2020年10月15日

アシックス
事業説明会を開催

テーマは「VISION2030」

アシックス(廣田康人社長)は10月5日、オンライン配信を通じて、同社が現在目指している、10年後のあるべき姿について説明する「VISION2030」をテーマとした事業説明会を開催した。スポーツや健康のカテゴリーでは、高齢化社会や少子化、最近では新型コロナウイルス感染症拡大によるスポーツ文化の減退など、さまざまな懸念材料が社会全体に影を落としている。その一方で同社では、だれもが心身ともに健康に活躍でき、幸福感を感じ取れる社会の構築を思い描いている。説明会ではスポーツで培ったさまざまな知見を最大限に活用し、さらに進化させながら同社が独自に考えるスポーツ企業としての在り方をフレームワークに沿って披露した。

最初に登場した廣田社長は「本日の事業説明会では、10年後のアシックスが見せたい姿を皆さんに知ってもらいたい」と前置き。説明会には同社経営企画室戦略企画チームの大明篤史マネジャーも同席し、主にビジョン実現に向けた今後の同社の取り組みなどを説明した。世界を取り巻く情勢は驚くほど速い速度で変化しており、子どもの肥満や、精神面での不健康化など、WHOでも課題として浮上。同社では、それらをスポーツを通じた取り組みによって貢献できるという考え方を信条としており、創業者の鬼塚喜八郎氏による〝健全な身体に健全な精神があれかし〟という理念を基本としながら、新事業展開では、スポーツの概念そのものにくさびを打ち込む。今後は世界レベルでの平均寿命の延びが予測され、生涯健康という言葉の重要性が一段と上昇。同社では競技力向上のサポートだけでなく、老若男女、人種、障害などを超えた健康の管理、向上に軸足を置いた価値の創造に取り組んでいく。これまで中央に据えてきたパフォーマンスアスリートのサポートから、〝ライフタイム・アスリーツ・イン・オール・オブ・アス(私たちだれもが一生涯運動・スポーツにかかわり、心と身体が健康で居続けられる世界の実現へ)〟の姿勢をスポーツメーカーとして色濃く打ち出していく。これまでは〝プロダクト(生産)〟を中心にビジネスの展開を進めてきたが、今後の10年に向けては〝ファシリティ(施設)〟と〝コミュニティ(共同)〟〝アナリシス(分析)〟と〝ダイアグノシス(自己診断)〟といった3つの事業ドメインでビジネスを拡大。ファシリティとコミュニティについては、スポーツを行う場などといったサービスの中のハードを意味し、アナリシスとダイアグノシスは、データを活用した分析・診断に加え、それを基に提供するプログラムを含んだサービスの中のソフトの提供を意味する。同社では、これらに関してさまざまな切り口によるビジョンを想定(詳細記事6面)しており、説明会の会場では、2030年における独創的なスポーツやギアとしての在り方の一端を示した。

同社では、健康・快適という観点からスポーツ領域にとどまらない新しい価値を提案。同社によって蓄積された知識や技術・ノウハウがスポーツの場面だけでなく、仕事などといった日常生活において、疲労などを感知して改善をサポートするなど、新たなプロダクトやサービスの提供も視野に入れている。

25年、30年にはプロダクトの開発・展開をコアに定めながらファシリティとコミュニティ、アナリシスとダイアグノシスの拡張を図り、30年にはこの3つのドメインを事業の大きな柱として成長させ、消費者やユーザーとの接点を広げ、売り上げの拡大にも力を注いでいく。

重要な共通のテーマとしてはツールとしての〝デジタル〟、個人に合ったプロダクト・サービスの開発を行う〝パーソナル〟に加えて、世界共通の課題として今後、人々がスポーツとのかかわりを持ちながら健康で居続けるために必要な社会環境課題解決への取り組みとして〝サスティナブル〟を重要な使命であると企業理念の一部としてとどめている。

事業説明会の後半には、アシックススポーツ工学研究所の原野健一所長も加わって質疑応答も行われた。次世代の全く新しい手法によるビジネスモデルの市場規模の想定など、経営陣の回答の合間に、開発面など、専門分野の質問に対応していた。