広島化成
インタビュー
新たな創造 たゆまぬ努力
今期基本的な取り組みさらに徹底
【昨年を振り返って】
2019年12月期の業績については、売上高は前年比3%減の140億円を見込んでいる。当社が事業を展開するシューズ、工業用品、化成品の3事業部では、各事業部とも主要な市場の減速によって販売が伸び悩んだ。
事業部ごとの状況としては、シューズ事業は消費増税前の駆け込み需要が表れた一方で、10月以降当初の想定を上回る引き上げ後の反動減が生じた。また、台風による災害や天候不順で消費マインドが冷え込み、店頭での販売が振るわなかったことでリピート受注につながらなかった。当社では、これまで秋冬シーズンに強い商品構成であったが、昨年は暖冬の影響によって冬ものの動きが鈍く、年度終盤では降雪と気温の低下でようやく売りやすい環境が整ったものの、北海道をはじめ寒冷地における地域での販売は、ばん回するまでには至らなかった。
工業用品事業では、顧客自動車メーカーの生産前年割れのインパクトが大きく、当社の自動車部品の販売も落ち込んだ。東京五輪需要で空港、関連施設向けのゴム床材は伸びたものの、事業部全体をけん引できるほどの勢いは見られなかった。
そのほか化成品事業では塩ビシートが災害復旧関連で量が出たものの、建築市場全体が横ばい状況にある中、建材の需要には一服感が漂っており、化成品全体では前年実績を若干下回った。昨年は、売り上げ構成比が高い主力需要分野の低迷に伴い業績が頭打ちとなったが、今期は基本的な取り組みをさらに徹底しながら、巻き返しに向けた布石を打っていくことで増収増益を果たしたい。
【工業用品事業の新たな取り組みについて】
昨年6月、フランスのハッチンソン社と自動車用ボディーシーリング材などの開発・設計、製造・販売に関する契約を締結した。今後、合弁会社HHSJ(ヒロシマカセイ・ハッチンソン・ジャパン、東京都港区)を立ち上げ、EV化などの変革が進む自動車産業において、次世代自動車に対応できる部材の開発と供給を加速させていく。生産は当社が手掛け、昨年6月に操業した笠岡工場(HKK、岡山県笠岡市)で主に製造した製品を展開する。今後の成長に向けては、既存取引先メーカーへの供給だけではなく、新規ユーザーへの提案を強化し、2025年には現状の工業用品の売上高40億円を60億円まで拡大を目指す。主な製品の生産拠点となる笠岡工場では、自動車用シール材に特化したインドネシア工場(HKI、広島化成インドネシア)から9名のスタッフを迎え入れ、現在は30人体制で本格稼働に入っている。顧客の要求性能を満たすウェザーストリップのみでなく、さまざまなカテゴリーに及ぶボディーシーリング材の開発・提案を共同で行うことで、自動車部品事業の新たな可能性を切り開いていく。
【シューズ事業については】
新たな売り場づくりとしては、スポーツ用品大手やドラッグストアといった異業種での取り組みを進めている。ドラッグストアでは、近年の〝健康志向〟の高まりから相乗効果が生まれており、宮崎工場で生産している〝健康快適シューズ〟「エルダー」などの販売が徐々に増えている。大手EC事業者を通じたネット販売は開始してから約3年になるが、昨年は前年比で50%増の売り上げを達成しており、今年はさらに昨年の3倍増で販売計画を組んでいる。既存取引先の販売が伸び悩む中、ネット販売は依然として好調に推移しており、昨年11月に開催された大規模なセールでは「マックスランライト」や「アーバントラディション」など、ダンロップモータースポーツの売れ筋商品が好調で品薄となるアイテムもあった。今年はネット販売用の在庫も十分に持ちながら、需要増に対応していきたい。ほかにもソックスとシューズのメリットを併せ持った「ニッティー」や、広島東洋カープのライセンス商品など新たな企画も注目を浴びており、球場のグッズショップでもブーツ商品が取り扱われる予定になっている。今後の商品開発の方向性としては、現状ではシニア層に向けた商材が多いものの、スニーカー製品を中心に若返りを図ったモデルを立ち上げていきたい。昨年は防水機能に加えて透湿性を付与した付加価値の高い新製品を投入しており、2021年春夏ものに向けてはバリエーションを拡大しながら、さらに若い世代への訴求にチャレンジしていく。
【経営、管理面での取り組みは】
昨年11月に自己株式を売却して3億円を調達し、財務体制の強化を図った。今年は基幹システムの更新を計画しており、経理システムの刷新のほかシューズの在庫管理、工業用品の生産管理で順次切り替えを進め、さらに業務の効率化と経営意思決定のスピードアップを図っていく。
【働き方改革について】
職場環境の見直しと改善は10年ほど前から取り組んでおり、〝広島県働き方改革実践企業〟の認定のほか、次世代育成支援対策推進法に基づく「くるみん認定」を福山市内では5社目の認定企業として取得した。当社では女性社員の育児休業取得率がもともと高く、復職後は時短勤務の適用で仕事と育児の両立を支援している。近年では男性社員の育児休業取得でも実績があり、毎週末、給料日、賞与の支給日を〝ノー残業デー〟に定めたほか、結婚記念日と家族の誕生日で取得できる〝メモリアル休暇〟などを制定して実行している。このような取り組みを継続しながら、従業員がやりがいを持ち、長く働きたいと思う企業を目指している。
【今年の抱負と展望を】
今期のスローガンは「新たな創造 たゆまぬ努力」と打ち出した。すべての事業分野で新しい商材を開発し、市場で育て上げていくことに改めて挑戦したい。シューズ製品では、商品企画チームの若いスタッフが〝自分達が履きたくなる靴〟をテーマに開発を進めている。従来の方向性にとらわれていては、次のステージに進むことはできない。時代の変化に即した製品でお客様のニーズに的確にこたえ、新たな第一歩を踏み出す年にしていきたい。