バンドー化学
新春トップインタビュー
着実に成長軌道へ
オンラインによる取り組み加速
【昨年を振り返って】
2021年3月期第2四半期までの業績については、第1四半期は売上収益が前年同期比25%の減少となり、新型コロナウイルスの影響によって非常に厳しい状況で推移した。第2四半期に入ってからは中国やアジア地域を中心に自動車生産台数の回復が進んだのはまだ幸いだったというのが率直な思いだ。第1四半期のように、売上収益が3割近く落ち込めば、多くのメーカーが損益分岐点を下回る状況にもなりかねない。当社は、このような状況だからこそ思いきった固定費の見直しに取り組んだ。例えば、営業拠点については、コロナ禍により、在宅勤務やオンラインによる仕事のウエートが高まっている中、あえて首都圏の一等地に拠点を集約する必要性は薄らいでおり、必要な機能を移転・分散していくことも検討している。
【直近の事業環境について】
第3四半期においては、まだ前年同期の実績には若干及ばないものの、全体的にはそれに近い水準まで持ち直しつつある。今後の情勢についても不透明感はぬぐいさることはできず、事業分野によって戻り幅に差はあるだろうが回復基調で推移するものと見込んでいる。
【ウィズコロナを見据えた戦略は】
当社の事業では、お客様の現場に赴いて点検やメンテナンスを施し、リピート需要を取り込んでいくという原則的な活動がある。さらにそこから、ユーザーの生の声をくみとって改善につなげたり、製品開発に生かしていくことがメーカーとしてのポリシーだ。それが感染防止の観点から現場に行くことが難しくなっている中、さまざまなオンラインによる取り組みを加速させている。例えば、ホームページ内にバーチャル展示場を設けて新製品の概要や使い方を動画で分かりやすく説明したり、ウェブによるセミナーを開催するなど、こうしたデジタル面での取り組みは、お客様とのコミュニケーションツールの一つとして、一定のご評価を頂いている。
また今般のコロナ禍は採算性を精査しながら事業や製品の見直しを図るにも良い機会だととらえている。一方で、監視カメラ用のベルトや軽搬送ベルト「サンラインベルト」シリーズの新製品など、多様なニーズに適合する特長のある製品を見極めて拡販していくことで、収益性をより高めていくことができるだろう。
【新事業の創出に向けた取り組みは】
新事業では電子資材と医療関係の製品開発を推進しており、医療分野ではその第1弾として、連結子会社のアイメディックMMT社から関節運動テスタ「ATメジャー」の販売を開始した。当社独自開発の伸縮性ひずみセンサ「C―STRETCH(シーストレッチ)」を活用しており、足関節外側靭帯損傷患者に対し、〝前方引き出しテスト〟で計測して数値化する。これにより、従来は医療関係者の経験則に基づいて診断していたものを、データで客観的に回復度などを評価することを可能にした。アイメディックMMT社は医療機器において、整形外科領域に強みがあり、その販路を生かしながら今後の拡大をねらう。ほかにも「C―STRETCH」を活用した医療機器では〝呼吸器〟や〝えん下〟関連の開発を進めており、第2弾、3弾の早期製品化にこぎつけていきたい。
【自動車向けでは】
昨年、政府が「2050カーボンニュートラル」を宣言し、東京都も30年までにガソリン車の販売をゼロにする目標を表明するなど、当初の想定よりも、世界的に自動車の電動化は加速すると見ている。当社としては、たとえ新車用のエンジン周りのベルト需要が減少しても、補修用マーケットは、当面の間、海外を含めて継続するので、その需要の取り込みに努めていきたい。一方、次世代自動車ではEPS(エレクトリックパワーステアリング)に使われるベルトの展開車種が増えてきている。また、ベルト以外の自動車向けの製品開発にも鋭意取り組んでおり、パワーデバイスの熱マネジメント関連の高熱伝導放熱シート「HEATEX」、ディスプレイ関連で使われる光学用透明粘着シート「Free Crystal」など、次世代自動車に貢献する製品の納入にも取り組んでいる。
【生産性と品質の向上に向けた取り組みは】
現在推進中の中期経営計画で掲げている重要な指針の一つ(ものづくりの深化と進化)であり、昨年から一部の工場で画像解析のAIを駆使した外観検査の導入を進めている。これまで出荷前の検査では目視に頼っており、どうしても人手が必要なことが課題となっていた。新しい検査システムはトライアルが終了しており、今後、順次拡大していく考えだ。
ベルト製品の革新製法については、中計前半に足利工場と加古川工場では着々と投資を進めてきた。昨年、南海工場においても、自動車用ベルトの生産ラインでようやく導入できた。まずは国内の生産体制を強化して、国内で確立させた技術をいずれは海外にも展開させていきたい。
【今年の抱負を】
昨年は当社にとって大きな変曲点を迎えた年であった。新型コロナの影響で事業活動も大きな制約を受けたが、今年はやっと芽が出てきた新しい事業を、少しずつでも着実に成長への軌道に乗せていかなくてはならないと思いを新たにしている。事業環境の変動には決して臆することなく、しっかり足場を固めながら、なすべき取り組みにまい進していきたい。