ブリヂストン
新春トップインタビュー
成長事業をより活性化
“強いブリヂストン”へと進化
【昨年を振り返って】
2020年は1931年の創業、1988年のファイアストン買収を契機とする第2の創業、これに続く〝第3の創業〟として新たなチャプターに向けた重要な年であった。しかしながら、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、経済にも大きな影響を及ぼし、当社グループにとっても過去に経験したことのない厳しい一年となった。このような状況下、当社グループでは各地でさまざまな社会貢献、地域貢献の取り組みを進めてきた。
国内では簡易マスクを生産して地域自治体へ無償で提供し、米州では3Dプリンターを用いて製作したフェイスシールドを病院・介護施設に寄贈した。また、スペインでは緊急車両の24時間無料タイヤメンテナンスサービスを提供するなど、各現場で従業員が自発的に取り組んでくれたことをとても誇りに思っている。その根源にあるものは創業者が掲げて以来、脈々と受け継がれてきた「最高の品質で社会に貢献する」という企業としての使命だ。昨年は当社が厳しい環境でこそ力を発揮する企業であることや、それを支える現場力、そして創業者の理念がグループ一人ひとりのDNAにしっかりと刻み込まれていることを改めて確認することができた。
【中長期事業戦略の骨子について】
2050年においても、社会価値・顧客価値を持続的に提供している〝サステナブルなソリューションカンパニー〟を目指し、新たなスタートを切った。サステナビリティを経営の中核に据え、タイヤ・ゴム事業の強みを生かしたソリューション事業への進化を果たすため、社会価値・顧客価値の両立と競争優位の獲得を図る成長戦略を推進していく。そのベースになるのは独自のビジネスモデルの構築で、コアであるタイヤ・ゴム事業をさらに強化し、その強みを生かしてソリューション事業を拡大、そして各事業の価値をスパイラルアップし続けることが描く成長戦略の姿だ。
また、戦略実行に向けてはグローバルで中期ビジネスシナリオを設定している。新型コロナの影響見通しを織り込んだ危機管理、コア事業における稼ぐ力の再構築、ソリューション事業拡大に向けた戦略的成長投資などがその3つのステージとなり、戦略フォーカスを明確にしながら取り組みを加速させていく。一方、戦略の実行を支える体制の整備も進める。財務戦略基盤の強化をはじめ、最も重要な人財リソースについては、コア事業においては体質変革、成長事業では新たな体質を創造していく。これによって2023年には筋肉質で環境変化に対応できる〝強いブリヂストン〟への進化を遂げる。
【サステナビリティビジネス構想について】
現在、経営を取り巻く環境が大きく変化しており、「最高の品質で社会に貢献」という当社の信念はかつてないほど重要性を増している。2050年にも社会価値・顧客価値を持続的に提供する会社であり続けるため、サステナビリティを中核に据えたビジネスモデル構築の検討を開始した。当社はタイヤを製造販売するタイヤ・ゴム事業から、お客様が使用する段階においても、価値を提供するソリューション事業で資源生産性の向上やCO2の削減に貢献を果たしてきた。
今後はさらにソリューション事業のビジネスモデル構築と、リサイクルの事業化を推進する。事業全体で資源循環、CO2削減、カーボンニュートラルを実現し、資源循環の輪を完結させる。事業においても、それぞれの事業が循環することを目指す。長期的には大きなチャレンジとなるが、M&Aも視野に入れながら、R&D領域では事業機会の探索を既にスタートさせている。〝共創〟とイノベーションで構想を実現し、SDGsの達成とサステナブルな社会に貢献を果たしていく。
【サステナビリティビジネス構想の中核であるリトレッドサービスについて】
当社では摩耗したトレッド部を張り替え、再び使用可能なタイヤを顧客にお届けするリトレッドサービスをグローバルで展開している。耐久性・偏摩耗防止に優れた製品と適切なメンテナンスを提供し、独自の技術によって一本のタイヤを複数回リトレッドすることを可能にしている。原材料使用量を新品タイヤの3分の1以下に抑えることができるため、資源生産性の向上やCO2排出量の削減にも貢献できる。タイヤのライフタイムを最大限に活用し、安全性と環境性、経済性と生産性といった社会価値と顧客価値を両立する、当社のビジネスのコアソリューションに位置付けている。
【直近の需要環境について】
昨春から不透明な状況が続いていたが、7月辺りから中国や米国を中心に回復基調に乗り、その後も10月までは月を追うごとに上向いている。リプレイス需要が当初は先行していたが、その後、自動車メーカーとトラックメーカーの稼働率も上がってきた。10―11月では想定していた以上の回復を見せていたが、年度末において米国では若干スローダウンした。今年は上期までは大きな変化はなく、この状況が継続するのではないかと見ている。
【国内の状況、今後の展開について】
日本は、残念ながら北米に比べて復調のスピードがやや遅い。新車の生産は下期から順調に回復しているものの、リプレイス市場がまだ回復しきれていないところに、新型コロナウイルス感染症の第3波が押し寄せたことが逆風になっている。今年の展開としては、楽観的な予測に基づかず、足元をしっかりと固めながら成長事業の活動をより活発化させていく。コア事業で稼ぎ、成長事業に投資していくという流れを徹底していきたい。国内市場は当社グループにとって非常に大切な市場であり、人的なリソースをしっかりと投入して確実な復調と再成長を目指していく。