2020年1月10日

バンドー化学
インタビュー

確固たる成果打ち出す
改めて全社的な意思の統一を図る

バンドー化学 吉井 満隆社長

【昨年を振り返って】
 2020年3月期第2四半期の決算では、米中貿易問題の長期化の影響が業績に与えたインパクトは大きかった。主な需要国の状況を見ると、中国は日系カーメーカーの状況はさほど悪くなかったものの、ローカルカーメーカーを含めた全体の自動車生産が落ち込んでおり、当社の販売にもその影響が表れた。農機についても、これまで当社は日系農機メーカー向けのシェアが高かったが、中国政府による補助金制度の影響もあって中国ローカル農機メーカーが躍進しており、当社の販売も減少した。

 アジアではインドが伸び悩んだ。ノンバンクの貸し渋りによって新車販売の伸びが鈍化しており、自賠責保険料の引き上げもスクーター向け変速ベルトなどの販売の足かせとなった。一方、国内ではコンベヤベルトが鉄鋼向けの大型案件の増加により堅調に推移した。物流・食品業界向けの軽搬送用ベルトも依然として好調を維持しているものの、先行きは不透明だ。

 また、射出成形機・工作機械の機械受注が落ち込んでおり、伝動ベルトの販売も減少した。

 米中、日韓、欧州など、地政学的な問題がこう着状態であり、2020年前半は厳しい環境が続くと見通している。米国大統領選挙後には何らかの進展が見られるだろうが、当社としては、環境に左右されず、収益改善に向けた態勢をさらに固めながら、市場のセグメンテーションによって伸びる市場への製品開発と拡販を推進していきたい。

【中期経営計画「BF―2」(2018~2022年度)の進ちょく状況は】
 指針「新事業の創出」については、昨年5月に医療機器・ヘルスケア機器を製造・販売するアイメディックMMTを傘下に収めており、新事業推進センターの主導で「PMI(M&A成立後の統合プロセス)」を進めてきた。現在はシナジー効果の創出に向け、具体的な取り組みに着手している。当社の保有技術を活用できる領域も見えてきており、両社の強みを融合させることで、事業化に向けた動きを一層加速させていきたい。

 指針「コア事業の拡大」については、農機用伝動ベルトで、これまで当社が手掛けていなかった畑作用大型ハーベスタなどの部材供給を開始する。昨年、南海工場に生産ラインを構築しており、稼働を開始した。日系農機メーカーだけではなく、中国ローカル農機メーカーへの供給体制が構築できた。今後、供給量を伸ばしていきたい。

 指針「ものづくりの深化と進化」については、南海工場と和歌山工場における生産革新を進めている。生産効率を高める改善活動のほか、IoT、AI導入による工数低減にも取り組んでいる。

 今のところは代表的な数ラインにおける効率面の効果を検証している段階であるが、今後は順次ほかのラインへも展開し、本格的な成果を出していきたい。

【大変革期にある自動車産業への対応は】
 自動車の電動化については、今後もそれなりのステップを踏んで進行すると見ている。国内ではHV(ハイブリッドカー)やEV(電気自動車)が浸透しているが、欧米などではマイルドハイブリッドが伸びるだろう。その流れが続き、その後、2030年に向けては各国ともHV、PHV(プラグインハイブリッドカー)へとシフトしていく。この10年間は、従来まで主流であったレシプロエンジンが相応の量を保ちながら推移していくと見通している。当社としては短期・中期・長期それぞれのスパンで対策を講じており、短期的にはマイルドハイブリッドやアイドリングストップシステムで使われるベルトおよび周辺製品の開発を行っている。

 中期的な方向性としては、EV化に伴ってEPS(電動パワステ)に代表されるエンジン周り以外のベルトの需要が生まれており、ほかにも電動ブレーキやパワースライドドア向けなど、次世代自動車のニーズに沿った駆動系の開発を進めている。さらに長期的な視点では、ベルト製品以外の開発も推進している。パワーデバイスの熱マネージメント用の高熱伝導シートやディスプレイ関連の視認性を高める厚膜のOCA(光学用透明粘着材)が先行しており、早期量産化を実現させたい。

【さらなる成長を見込む需要分野と注力製品は】
 産業資材では、食品関係や物流機器向けは今後も伸びる領域ととらえている。軽搬送用ベルトでは食品用高グリップベルト「ミスタースパイク」、小プーリ対応フッ素樹脂ベルト「ミスターウルトラミラー」などの新製品を投入しており、さらに機能を改善・向上させた品ぞろえでシェアを高めていく。そのほか、昨年2度目の「省エネ大賞」を受賞した「HFDシステム」は、小型・中型・大型のラインアップをそろえ、多様な使用環境に適合させることで、幅広い産業界の省エネ化やメンテナンスフリー化といったニーズに貢献する製品として拡大をねらう。

【新年の抱負を】
 2020年度は中計BF―2の折り返し点であることから、最終年度の2022年を見据えて確固たる成果を打ち出していきたい。そのためにも、戦略を完遂するまでのマイルストーンを期限内にしっかりとやり切っていくことが大切で、改めて全社的な意思統一を図っている。昨年来、これまで経験したことのない世界的な変化の波が押し寄せているものの、今年も環境に左右されることなく、なすべき取り組みに対して、スピードを上げて実行していきたい。