2020年11月15日

日本触媒
2021年3月期第2四半期決算

10月の予想値上回る
リチウム電池材料は増収

日本触媒(五嶋祐治朗社長)は11月6日、電話会議を通じて決算発表記者会見を開催した。出席者は五嶋社長ならびに小林髙史常務執行役員財務本部長で、今期の第2四半期決算概要のほか、三洋化成工業との経営統合の中止の案件など、参加者から大きな関心を集めた。

それによると当期の売上収益は前年同期比18・7%減の1246億6800万円、営業利益は11億8800万円の損失(前年同期は66億3800万円の利益)、税引前利益は7200万円の損失(同86億7300万円の利益)、四半期利益は11億8300万円の損失(同57億3100万円の利益)となった。新型コロナウイルス感染症や米中貿易摩擦の影響による世界景気の減速などの影響を受けたほか、原料価格や製品海外市況の下落によって販売価格が低下、販売数量の減少もあって売り上げ面の低迷を呼び込んだ。利益面については原料価格の下落に伴ってスプレッドは拡大したものの生産・販売数量の減少や、在庫評価差額などの加工費が増加、同社の連結子会社であるニッポンショクバイ・ヨーロッパ(NSE)の固定資産に対する減損損失の計上などの要因からリーマンショック以来の苦境に立たされた。ただし、先月8日に公表した連結決算の予想値に対しては売上収益、営業利益、税引前利益、四半期利益とも全項目で上回っている。

会見の冒頭、五嶋社長は「通期では若干の上向きがあると思うが、三洋化成工業との統合中止という状況下、当社単独によってまずは足元の情勢を立て直し、業績の回復を図ることで持続的成長を目指す」と力強く述べた。

セグメント別では、基礎化学品事業の売上収益は前年同期比21・3%減の490億6500万円、営業利益は生産・販売数量が減少したことや、在庫評価差額などの加工費が増加したことなどにより、同34億5900万円減の3億9500万円の損失。アクリル酸およびアクリル酸エステルは、新型コロナウイルス感染症や米中貿易摩擦による世界景気の減速などを受け、需要低迷による製品海外市況の下落、プロピレンなどの原料価格の下落に伴って販売価格が低下したことに加え、販売数量減が売り上げに大きく響いた。酸化エチレン、セカンダリーアルコールエトキシレートは、原料価格の下落により販売価格が低下し、販売数量が減少した。エチレングリコールは販売数量は増加したものの、製品の海外市況下落などによって販売価格が低下した。

機能性化学品事業の売上収益は同16・4%減の714億8900万円、営業損益は同33億1100万円減の10億100万円。収益面では、原料価格の下落によりスプレッドは拡大したものの、生産・販売数量が減少、NSEの固定資産に対する減損損失を計上したことや在庫評価差額などの加工費がかさんだ。高吸水性樹脂は、プロピレンなどの原料価格や製品海外市況の下落に伴い販売価格が低下、販売数量が減少したこともあって伸び悩んだ。特殊エステルは、新型コロナウイルス感染症などによる世界景気の減速により需要が低迷、販売数量の減少や、製品海外市況の下落などに伴い、販売価格が低下したことによって落ち込んだ。電子情報材料、コンクリート混和剤用ポリマー、塗料用樹脂、樹脂改質剤、粘着加工品およびエチレンイミン誘導品は、需要低迷などで販売数量が減少、無水マレイン酸は原料価格の下落などにより販売価格が低下、需要低迷などによって販売数量が減少した。洗剤原料などの水溶性ポリマーは販売数量は増加したものの、販売価格が低下、ヨウ素化合物は販売数量が増加したことから増収となった。

環境・触媒事業の売上収益は同23・6%減の41億1400万円、営業損益は6億2100万円減の1億2300万円。生産・販売数量が減少したことや、在庫評価差額などの加工費が増加したことなどが影響した。プロセス触媒、排ガス処理触媒および脱硝触媒は、販売数量が減少。燃料電池材料については、販売価格が低下したことで伸び悩んだ。リチウム電池材料および湿式酸化触媒は、拡販に努めた結果として販売数量を増加させたことなどにより増収となった。

通期については、直近公表からの業績予想に変更はなく、売上収益2600億円、営業利益10億円、税引前利益35億円、当期利益10億円を見込んでいる。なお、先月21日に公表された三洋化成工業との共同株式移転による経営統合の中止ならびに経営統合に関する最終契約の合意解約による影響が当期の業績に与える影響は精査中で、業績予想値には織り込まれていない。

同社では後半中期経営計画として「新生日本触媒2020NEXT」を進行中。〝NEXT〟に込めた思いとして、20年には次の10年の確実な成長を見通せる状態を目指す計画であり、17~20年を実行期間として策定されたが、現状においては「収益性の早期立て直しが火急の課題であり、コロナ禍の状況を見ながら、2年以内に確実に業績を立て直す」(同)。現在進めている計画内容(詳報次号)を推し進め、業績を立て直した後、22年度からスタートさせる新経営計画を策定する。