アキレス
新春トップインタビュー
”真のニーズ”を理解
お客様の幸せにつながる商品を
【昨年を振り返って】
新型コロナウイルス感染拡大の収束の兆しは見えず、当社が展開するシューズ、プラスチック、産業資材の3つの事業分野すべてにおいて苦戦が続いた一年だった。2021年3月期第2四半期の業績については、売上高は前年同期比14・6%減の341億200万円となり、営業利益、経常利益とも減益となったが、第1四半期で海外子会社を売却したことによる特別利益を計上したため、純利益は前年同期より大きく増加した。事業部ごとの状況を見ると、シューズ事業は、緊急事態宣言の発出を受けて首都圏の百貨店やショッピングモールが軒並み休店となり、学校も長期休校が続いたことから大人向けの商材や子ども靴が4、5月で大きく落ち込んだ。一方、プラスチック事業の車輌向け内装資材は顧客日系カーメーカーの苦戦が続き、国内、中国、北米とすべての市場で前年同期の実績を下回った。中国では6月頃からいち早く需要が回復に向かっており、北米も下期に入ってからようやく持ち直しつつあるものの、全体では、まだ前年の水準まで販売量が回復していない。コロナ禍によってシューズと車輌内装資材は大きな打撃を受けたが、フィルム関係では新型コロナウイルスの飛沫感染対策用途で特需があり、感染症対策用のエアーテントも大きく伸びた。そのほか工業資材ではスマートフォンの半導体関連や医療機器のハウジング用途で使われる部材なども好調に推移した。
【通期の見通しについて】
今期通期の業績予想としては売上高は前期比9%減の730億円、営業利益は同28・2%減の11億5000万円、経常利益は同26・8%減の15億円、純利益は同47・7%増の28億円を見込んでいる。自動車産業の回復による車輌用内装資材の復調や、テント関連をはじめコロナ対策関連製品の需要継続を折り込んでおり、今年は全体的に稼働率がさらに上がってくると想定している。
【シューズ事業の取り組みについて】
主力のジュニアスポーツシューズ「瞬足」は、小学校低学年までは根強い人気を誇っているが、中~高学年になるにつれブランド離れしていく傾向がうかがえる。当社としては、さらなる衝撃吸収性を追求した「瞬足ニューラン」や、反発弾性を強化した新素材を搭載した「ハイパージャンパー」といった新製品を投入して需要の喚起を図ったが、まだ大きな実績には結びついていない。ただ、ハイパージャンパーは大人サイズにも対応しており、〝縄跳び7重跳びジャンパー〟のもりぞー(森口明利)氏が人類初の8重跳びに挑戦したときにも使用している。残念ながら、8重跳びは達成できなかったが、ジャンプ力を高めることについては実感されており、ぜひ再度挑戦してこの靴の効果を実証してほしいと願っている。
昨年はコロナ禍による〝ステイホーム〟を背景に、テレビショッピングも販売チャネルとして活用した。昨年4~5月、11~12月に「アキレス・ソルボ」と「オールデイウォーク」を取り上げてもらったが、予想を上回る反響があり、12月の売り上げとしてはアキレス・ソルボの過去最高の販売足数を達成した。大手ECサイトを通した販売も、昨年は前年比で140%と大きく伸びた。テレビ通販やECビジネスは、シューズ製品との相性の良さを改めて感じている。
【商品開発の姿勢について】
婦人靴に関しては、当社の社員自身が履きたくなるような靴をつくるべきだと考えている。アキレス・ソルボは、これまでデザイン性よりも機能と履きやすさにこだわる側面もあったので、社内の率直な意見を取り込んで今後の開発に生かしていきたい。〝歩く〟ことに焦点を当てたパンプスであるオールデイウォークもデザイン性をより高めた新製品を昨年投入している。
【成長に期待をかけている製品は】
半導体関連では、ウエハーの緩衝材、搬送用ケースなど、搬送用システムをトータルで手掛けている。今後、5G、6Gと次世代通信システムがさらに進化し、電子部品の点数も増えていくため、中国、北米、アジアまでグローバルに展開し、そのおう盛な需要にこたえていきたい。
【新たな取り組みについて】
ウレタン販売部が手掛ける「7倍空気を通しやすいマスク」を、昨年11月の販売に先駆けてクラウドファンディング「Makuake」に掲出した。国内最大級の同サイトのPR力を借りることで、ネットによる拡散や若い方にも気軽に応募してもらえることを目的とした。効果としては上々で、呼吸がしやすく、蒸れにくいなどの特徴が反響を得てサポーターが拡大しつつある。
【今年の展望を】
今般のコロナ禍によって、当社の企業理念である「社会との共生」=「顧客起点」の意義を今一度見直すことができた。当社の素材や製品を使って頂くことが、日頃の課題の解決の一助となり、長く人生を楽しめ、お客様一人ひとりの幸せにつながっていくような商品を提供し続けていくことが当社の使命だと改めて感じている。そのような喜びと感動を覚えて頂くには、当社からの一方的な提案ではなく、お客様の〝真のニーズ〟を理解し、具現化させていくしかない。これからもそういう製品を〝創造〟し続けて、お客様と社会に貢献していきたい。