2020年9月25日

【ホース・チューブ・継手特集】十川ゴム
IoT時代の開発推進

不可欠な食の分野に力注ぐ

十川ゴムの2021年3月期における第1四半期のゴムホース関係の売上高動向は、用途別では自動車用が前年同期比20%減、高圧用が建機関係の減少によって同20%弱減、その他関連については同10%のダウンに見舞われた。構造別では、編上げ関係が同10%の減少となったものの、布巻・バンドレス関係については前年同期並みを維持した。樹脂ホース分野については、スプレー関係で同10%のマイナスとなったが、家電関係は前年同期並みで推移、水栓関係は同5%の増、食品産業関係は同若干増加となった。

今期にかけて、新型コロナウイルス感染症による影響が各種産業界や一般の消費動向に大きな影を落としているが、同社の生産体制については、工場の稼働は自動車通勤者が多いこともあって通常稼働を維持。勤務体制全般においては、各地区における従業員の安全性を考えた上でテレワーク、時差通勤などによって対応してきた。非常事態宣言時には、東京で勤務する100%の従業員がテレワークと時差通勤による勤務体制に切り替え、その他の地区についても発生状況によって臨機応変に対応しながら、50%程度の実施対応を行った。

営業戦略的にはテレワークに対応する目的からタブレットなどの機材の充実を図るとともに、ソフトやアプリも活用。ウェブ会議や、ウェブによる打ち合わせなど、移動に問題が生じた場合の環境下にあっても、情報システム部が主体となって、スムーズな社内外の対応を速やかに推進することができた。

今後の事業展開については、新型コロナウイルス感染症によるユーザー業界や社会の展望が見通せない以上、計画の不安定さを否定することはできないが、こうした時期であるからこそ、視野を広く持ち、今まで他社が手掛けてこなかった製品群にも改めて目を向け、不可能であると見切ってしまうのではなく、新たな工夫を加えることで、全く新しい製品をつくり上げていく姿勢が重要であると考えている。

同社では今後の事業展開方法については、IoT時代におけるデジタルデータを駆使し、新たな機能、価値を備えた製品設計開発の提案を推進している。注力業界としては「食」という、時代にとらわれることのない不変で必要不可欠な分野に力を注ぎ、現在では漁業・農業関係に向けた製品開発に取り組んでおり、食品工場用製品のさらなる充実も推し進めている。これまで困難であった特殊ケミカル系ホース開発へのチャレンジも実を結び、既にユーザーによるフィールドテストにまでこぎつけており、完成間近となっている。

こうした特別な時期だからこそ、同社は教育の充実にも目を向けている。営業部門では製品プレゼン教育の様子を動画によって社内イントラネットに掲載し、異なる拠点の教育を見ることで互いに切磋琢磨しながら学べるように体制を整えている。またウェブ活用によって遠隔地の複数拠点が同時に同じ教育を受ける方策も採用している。

業績については、上期全体の予測では自動車関係が徐々に取り戻してきており、前年同期比で10%強のマイナスになるとみている。下期については、さらに自動車関係の復調とガス産業用などの増加は予想されるものの、半導体関係の回復が思わしくなく、通期では前期並み程度を維持できるよう拡販に向けた努力を続けている。