2021年1月10日

住友理工
新春トップインタビュー

決して焦ることなく前進
開発スピード上げ着実な成長を

【昨年を振り返って】
今期(2021年3月期)の第1四半期においては、新型コロナウイルスの影響によって主力の自動車分野は大きな需要減少に見舞われた。第2四半期からは中国にけん引されて自動車生産台数が回復に向かい、産業用ホースも期初からの好調を継続したものの、第1四半期における大幅な落ち込みをカバーすることは難しく、残念ながら上期トータルでは減収赤字で折り返した。直近の状況としては、下期がスタートしてからも自動車の回復傾向は継続しており、むしろ当初の想定を上回る勢いで生産台数が戻りつつある。また、産業用ホースについても、中国のおう盛な需要に支えられて前年比プラスを維持しており、良い状況で推移している。社内のムードも、上期の厳しい結果に直面したことがバネになり、良い意味での緊張感があって決して悪くない。国内外とも、まだ予断を許さない環境が続いていることは否めないが、引き続き需要の取り込みと収益性の向上に努めていきたい。

【コロナ禍における取り組みについて】
全国的な感染拡大を契機に、製造サイドや営業職以外の従業員が活用できるテレワークと時差通勤を導入しており、今後も通常の勤務形態として継続していく。拠点に出勤しなくても仕事が可能な場合は週に1~2日、在宅勤務で仕事に取り組む社員が多く、仕事ができる環境であれば〝どこでもオフィス〟という気概を持って、バランスを取りながら頑張ってもらいたい。一方、生産面においては、緊急事態宣言下では稼働を調整して必要な量の製造にとどめていた。ただ、秋ごろには需要が戻ってくると想定していたので、稼働を休止している間にも日ごろは実施できなかった改善活動に取り組み、その準備が奏功して下期の生産効率化に一段と効果が表れている。

【一層の効率化に向けた海外生産拠点の再編について】
鉄道車両用防振ゴムなどを製造販売するフランスの子会社2社の株式譲渡が完了したほか、アルゼンチンの自動車用ホース生産拠点の解散・清算を決定しており、タイでは2つの工場を一つに統合した。一方、ベトナムでは、現地2カ所目となる自動車用ホースの生産拠点を新設する。自動車生産台数が順調に回復しつつある現在、おう盛な需要に迅速にこたえていくためにも、代替生産が可能な拠点については集約を進め、伸ばしていくべきところへ経営資源を集中させていく。

【社内コミュニケーションの推進について】
昨年6月の社長就任以降、「社長ブログ」を開設し、日々の仕事にかかわるさまざまな思いを書いて当社のホームページ上でも公開している。ほかにも、あくまでプライベートな付き合いで若い社員との懇親を幾度となく重ねてきた。若い世代は屈託がなく、率直な意見には大変インスパイアされている。そういった貴重な意見交換の場は、感染対策に留意した上で今後も設けていきたい。またブログの更新をはじめ、会社から発信される情報をより簡単にキャッチできるスマートフォン対応の通知サービス「RIKO2(リコツー)」を開始した。アプリをインストールするだけでスマホから利用でき、リアルタイムかつ手軽な点が好評なようだ。

【注力する新製品は】
熱マネジメント用の新商材として、塗布型の薄膜高断熱材「ファインシュライト」を昨夏より市場投入した。もともとは自動車向けに開発された製品だが、自動車用途以外でも大きな反響があり、高度な断熱性能を追求している一般産業向けでも採用が広がりつつある。一例を挙げれば、フードデリバリー業界での活用がある。コロナ禍で需要が急拡大する宅配ビジネスにおいて、料理の保温用途で貢献している。受注してから製品化まで数年の時間を要する自動車用品とは異なり、一般産業向けは性能が認められると早期の製品化が可能になる。今後も自動車用途は当然ながら、住宅・家電関係など、熱対策が求められるさまざまな分野において用途展開に取り組んでいきたい。

【新たな取り組みについて】
昨年10月、産業技術総合研究所と共同で「住友理工―産総研 先進高分子デバイス連携研究室」を設立した。これによって産総研の知見や施設を使用することが可能となり、自動車用品はもちろん、一般産業向けの開発にも大きなメリットがあると期待している。具体的な研究の方向性としては、センシングデバイス実装車で生体情報の推定能力を評価していく。まずはドライバーモニタリングシステムを先行し、以降はステアリングタッチセンサー、ハプティクスなどへと対象を広げながら研究成果を実用化に結びつけていく。

【将来的な展望について】
政府や都の表明に則って30年、50年に向けて環境車の普及が加速すると見通している。電気自動車においては、エンジンを支える防振ゴム・エンジンマウントやガソリンを供給する燃料ホースなど従来の製品はなくなるものの、モーター向けの防振ゴムや電池の冷却ホースといった新たな需要が顕在化し、さらには各種センサーや熱マネージメントの部材など需要自体はむしろ増加すると見込んでいる。実際、主力顧客カーメーカーであるトヨタの新型燃料電池自動車「MIRAI」にも多くの当社製品が採用されており、今後も従来製品に置き換わる製品の開発スピードを上げながら、着実な成長を果たしたい。

【新年の抱負を】
今年は『過去の概念にとらわれず変化に柔軟に対応する風土づくり』と新たなスローガンを掲げた。

よく口にする言葉に「今日よりも(明日は)良くしよう」という言葉がある。一歩一歩であっても、決して焦ることなく前進していきたい。