日本では、国土交通省が2030年の時点で国内航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換える目標を掲げており、2050年には、カーボンニュートラルを完了させる目標を目指している。その実現に向けては、国産SAFの原料である廃食用油の安定的な調達が課題。一方、SAFの原料である廃食用油は、年間およそ10万㌧が海外に輸出されていると言われ、輸送によりCO2が排出されるだけでなく、国産SAF製造における貴重な原料流出につながっている。
国内資源循環による脱炭素社会実現に向け、本年4月に「Fry to Fly Project」がスタート。先月末の時点で、49の企業・自治体・団体が賛同しており、個人や自治体、企業がSAFの原料となる、家庭や飲食店など身近な場面で発生する廃食用油の提供や取り組みについての周知・発信が行われており、日本国内における資源循環の促進に直接参加することができる場となっている。Fry to Fly Projectでは、家庭や店舗など等から排出される廃食用油の収集を促進し、自治体との連携により廃食用油のSAFへの活用に関する教育活動を実施するなど、日本国内における脱炭素化に向けた資源循環の促進に積極的に参加できる機会として創出されている。
日揮HDでは、横浜赤レンガ倉庫のイベントなどによって発生する廃食用油を継続的にSAFに活用する国内初となる取り組みに対して、国産SAF製造に向け、廃食用油の供給に協力する基本合意書を今月13日付けで締結。今回の4社は、横浜赤レンガ倉庫の館内店舗や主催イベントの会場における廃食用油を、SAF製造の原料として供給することによって、資源の有効活用を通じて気候変動対策への貢献を目指し、循環型社会の実現のために相互に協力する。
横浜赤レンガ倉庫は、年間を通じて数百万人規模となるイベントを開催。今回の取り組みによって、横浜赤レンガ倉庫が主催するすべてのイベントで発生する廃食用油を、SAF製造に向けて供給していく。大規模イベントで発生する廃食用油を継続的にSAFに利用していく取り組みは、国内で初めてとなる。
横浜赤レンガ倉庫では、各店舗や主催イベントの会場で使用した廃食用油を提供。以後に開催する主催イベントや、館内の各店舗における廃食用油を順次提供する。レボインターナショナルは、横浜赤レンガ倉庫における廃食用油で収集された廃食用油を、SAF製造装置向けに引き取り、SAFFAIRE SKY ENERGYは、24年度下期~25年度初頭の生産開始を目指し、大阪府堺市で建設中の日本初となる国産SAFの大規模生産プラントにおいて、レボインターナショナルから引き取った廃食用油を原料としてSAFの製造を実施。日揮HDは、廃食用油を原料とするSAF製造事業に関するサプライチェーンの全体構築を行う。
今回の取り組みは、横浜市をはじめとする多くの団体が参加。国内資源循環による脱炭素社会実現に向けて設立されたプロジェクトあるFry to Fly Projectに賛同しており、主導する日揮HDとは脱炭素先行地域「みなとみらい21地区」の参画施設同士として、地元横浜から世界へ向けたサステナブルな施策に貢献する。
日揮HD、レボインターナショナルは、コスモ石油と共同で国内での廃食用油の収集からSAFの製造・輸送・供給に至るまでのサプライチェーン構築に向けての事業化検討を進め、22年11月1日付けで新会社・SAFFAIRE SKY ENERGYを設立、国内で発生する廃食用油のみを原料とした年間約3万㌔㍑のSAFの供給を目指している。