2019年12月15日

TOYO TIRE
「記者懇談会」で世界戦略に向けた熱意表明
成長を遂げながら勝ち残る挑戦を

TOYO TIRE(清水隆史社長)は12月3日、兵庫県伊丹市の同本社において、報道陣を対象とした「記者懇談会」を開催した。会場には清水社長をはじめ、山田保裕取締役会長、金井昌之取締役常務執行役員、取締役執行役員の光畑達雄氏、井村洋次氏、笹森建彦氏など経営陣が出席。報道陣を前に清水社長は、今年の主な出来事を振り返るとともに、来年以降に向けた世界戦略に対する熱意を表明。「当社は来年には創業から75周年を迎える。当社としては未来に向けた『新しい道づくりの年』とし、役員・従業員一人ひとりが掲げる大小のさまざまなチャレンジに絶え間なく取り組んで一つひとつ結実させていく」と意気込みを示した。

大型タイヤに期待を込める清水社長

懇談会の冒頭、清水社長は「本年1月1日付けでTOYO TIRE株式会社に社名変更し、国内では唯一、TIREの文字を冠した社名に改めたことで存在感を高め、〝第二の創業の年〟として新たな歴史の第一歩を踏み出した。ここ数年にわたってさまざまな取り組みを行い、コーポレートガバナンスに関しても、実効性の高い機能を強化することでその体制を整えた。タイヤ業界では随一の収益性の高さや、北米市場における強力な販売力などを源泉とした得意分野を強化するとともに、当社独自の強みに一段と磨きをかけるだけでなく、これまでは目には見えてこなかった弱点を克服することで、企業としてのこれまで以上の飛躍を果たす。成長を見据えた先行投資によってメーカーとしての競争力を一段と高め、非常に過酷な市場環境が予測されているタイヤ業界においては、当社としては今後の生き残りを目指すのではなく、常に成長を遂げながら勝ち残りをかけて挑戦を続けていく」と力強く宣言した。

 グローバルにおけるタイヤ業界を取り巻く現在の環境は、新興勢力の台頭によって業界全体の収益力が低下。卸売事業の再編やチャネルの買収、中国企業による同業メーカーの買収など、急速な勢いで業界地図の再編が進行している。そうした環境にあって同社では、北米で強みとしている大口径サイズのピックアップトラック用、SUV用タイヤなどといった差別化商品を投入し、独自性を持たせた品質によって市場競争を優位に進めている。ピックアップ/SUV/CUV用タイヤのグローバル販売本数に占める構成比率は、目標の40%に対し、直近では41%に達している。この収益性の高いポートフォリオにおける米国での成長戦略として、同社の米国製造拠点において第5期生産能力増強を実施している。ピックアップトラック、大型SUV向けとして、本年4月に増産設備を稼働、2020年9月より残りスペースに設備導入を進める計画を決定している。この拡張が完了すれば、乗用車タイヤ換算で年間約1400万本の生産能力を有する見込みだ。マレーシアでも、SUV/乗用車向けタイヤの第2期生産能力増強として年産240万本の能力増強を実施、10月に稼働を開始させた。国内において桑名工場は、トラック・バス向けタイヤを年産20万本増強する計画を進めてめており、来年7月から増産を開始させる。

懇談会に出席した首脳陣

同社では、新たな世界戦略の起点として欧州のセルビアに新工場の建設を決定しており、22年1月には生産に入る。欧州工場は、新たな企業ステージへの到達に向けた成長戦略の大役を担うプロジェクトとして位置付けられており、IoTを活用した次世代型の効率オペレーションにより、高付加価値製品を製造。年間500万本の生産体制を構築し、これを核に欧州市場で新たな戦略地図を描き出す。欧州向けには、年間600万本のタイヤを日本やマレーシアから供給してきた実績がある。

 「当社の成長戦略は、北米市場を主軸とした成長志向を基本路線とし、欧州市場への供給ルートは地産地消へと抜本的に変更する。また、セルビア工場と欧州R&Dセンター設立を起点にして、国内工場の再構築へと派生させるダイナミズムを持ち合わせている。市場の動きを細かく読み解き、固有のリソースをフルに活用して差別化された製品を供給し、供給オペレーションを最適化する。成長していくために、強みを補強し、弱みを克服していくこと、さらには持たざる強みというものを生かしていくことが羅針盤になる」(清水社長)。

 技術開発面では、ドイツにR&Dセンターを今秋開設し、現地で求められているニーズや、自動車産業の最先端情報を収集。技術革新によってつくり出された高性能タイヤを供給する。「当社では新しいブランドステートメントとして〝まだ、走ったことのない道へ。〟を制定し、道なき大地であっても、勇気を持って果敢に走り、新たな道をつくっていくというフロンティア精神に満ちた意味を込めた」(同)。このブランドステータスの下、新しく描いたTOYO TIREの成長した姿をしっかりと現実のものとする。