横浜ゴム
新春トップインタビュー
多くの施策の実行加速
全社挙げ一つひとつ丁寧に対応
【2020年を振り返って】
本年は国内外において、新型コロナウイルス感染症の流行により、世界経済が大きな打撃を被り、自動車産業を中心に、特に第2四半期は急激な落ち込みとなった。夏には新型コロナウイルス感染症による勢いも下火となったことから景気回復に向けた期待もあったが、早い時期に新型コロナウイルス感染症を収束させた中国を除き、この冬からの第3波による再拡大もあって、経済の先行きは予断を許さない状況にあると考えている。こうした厳しい経済環境の影響により、第3四半期までの当社のタイヤ事業は前年に対し、売上収益、事業利益とも前年同期を下回った。新車用タイヤについては国内では新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、大きく落ち込んだ第2四半期に需要が8月以降持ち直しつつあるものの、ばん回までには至っておらず、売上収益、事業利益とも前年同期の実績に届かなかった。市販用タイヤについても、高付加価値商品のさらなる拡販に努めたものの、昨年来の暖冬の影響により、年初の冬用タイヤの販売が伸び悩んだ。加えて新型コロナウイルス感染症の影響に伴う消費活動の停滞による需要の減少に見舞われたことで、市販用タイヤ全体としては売上収益、事業利益とも振るわなかった。
MB事業についても、新型コロナウイルス感染症の影響により、第3四半期までは全体として売上収益、事業利益とも前年同期を下回った。ホース配管事業は、建機・自動車向けの需要が戻らず、売上収益、事業利益とも前年を割り込み、工業資材事業では、海洋商品は増収増益を達成したものの、コンベヤベルトおよび土木資材は減収減益となった。ハマタイト事業は、国内工事の中断と自動車生産減の影響を受けたことで売上収益、事業利益とも前年を下回ったものの、航空部品事業では官需において減収増益となった。しかしながら民間航空機需要が消失した背景から、航空部品事業全体では減収減益となった。
ATGについては、市販向けはある程度の回復基調をたどっているものの、農機メーカー向けの需要減とインド政府指示による操業停止が響いたことで売上収益、事業利益とも前年同期の実績に届かなかった。
【昨年度の主な取り組みについて】
政府による4月7日の緊急事態宣言の発出に先駆け、当社としては新型コロナウイルス感染症の影響をリーマンショック以上の事態ととらえ、3月末の株主総会の直後に、速やかに社内に向けて緊急事態宣言を発令し、その後すぐに緊急事態プロジェクトを立ち上げた。緊急事態プロジェクトでは、過去の前例にとらわれることなく固定費の見直し、販管費の削減、設備投資の凍結、機動的な資金調達を実施し、財務の安全性を確保した。特に、このタイミングでしか行うことのできない物流の見直しによる国内営業拠点の大胆な統廃合、遊休土地建物、ゴルフ会員権の売却、事業構造改革、チェルシーなどの契約の見直し、OHT事業統合など、多くの施策の実行を加速させた。これらの概要については、来月予定している「新中期経営計画」の発表の場で「グランドデザイン2020(GD2020)」の総括として説明する。通期の連結業績予想については、昨年11月に修正値を公表したが、それを達成させるには第2四半期の大きな落ち込みに対する急激な需要の戻りに、いかに柔軟に生産と販売面で対応できるかにかかっていると考えている。この冬は、暖冬であった昨年に比べて降雪が見込まれるものの、新型コロナウイルスの第3波、コンテナの不足、加えてアメリカのタイ製品に対する増税など、問題が山積みとなっている。しかしながら、公表値達成に向けて、全社を挙げて一つひとつ丁寧に対応している。
【2021年の取り組みに向けては】
昨年は中期経営計画GD2020の最終年であったが、新型コロナウイルス感染症の対応に追われ、すべての打ち手を予定通りに行うことができなかった。今後の経済回復についても、2019年のレベルに戻るのは、2022年、あるいは2023年とも言われている。CASEといった大きな変化の波が押し寄せようとしており、当社ではそれはそれで与件としてとらえ、当初描いた目標達成に向け、心機一転して新中期経営計画を鋭意策定している。