住友理工
「社長交代記者会見」開く
新たな事業展開の歩み加速(清水社長)
住友理工は7月9日、同社グローバル本社が所在するJPタワー名古屋(愛知県名古屋市)のホール&カンファレンスにおいて、「社長交代記者会見」を開催した。同社では6月18日付けで松井徹元社長が代表取締役取締役会長に、清水和志代表取締役執行役員副社長が代表取締役執行役員社長に就任して新たなスタートを切った。会見には松井会長、清水社長、前田裕久取締役専務執行役員が出席、今後の経営戦略および事業展開について詳細な説明を行った。
冒頭、あいさつに立った松井会長は「今後は経営全般を新社長に一任し、ふかん的な立場で経営を見渡しながら新社長をサポートしていく。社長交代の理由については、2018年度の赤字から脱却を成し得たことと、昨年末に創立90周年を無事に迎えたことを一つの良い区切りととらえ、新社長にバトンを渡す決断をした。清水社長は住友電気工業時代から(18年住友理工専務執行役員に就任)一貫して自動車関係の営業に携わっており、自動車分野で非常に広いネットワークを持っているため、われわれの主力事業である自動車部品において、より一層の拡大を図れる人物だと見込んでいる。また、前例にとらわれない柔軟性を併せ持っており、時代の急速な変化に対応し、指揮を執っていくには最適な人材だと考えている。2014年に社名を変更以降、住友グループとしての誇りを胸に、その責任を果たしていくための改革を進めてきた。現在、コロナ禍で大変な時にあるが、今後も清水社長とともに一層の発展に向けてまい進していきたい」と新社長の人物像に触れ、その手腕に大きな期待を寄せた。
引き続き清水社長がマイクを握り、「2018年の入社以降感じたことは、当社の社員は非常にまじめで、一途に仕事に取り組む人材に恵まれている。現在、管理職に就く人は名古屋地域の出身が多く、互いがうまく通じ合える文化が醸成できているように感じた。ただ、近年ではM&Aによって海外展開を急速に進めてきたことで、人材が多様化し、〝阿吽(あうん)〟の呼吸での意思の疎通は難しい場合が見受けられる。自動車も両輪が同調してこそうまく走行することができる。時代は〝CASE〟によって当社としても大きな変革を求められており、コミュニケーションをうまく図っていくための『価値を共創する仲間づくり』をさらに大切にしていきたい。また、『迅速な意思決定と機動的な事業運営』のためには、新体制に伴い役員数を3分の2まで減らして組織を簡素化した。営業本部においても組織を集約し、意思決定者を1人にしてスピードアップを図っていく。そして、『厳しいときこそ筋肉質な組織体質への変革のチャンス』ととらえ、生産拠点の見直しも視野に入れていきたい。世界の自動車生産台数が増えていく中、2014年より海外メーカーの買収によって着実に拠点を拡大してきたことは正しい選択であった。しかしながら、新型コロナ感染拡大の影響で自動車生産台数が伸び悩んでおり、これを見直しのチャンスととらえて国内外で需要に見合った体制を打ち立てていく。〝住友事業精神〟には『萬事入精(ばんじにっせい)』という言葉がある。どんなときでも、心を込めて物事に取り組まなければいけないという意味で、私は住友電気工業時代からこれを胸に刻んでやってきた。これからもこの精神を忘れずに経営に取り組んでいきたい」と述べ、今後の事業展開に掲げる4つのキーワードの説明を行った。
社内におけるコミュニケーションの一環としては、「トップからさまざまなことについて率直な話をした方が良い」(清水社長)と考え、新たな試みとして「社長ブログ」「社長チャンネル」を開始。自らの思いをブログに書いて同社ホームページで公開しているほか、社内でのインタビューも受け、記事を配信している。
同社では独自のSRセンサー(スマートラバー=柔軟かつ電気を通すゴムセンサ)で培った知見を生かし、自動運転と手動運転の切り替えを可能にするステアリングに搭載されるセンサー類など、次世代自動車向けの部材の開発も鋭意推進。今年中には顧客自動車メーカーへの販売開始を予定していると言う。
「住友電気工業時代から、EV・HV車関連など、自動車関係の技術において知らない技術はないと自負している。今後も住友電工と当社のシナジー効果をさらに出していきながら、CASE対応をはじめ、新たな事業展開の歩みを加速させていく」(清水社長)。