2020年12月5日

デサント
日本事業収益改善へ向け構造改革

DTC事業の規模拡大等
新人事制度へと転換

デサント(小関秀一社長)は、11月25日に開催した取締役会において、同社グループの事業の柱の一つである日本市場における安定した収益力強化に向けた構造改革の実施に向けての決議を行った。

昨年8月に公表した中期経営計画「DーSummit2021」の重点戦略である〝アジアへの集中〟に基づき、20年3月期には、欧米の3つの子会社を事業休止・全株式譲渡を行うなど、エリアやブランドの取捨選択を終えたことで、日本・韓国・中国という3つの市場へと集中できる体制を整備。21年3月期には、中国において「デサント」ブランド事業を一段と拡大し、同社収益を向上させるねらいから、合弁会社、デサント・チャイナ・ホールディングに対する持分比率を引き上げる再編を実施する。日本国内に向けては、〝日本事業の収益改善〟の達成に向け、「自主管理店舗の売り上げ拡大による利益率向上」「Eコマース売上構成比のさらなる拡大」「CFO傘下にタスクフォースを組成し、戦略的な経費見直しによるコスト改善」の戦略を柱とする取り組みを継続的に推進。来年度以降、日本市場でも安定した収益を上げられるよう、新たな構造改革を断行していく。

構造改革の概要については、3つの戦略を遂行する目的からDTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー=ブランドから消費者への直接販売)事業の強化を主とする商品企画および流通改革、収益性向上を図る経営指標の明確化、基幹システムの刷新、希望退職の募集を実践する。DTC事業の強化を主とする商品企画および流通改革に向けては現在、人的資源の集中投下とECサイトのプラットフォーム刷新を進めており、実店舗・ECサイト間の在庫連携、オウンドメディア「ULLRMAG.」の展開などデジタルマーケティングによる顧客アプローチを通して集客を強化。オムニチャネル化を目指し、DTC事業の規模拡大を推進していく。ハウスブランドであるデサントについては、R&DセンターであるDISCを最大限に活用し、消費者の行動変化による新たなニーズなど顧客トレンドを一段と意識した商品企画を実行。新規業態、アウトレット店舗の拡大を含めた直営店の出店を進めていく。

収益性向上を図る経営指標の明確化に向けては、19年度3月期以前の売り上げ拡大とそれに伴う人員増の経営戦略を是正し、収益力向上を目指す経営への転換に向けての明確化を図る。製造する商品の総量、品番数を削減し、適正価格での販売量を増大、無用な処分販売を停止することで粗利(率)、利益(率)の向上を図る。〝稼ぐ力〟を図るために営業利益(率)を重視した全社共通の指標を明確に設定する。費用対効果の低い経費の削減を徹底し、複数年度にわたる契約関係を極力抑えることで経費の固定費化を回避する。

サプライチェーン全体の最適化、生産、調達、物流などの業務効率改善を行い、これらの実効性を高めるために23年の稼働を目指してERP(エンタープライズ・リソーセス・プラニング〓企業資源計画)投資を予定。基幹システムの刷新を図ることで、社内データベースの一元化を推進し、全社の業務プロセスの無駄の排除と標準化を進めることによって、経営の判断スピードと精度を向上させる。

これらの経営戦略に基づき、売り上げ規模に見合った適正人員による業務運営へと移行、正社員および契約社員を対象に110人規模の希望退職者の募集を計画。募集対象は契約社員と正社員だが、正社員については来年3月31日の時点で、40歳以上の年齢制限をかける。人事面ではほかに、〝ペイ・フォー・パフォーマンス(業績の達成度に応じて給与額を決定する方法)〟の考えに基づく新人事制度へと転換。この思想の徹底により社員の挑戦意欲をかき立て、成果に応じたメリハリある処遇を図る。従業員の賞与についても、全社業績に連動して総原資が変動する方式を採用。各自の業績貢献への意識向上を図ることなどを目的とする人事制度改定を実施する。DTC事業やデジタルマーケティング強化といった構造転換に伴い、社員に求められる知識や経験が変化していることから、こうした変化に対応できる人材の育成強化に努める。

本部人員のテレワーク比率が高まっている状況に加え、希望退職実施による人員減少なども考慮した上で、事務所の面積縮小や資産の処分、政策保有株式の売却なども検討していく。その一環として、同社子会社のベンゼネラルの卸売事業をゼット社に事業譲渡する。

希望退職に関する費用として約10億円を計上予定だが、現時点では希望退職者の応募者数等が未確定。今回の構造改革実施に伴う一時費用は特別損失として21年3月期に計上予定ながら、資産などの売却による特別利益も見込まれているため、今年7月公表の通期連結業績予想からの変更はないとしている。