島津製作所
「含酸素成分分析システム」開発へ
バイオ燃料の研究
トタル社、欧州2大学と
島津製作所(上田輝久社長)は、燃料、天然ガス、低炭素電力を生産・販売するエネルギー供給企業大手の仏・トタル社、仏・ポー大学、スペインのオビエド大学とクリーンエネルギー分野における包括的な共同研究に関する協定を締結した。4者は2年以内にバイオ燃料の研究に役立つ「含酸素成分分析システム」の開発を目指す。同システムは、島津製作所のガスクロマトグラフィー技術に、トタル社らが共同で保有する特許技術を組み合わせた画期的な分析装置となる。
「2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ(カーボンニュートラル)」という社会的な目標の達成には、バイオエタノールやバイオディーゼルといった二酸化炭素排出量が少ない燃料の普及を通じて、化石燃料への依存を減らす必要がある。ただし、バイオ燃料には有機酸やアルデヒド、フェノールなど含酸素成分が含まれており、品質の安定性を阻害する。成分が特定できれば除去は困難ではないが、バイオ燃料には未知の含酸素成分が多数含まれている。効率的な成分特定が技術的に難しく、業界標準となる分析手法が現在は確立されていない。
トタル社、ポー大学、オビエド大学の3者は「ガスクロマトグラフで分離した化合物を元素レベルに分解し、質量分析計(MS)などで検出する」という革新的な技術で特許を取得している。この特許技術を用いることにより、「数百本のピーク(測定結果のグラフで成分の存在を示す波形)を一本ずつ吟味していく」という、従来は数時間かかっていたバイオ燃料の含酸素成分の特定をわずか数十分に短縮できる。また、作業者の技術にかかわらず安定した測定結果も得ることが可能。島津製作所およびトタル社、ポー大学、オビエド大学が開発する含酸素成分分析システムは、バイオ燃料の普及に向けた研究開発や生産改善に貢献する。
トタル社の最高技術責任者(CTO)上級副社長のMarie―Noëlle Semeria氏は「この革新的技術はトタル社の研究開発部門とポー大学およびオビエド大学との共同研究の成果であり、『2050年までに二酸化炭素ネット排出量ゼロ』というトタル社としての気候変動に関する社会的な目標に沿うもの。バイオ燃料の製品化には生産工程における正確な含酸素成分の測定が不可欠。島津製作所とともにイノベーションを加速させられることを楽しみにしている」とコメント。
島津製作所の丸山秀三分析計測事業部事業部長は「当社が欧州メーカーと提携して、ガスクロマトグラフ質量分析計の国産化に乗り出してからちょうど50年が経つ。この間にさまざまなイノベーションを通じて、当社独自の製品を数々開発してきた。再び欧州の著名な大学や企業と組んで、環境に貢献できる技術の開発に取り組めることは大変光栄に思う」と話している。