2020年11月5日

JSR
2021年2月期第2四半期決算

自動車の減産が響く
ライフサイエンス事業増収

JSR(エリック・ジョンソンCEO)は10月27日、「2021年3月期第2四半期決算説明会」をオンライン形式で実施した。当日の出席者は、同社の宮崎秀樹取締役常務執行役員で、今年の4~9月にかけての同社を取り巻く事業環境とそれに伴う実績、顧客状況の今後の見通しなどを説明した。

それによると売上収益は前年同期比19・1%減の1940億4700万円、コア営業利益は同81・2%減の37億6200万円、四半期損失は6億7600万円(前年同期は134億7200万円の利益)となった。同社では、前第4四半期連結会計期間より、リチウムイオンキャパシタ事業を非継続事業に分類。収益および損益はリチウムイオンキャパシタ事業を除く継続事業のみの金額が表されている。また、今年4月1日にJMエナジーに対する支配を喪失し、JMエナジーは同社の持分法適用関連会社となった。当期におけるJMエナジーの持分法による損益は、セグメントにおける「その他」の区分に含められている。

同社グループの主要な需要業界の動向としては、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞にかかわらず、半導体市場は、社会に必要不可欠な基盤として、デジタル化の進展によるインフラやデバイス需要の拡大により堅調に推移。フラットパネルディスプレイ市場は、中国市場を中心にこの第2四半期において回復したものの、パネル生産が同第2四半期累計期間で減少した。自動車生産については、新型コロナウイルス感染拡大の影響により世界規模での減産が拡大、前年を大きく下回った。自動車タイヤ生産も自動車生産の減少の影響などを大きく受けた。

セグメント別では、デジタルソリューション事業部門の売上収益は同0・1%増の737億7400万円、コア営業利益は同0・7%減の169億2700万円。ディスプレイ材料とエッジコンピューティング材料の販売数量が減少したものの、半導体材料が販売数量を伸ばしたことにより売上収益はわずかに伸長。コア営業利益はディスプレイ材料とエッジコンピューティング材料の販売数量の減少により、前年同期の水準を若干下回った。

ライフサイエンス事業部門の売上収益は同4・3%増の261億5000万円、コア営業利益は同27・5%減の16億1500万円。ライフサイエンス事業については、医薬品の開発支援を行うCRO(クラウンバイオサイエンス)事業などが販売拡大をけん引、売上収益は前年同期を上回った。コア営業利益は売上収益の増加に伴う利益の上増しがあったが、前年同期に発生したグループ企業である開発・製造受託企業(CDMO)による一時的な利益の影響によって、前年同期を下回った。

エラストマー事業部門の売上収益は同35・6%減の585億7300万円、コア営業利益は127億1800万円の損失(前年同期は2億7800万円の損失)。エラストマー事業については、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって需要が低迷。「国内タイヤ生産量が上半期だけで30%も減少しており、ブタジエンなどの販売数量は前年同期を大幅に下落した」(同社)。売上収益も前年同期を大幅に下回った。コア営業利益は、販売数量の大幅な落ち込みにより前年同期を大きく下回ったが「市況を見渡すと下半期に向けて回復基調をたどっている」(同)。

合成樹脂事業部門の売上収益は同33・4%減の325億9200万円、コア営業利益は同82・1%減の6億5000万円。合成樹脂事業については、自動車業界の悪化など、新型コロナウイルス感染拡大の影響による需要低迷により販売数量は前年同期を大幅に下回った。売上収益、コア営業利益ともに販売数量の大幅な伸び悩みにさらされているが「スチレンなどといった原料については、足元から改善傾向がうかがえる」(同)。

通期については、今年9月14日に公表した業績予想を修正。売上収益を4200億円(前回予想4230億円)、コア営業利益195億円(同230億円)、当期利益95億円(同125億円)と見込んだ。エラストマー事業および合成樹脂事業については、新型コロナウイルス感染拡大影響による販売数量の減少が当初予想以上で推移。デジタルソリューション事業は主に半導体分野の好調によって予想を上回る伸びを示している。

今後の事業展開におけるマイルストーンとして、来年2月に発表する予定の中期経営計画で内容を明確にする。昨年末には構造改革を盛り込んでいくと明言したが、次期第1四半期を前に、一段と抜本的な構造改革を打ち出すことで、新型コロナウイルス感染症拡大によって失った失地回復を図る」(同)。