2022年10月25日

【ホース・チューブ・継手特集】
十川ゴム

産業用ホース全体は好調
複数企業と共同開発

十川ゴムが手掛けるホース・チューブ事業の状況について今期(2023年3月期)の第1四半期売上高は、前年同期比で2ケタ以上の増加となり、それ以降の7月、8月はさらに大きな伸びとなっている。今期は滑り出しから好調な展開となっているが、前期の下期において回復基調へと潮目が変わっており、現状はその流れの勢いに乗っている。今期も既に下期に入っているが、伸び率を前年同期と同様に維持させる状況は困難とみられるものの、通期については対前期比8%程度の伸びを見込んでいる。

需要業界別の状況は、自動車産業用が前年の落ち込みが激しかったこともあり、大幅に増加したものの、依然として計画にまでは達していない状況。ただ産業用ホース全体では住宅設備産業用、油圧機器産業用、設備装置産業用、船舶・車両産業用、一般機械産業用、食品機械産業用などといった多くの分野において2ケタ以上の伸びを示しており、全体としても好調に推移している。

今後の予測としては、油圧機器産業用や設備装置産業用、一般機械産業用については引き続き好調に推移すると見込んでおり、今後の事業の先行きにおいてもこれらの産業に向けた製品の拡販に注力していく。一方、製品開発においては見方を切り替え、これまで販売品目の主力の地位を占めていた大量生産型製品から、ソフトロボット産業関連製品や特殊金具仕様バンドレスホース、持続可能な開発目標にかかわる製品開発など、特殊用途を中心として世の中に求められるモノづくりに対する製品開発に着目していく。

現在、同社が取り扱っている製品は既に全体の75%程度が特殊用途品に置き換わっており、ゴムホースでは85%程度にまで及んでいる。顧客との共同開発品やカスタマイズ展開も含んでいるが、ペースとしては毎年10%以上の割合で新製品がラインアップとして加わっている。共同開発品については、同社と顧客との取り決めもあることから、製品自体の内容やテーマの大部分は開示されることはないが、今後の同社の体制としてはシリコーン3Dプリンターおよび3Dスキャナーなどの導入に加え、液状シリコーンゴム製造設備や特殊インジェクション設備の追加導入、医療機器産業用途設備の拡充なども推進。ユーザーとの共同開発だけでなく、同じゴム製品および樹脂製品を製造するメーカーや、全く異分野である複数企業とも共同開発を推進しており、互いの得意分野を生かしたモノづくりにさらに磨きをかけている。業界の流れとして自動車産業はEV化の進展、建設機械産業用においても化石燃料からバイオ燃料へと内燃機関における潮流の変化を念頭に置く必要があり、開発の余地も多岐にわたっている。EVについては、電動に移行する上での大きな構造変化があるとともに、熱マネジメントの重要性が一段と高まるなど、新たな項目が浮上している。同社としては得意分野における独自技術を駆使することで課題解決を果たし、新たな時代においてもメーカーとしての重要な役割を担っていく。

現在、同社が抱えている最も大きな課題としては原材料価格、物流費、ユーティリティコストなどの高騰がかつてない勢いで進んでいる状況によって苦難を強いられており、現状ではモノづくりの継続という次元で深刻化。原材料関係については価格高騰にとどまらず、供給量の不安定化や原材料そのものの統廃合など、数多くの問題が生じている。代替原材料については、技術スタッフの努力によって逐次検討が進められているが、原材料価格面についてはアップ率、改定頻度ともに従来の概念をはるかに超えるレベルで上昇。同社では可能な限りの原価低減努力を継続してきたが、自社におけるコストダウンへの万策が尽き、同社内で吸収しきれない部分については、原価上昇率、短いスパンでの原材料および部品価格の上昇に見合った頻度で価格改定を顧客にお願いする形で進めている。ただし、原材料価格が下落した場合は、同様に販売価格を下げる心積もりで価格改定に臨んでいる。

同社では、創業以来の長い歴史の中で〝十川ゴムらしさ〟というものを生み出してきた。例えば製品設計コンセプト、社風など、長期的、持続的な競争力が創り込まれている。この数年は新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、仕事のリモート化を推進、急激で飛躍的に業務改善が進んでいった。しかしながら、こうした流れの中にあって再び対面活動も復活させ、従業員に技術継承や教育の機会を促進し、顧客・取引先とともに成長する事業体制の構築を目指す。時代の進展に伴って、ホースに求められる性能や品質も変化していく流れは確実であり、そういった要請への対応には、これまで培ってきたノウハウや技術力が大きな力を発揮する。ホースに対するニーズの変化などを肌で感じられるようになってきたが、3Dプリンターなど新しい設備の導入によって解決の糸口を見出し、新たな顧客要望に対応し、満足度を高めることで着実に新しい引き合いは増えている。

ホームページの有効性も高まっており、ウェブを通じたコミュニケーションの充実も図っている。現在は環境の変化が大きく、加えてスピードが求められる状況となっているが、同社にかかわるすべての関係者のリアルな情報、助言から環境をくみ上げ、自ら新たな環境を創ることによって厳しい環境変化に対応。新開発という新たな挑戦がかなわなかったとしても、こういった経験は重要な財産として積み上がる。その後のチャレンジに臨んだ時、挫折から得られた教訓がノウハウとなって新たに成功へと導く。失敗を恐れることなく前向きに臨む意識には大きな意義があり、同社ではチャレンジを繰り返しながら新たな価値を備えたモノづくりを行っていく。