日本ゴム工業会
新ゴム消費予想発表
20年は大幅な減少見込む
21年は増加の予想
日本ゴム工業会(池田育嗣会長)は、年初の「第22回幹事会」を書面による報告事項のみに限定し、1月21日にホームページ上で公開した。報告事項として「2020年の新ゴム消費見込み」「21年の新ゴム消費予想」を発表。国内のゴム工業における新ゴム消費量として昨年は前年比18・7%減の108万400㌧と見込み、大幅に減少する見通しを示した。今年の新ゴム消費量は同6・6%増の115万1600㌧と予想した。
今回発表された数値は、主要製品(業種)別に検討された、新ゴム消費予想量を基に同会で策定されたもので、昨年の落ち込みは世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国内経済においても大変厳しい状況が反映されている。昨年は、政府による経済対策の効果や海外経済の改善により、持ち直しの動きがみられたものの、年明けに2度目の緊急事態宣言が発出され、今年の国内経済の下振れのリスクを織り込んだ。昨年の主要経済指標においては、前年比で大幅に落ち込んでいると予測。鉱工業生産指数で11・0%のマイナス、実質GDPで5・2%のマイナスを前提に、民間企業設備投資は実質で8・1%のマイナスを示し、関連業界では、自動車の国内生産が前年比17%の大幅な減少を見込んでいる。
こうした環境下にあって、自動車タイヤは生産・輸出とも同20%程度の落ち込み、工業用品についても同17%程度の減少と見込んでいる。
今年の新ゴム消費予想量の主要製品別の内訳は、タイヤ類については同5・4%増の92万50㌧で、このうち自動車タイヤ・チューブについては、同5・3%増の90万7070㌧と推定。新車用が国内自動車生産における、新型コロナウイルス感染拡大の影響で大幅に減少した前年を上回ると見込んで増加と予測したが、市販用については、夏用タイヤおよび冬用タイヤともに前年の減少から増加へと転じる流れにあるものの、19年比では90~95%の水準にとどまる見通しと判断した。輸出用は、前年の大幅減から回復傾向となり、増加するものと判断した。
その他のタイヤ類を新ゴム量ベースで見通すと同12・9%増の1万2980㌧と予測。更生タイヤは、前年のコロナ禍による需要減から、経済活動の再開で回復しており、19年レベルには戻らないものの、前年を上回ると見込んだ。
工業用品類の新ゴム消費予測は同12・5%増の21万3910㌧。製品別の内訳は、ゴムベルトについては新ゴム消費量は同1・2%増の1万5490㌧と予測した。主力のコンベヤベルトにおいては、新型コロナウイルスの影響によって昨年は関連業界が不振に見舞われたが、今年は国内向けが主力需要先である鉄鋼メーカーの高炉の再稼働により回復すると見通した。一方、輸出向けは鉱山の稼働減が継続していることから、合計で前年を下回ると予測した。伝動ベルトは、自動車産業の回復を受け内需、輸出ともに前年を上回ると推測した。
ゴムホース全体の新ゴム消費量は、同11・9%増の3万2340㌧と見込んだ。ゴムホースの新ゴム消費量ベースで約7割を占める自動車用ホースが、前年の新型コロナウイルスの影響によって受けた四輪車の生産台数減少からの回復が見込まれており、同12・1%増と推定。前年に落ち込んだ高圧用ホースは、土木建設機械や工作機械用などが、年後半に需要が持ち直すものと見込まれていることから同19・1%増と見ており、軒並み回復への期待値は高く、その他用ホースについても、一般汎用ホースおよび一般産業分野での需要が安定して推移するとみて同6・0%増と予測した。
その他の工業用品の新ゴム消費量は、同13・8%増の16万6080㌧と見込んだ。全体ではコロナ禍による前年の大幅な減少から増加に転じると予測。品目別では防振ゴムは19年の水準にまでは戻らないものの、自動車メーカーの生産回復や前年の大幅減の反動により同9・6%増と読んで、伸びると見込んだ。パッキン類は主要需要先の自動車業界の回復に伴い、同12・3%増と予想し、スポンジ製品においても、主力の自動車向けで顧客の生産回復を見込み、同26・2%増と推定した。ゴムロールは、全体としては回復が見込まれるものの、製紙用ではコロナ禍を機にデジタル化が加速したことで、用紙機械の需要減が進むと見られるほか、製鉄用では受注先の生産減少、印刷用でも市場の縮小が続くといった見通しから同0・5%増の微増にとどまると推定された。ライニングは、前年の落ち込みが大きく、生産量は低水準にとどまると予想されるものの、主力の化学工業用(ソーダ用)、水処理や船舶関係で回復を見込み、同13・4%増程度を見込む。防舷材は民間需要、公共事業ともに新型コロナウイルスの影響が続き、同2・6%減のマイナスに陥ると予測。ゴム板は全面的な改善は難しいものの、自動車や半導体産業での回復が見込まれ、同5・8%増と見込んだ。
その他製品類における新ゴム消費量の動きは同1・7%増の1万7640㌧。ゴム履物は、前年並みの1250㌧と予想。新型コロナウイルスの収束が不透明な状況にあって、これからも影響は残るとみられるものの4月以降は回復が進むと読んだ。その他のゴム製品の新ゴム消費量は同1・9%増の1万6390㌧と予想。医療衛生用品は、現状維持が続くものの、新型コロナウイルスの影響が緩和されると見込み、同2・5%増。運動競技用品は、球技用ボールでは新型コロナウイルスや少子化の影響が続くものの、年後半には回復、ゴルフ用ボールでは北米需要の回復などを受け生産が増加すると見込んで、同4・8%増と推測。ゴム手袋は、家庭用が減少する一方、作業用・手術用はコロナ禍からの回復が見込まれることから、同3・0%増と予測。ゴム引布は、工業用や車両向けで回復傾向が見込まれるほか、新規製品の立ち上がりも見込んで、同3・2%増と見込んだ。
このほか報告書関連では「環境自主行動計画」(循環型経済社会の構築)の21年度以降の目標に関する件、ゴム製品の生産および輸出入動向に伴う最新情報の提供が行われた。
今回の幹事会は紙面による報告事項のみだったが、次回の予定としては6月2日に東京都千代田区の経団連会館で実施できるよう準備が進められている。当日は総会、創立70周年記念行事も開催予定。