旭化成
コンセプト実証に成功、実用化に前進
LIB用超イオン伝導性電解液
本電解液の特徴と顧客提供価値
旭化成(工藤幸四郎社長)は、同社が開発した超イオン伝導性電解液(以下、本電解液)を使用したリチウムイオン電池(以下、LIB)のコンセプト実証(以下、PoC)に成功したことを発表した。
本電解液は、溶媒にアセトニトリルを含むことで既存の電解液では実現困難な高いイオン伝導性を有しており、さまざまな機能を有する電解液成分を調合し、LIB用電解液として、狙った機能を発現させる技術である同社独自の「電解液組成調合技術」と、LIBにおいて充電・放電の繰り返しを可能にするために、活物質と電解液との界面における電解液の電気分解反応により、電子絶縁性かつリチウムイオン伝導性の不働態被膜を均一に形成する技術である「電極/電解液の界面制御技術」によって現行LIBの課題である「低温下での出力向上」と「高温下での耐久性向上」の両立を実現した。これらは、出力向上・急速充電などを可能とし、電動自動車等における搭載電池の削減や、電極の厚膜化による電池の容量アップおよび低コスト化に貢献する。
LIBは、一般的には10~45度程度の温度範囲内での使用が推奨されているが、近年、電動モビリティや電力貯蔵システムの多様化、また世界各国におけるLIBの需要拡大に伴い、低温および高温下で使用するニーズが高まっている。しかし、低温下では電池容量および出力の低下、長い充電時間が問題となっており、高温下では電池の劣化が加速され、寿命が短くなる問題がある。
同社はアセトニトリルの高い誘電率と安定性に着目し、2010年から同社名誉フェローの吉野彰氏が率いる吉野研究室で本電解液の研究開発を開始。独自の電解液組成調合技術と電極/電解液の界面制御技術によって低温下で高い電池性能を維持するとともに、高温下でも高い耐久性を有する電解液を実現した。
実用化に向けたPoCは、リン酸鉄(LFP)系円筒電池において実施され、マイナス40度の極低温でも高い出力で動作し、かつ60度の高温でも高い充放電サイクル耐久性を有することが実証された。今後、自動車メーカーやLIBメーカーとの連携を強化し、2050年の実用化を目指す。
同社は、今回のPoC成功を契機に、本電解液の技術をLIBメーカーに広くライセンスすることでLIBの高性能化と、コストダウンおよび低炭素社会に貢献していく。