2021年2月25日

アシックス
2020年12月期の決算を報告

営業利益予想以上
22年以降には本格的に回復

アシックス(廣田康人社長)は2月15日、ウェブを通じて2020年12月期の決算報告を行った。同社では12日、持続的成長に向けての財務基盤の確立を目指した「中期経営計画2023」を策定(詳報6面)、今後はこの計画に基づき同社が理想とする企業体系「VISION2030」を体現する。決算説明会の冒頭、あいさつに立った廣田社長は「中計2023は、VISION2030に向けて成長を続ける当社にとっての最初の3年間の事業期間であり、収益性を高める取り組みに力を注ぎ、将来の持続的成長に向けた財務基盤を確立する。目標の達成に向けては、担当者レベルにまで落とし込んだ事業戦略を構築している」と、計画へのこだわりについて語った。

当期の業績を取り巻く環境は、世界的な新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)拡大により、各種競技大会の中止や規模の縮小、直営店の一時的な閉店、個人消費の冷え込みなどといった厳しい状況が継続。第3四半期連結会計期間には、同社が事業を行っている地域において、一定の制限の下で経済活動が再開されたことで、状況は改善に向かっていたものの、感染症の再拡大の影響により厳しい状況が再来した。しかしながら、欧州を中心に主にパフォーマンスランニングが好調に推移したことなどの要因から、昨年11月に発表した前回予想を上方修正している。

当期の業績は、売上高が前期比13・0%減の3287億8400万円、売上総利益は同14・9%減の1528億5800万円、損益面では営業損失が39億5300万円(前年同期は106億3400万円の利益)、経常損失は69億2300万円(同101億100万円の利益)、当期純損失は161億2600万円(同70億9700万円の利益)となった。売り上げ面は感染症による影響が大きく、損益面も営業段階で広告宣伝費などの減少はあったものの減収によるあおりを受け、経常段階ではこれら要因に加え、新興国通貨の下落による為替差損を計上、純損失では新たに米国子会社での法人税等還付税額の計上があったものの、直営店舗などの減損損失および感染症拡大に伴う店舗休止などにより損失の計上を余儀なくされた。

コロナ禍にあって全世界におけるECの売上高が前期比86%増で全体に対するEC構成比は15・7%(前期は7・4%)と大きく伸長、北米では前期比12%増、欧州は同33%増と堅調な伸びを見せた。筋肉質な財務体質の構築と収益性改善を目指し、グローバルで販管費の徹底的なコントロールに着手。マーケティング費用や人件費などの削減を実施し、前期比で123億円、計画比で313億円の販管費削減を実現した。販管費コントロールの効果もあって、昨年11月に公表した全体の営業利益予想からの上方修正に至った。在庫管理の強化に向けては、上半期に今後の販売予測を鑑み、生産および発注の一部をキャンセルするなど在庫圧縮管理を強化、加えて新商品の発売時期を変更し販売機会の適正化を図った。こうした取り組みの結果、当期の在庫高は881億円となり、前期比で50億円の削減を図った。ただし東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会関連在庫として45億円が含まれている。

地域セグメント別の状況については、いずれも感染症の影響を受け、日本地域の売上高は前期比22・0%減の943億9800万円、セグメント損失は37億9100万円。北米地域の売上高は同17・2%減の653億7700万円、セグメント損失は45億4800万円となり、赤字幅が縮小した。欧州地域の売上高は同8・6%減の873億4200万円、セグメント利益は同59・5%増の45億7200万円。利益面については、粗利益率の改善に加え、販売費および一般管理費削減なども貢献した。中華圏地域の売上高は同4・2%増の411億1800万円、セグメント利益は同20・3%減の43億500万円。感染症の影響を受けたものの、パフォーマンスランニングが好調に推移した。オセアニア地域の売上高は同8・0%増の199億2600万円、セグメント利益は同39・3%増の27億700万円。パフォーマンスランニングおよびスポーツスタイルが伸びを見せた。東南・南アジア地域の売上高は同24・3%減の85億5300万円、セグメント利益は同80・7%減の1億5200万円。その他地域の売上高は、韓国および南米における感染症拡大の影響もあり、同22・2%減の282億6000万円、セグメント利益は同42・3%減の4億6700万円。中華圏において主にパフォーマンスランニングの売り上げが25%以上伸びた(為替影響を除く)ことにより、前期比4%増となり、今後の伸び代をうかがわせた。

今期については、感染症拡大の影響は依然として継続しており、景気回復の足取りの弱さを見通して予測。感染症などの不確定要素を考慮した結果、レンジ形式で業績を予想することを決めた。それによると売上高が前期比12・5~17・1%増の3700億円~3850億円、営業利益は70億円~100億円、経常利益は40億円~70億円、当期純利益は20億円~35億円。ただし、本年5月公表予定の第1四半期決算発表時に業績予想を見直す予定としている。新型コロナウイルス感染症拡大により、同社グループにおいては直営店舗、得意先店舗の臨時休業による影響が甚大。地域により状況は異なるものの、国内外における緊急事態宣言の再発出やロックダウン措置などにより、新型コロナウイルス感染症拡大の脅威は現時点においても継続してはいるものの、同社グループとしては22年以降に業績の本格的な回復に至るという見通しを立てている。