2020年4月15日

ミズノ
「空飛ぶクルマの乗員用座席」開発

4社共同で性能確認試験 スタート
23年の実用化目指す

ミズノ(水野明人社長)およびジョイソン・セイフティ・システムズ・ジャパン(本社・東京都品川区、岩満久好社長、以下、JSSJ)、と有志団体であるカーティベーター(所在地・東京都新宿区、西田基紀代表理事)、スカイドライブ(本社・東京都新宿区、福澤知浩社長)は、2023年の実用化を目指してカーティベーターとスカイドライブが開発を進めている「空飛ぶクルマの乗員用座席」の共同開発を推進し、性能確認試験を開始した。

カーティベーターとスカイドライブは、空飛ぶクルマを3年後の23年に販売開始を目指しており、機体開発を進めていく中で、非常着陸時に乗員を保護する衝撃緩衝機能が備わった乗員用の座席の開発に着手。乗員用の座席は、空飛ぶクルマの構成品の中で最も重要な部品の一つとして位置付けられているものの、航空機レベルの性能を備えた既製品は非常に希少であり、入手を困難にしている。入手可能であっても、既製品では既存の航空機用に開発されていることから、空飛ぶクルマと使用状態の想定に違いがあることから、取り扱いが難しいという課題があった。

そうした状況にあって、シートベルト、エアバッグ、チャイルドシートなどの開発を進め、1世紀以上にわたって自動車の安全分野を開拓してきた、同分野のグローバルリーダーであるJSSJと、スポーツ品メーカーであるミズノが、シューズのクッション性と安定性を両立させるソール部分の基幹機能として使用している独自の波形プレート〝ミズノウエーブ〟の技術を応用し、4社で軽量・高性能な「衝撃緩衝装置が内蔵されたシート」の開発を進めることで協力。この一年間、研究開発を進め、今回性能確認試験を実施した。

試験日は3月3日で、試験場所にはJSSJの愛知川製造所を選択。衝撃緩衝装置としてミズノウエーブを内蔵した空飛ぶクルマの乗員用座席プロトタイプの性能確認を行うために、自動車のシートベルトやエアバッグの性能確認用に使用される、衝突状態の模擬を行うことのできるSLED試験機を使用した。試験を行った結果、ミズノウエーブについては、設計通りの性能を発揮することが確認できたほか、一般的な航空機用の座席よりも乗員の腰椎の負担(荷重レベル)がかなり低く抑えることができる可能性があるという事実が実証された。

従来のミズノウエーブと同様に、材料物性の調整ではなく、ウエーブプレートの形状を調整することで、希望の構造特性を衝撃緩衝装置部分に与えることができることから、短期間で多くの開発サイクルを回すことが可能となり、開発期間の短縮化を図ることができる。ウエーブプレートの特性上、クッション性と安定性という背反する機能を共存させることができることから、一般的な衝撃緩衝装置付きの座席に必要ないくつかの構成要素を省略することが可能で、軽量化にも向いているという特長を備えている。

空飛ぶクルマの正式名称は「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」と呼ばれ、電動化、完全自律による自動操縦、垂直離着陸を行えることが大きな特長。モビリティ分野の新たな動きとして、世界各国で空飛ぶクルマの開発が進んでおり、日本においても都市部でのタクシーサービス、離島や山間部の新たな移動手段、災害時の救急搬送などにつながるものとして期待されている。既存の航空機に比べて低コスト・低騒音、加えて離発着場所もコンパクトになることから、空の移動がより日常的になると考えられている。40年にはグローバルで150兆円の市場規模に達すると予測(モーガン・スタンレー調査)されており、重要な次世代産業の一つとされている。日本においても、18年から〝空の移動革命に向けた官民協議会〟が開催され、経済産業省・国土交通省によって23年の事業開始、30年の本格普及に向けたロードマップが制定されている。先進国においては渋滞緩和、災害時利用、新興国においては、インフラ不要の移動手段としての活用が見込まれている。