TOYO TIRE
新中計「中計’21」
変化に迅速、柔軟に適応
TOYO TIRE(清水隆史社長)は25日、ウェブを通じて2021~25年度を実行期間とした新中期経営計画「中計’21」を発表した。
冒頭、清水社長は「これは数年後の企業規模を設定し、そのための成長戦略を描き出した従来型の策定方法で組み上げた中期経営計画とは質が違う。当社の本来あるべき姿、強みを再認識するとともに来たるべき時代の変化の波と独自の課題について直視することで、企業ステージをさらなる高みへとシフトアップさせるための変革を促すためのロードマップとしてとらえている」と、特別な位置付けについて述べた。
中計’21では、グローバルでの全機能連携を通じ、変化への迅速・柔軟に対応する企業としての力の強化を図る。「自らの強みを一段と伸ばし、本来は負の要素である〝持っていないこと〟を自らの強みに変える。持たざる強みによって最終的には変化を自らに取り込み、そのことによって進化を続けていく」(清水社長)。中計’21では、中計’21の計画期間中に推進した競争力の研さんに向け、グローバルに進化させる技術開発基盤体制構築、生産面ではセルビア工場を稼働させ、グローバルでバランスの取れた供給網の能力を発揮する。販売面では潜在顧客との設地面積を拡大、市場での独自プレゼンスの向上を図っている。
定量面からは、効率性を重視した財務指標、成長と還元のバランスを意識した財務方針を企業ステージを高めていくための羅針盤として掲出。連結営業利益率14%超、重点商品(同社の強みを具現化するタイヤ商品カテゴリー)販売構成比率55%超、連結営業利益600億円、ROE12%以上を目指しており「これまで仕込んできた成長の成果の刈り取りと、北米事業をはじめとする強みの強化により、計画の達成に満を持して挑戦していく」(同)。新たな企業ステージにおいては、財務方針として設備投資計画を5年総額で1940億円(設備の維持・更新投資+成長投資)、株主還元については、目標ROEを念頭に置きながら、配当性向30%以上の継続を計画している。
成長戦略については、日欧米による3極R&D機能連携により、独自技術を強化することで〝差別化商品〟を展開。高機能設計力/顧客志向商品力/次世代技術開発力を重要な差別化技術として掲げ、これら3分野を重点的に強化する。高機能設計力は、さまざまな要求性能を高次元で同時満足、両立させる技術で、タイヤの構造・材料配合の設計力、タイヤの挙動を可視化する評価技術、それぞれの強化・技術研鑚を図り、この両面からのアプローチで性能のさらなる進化、高度化に挑戦していく。顧客志向商品力は、差別化された特長と魅力を備えた商品をタイムリーに具現化。消費者のインサイトを掘り下げ、一歩先の市場を的確にとらえ、AIを活用したシミュレーション技術「T―MODE」を生かしながら、北米を中心に独自性の高い商品をスピーディーに展開していく。次世代技術開発力とは、次の社会を見据えた技術の高度化を図る取り組みであり、技術的な成長の柱の一つとして確立できるよう挑戦していく。環境性能アップにつながるサステナブル素材の使用比率を向上するほか、独自のソリューションモデルを事業化できるよう取り組んでいく。
地域的な成長戦略では、強みを磨き上げた〝差別化商品群〟を継続的に重点投下。北米販売シェア5位を目指す(20年は7位)。欧州・日本・アジア市場では、地域特性をとらえた重点商品を展開。欧州ではセルビア工場稼働に伴う競争力の高い生産供給体制、R&Dセンターで性能を研さんした差別化商品力を武器に既存の顧客基盤を強化、本数追求から重点商品の販売比率向上を目指す戦略を実行する。日本ではSUV等の成長性を備えたカテゴリを視野に趣向性の高い商品をはじめ、静粛性・耐摩耗性を兼ね備えた高機能商品などを意識的に開発、投入する。並行して〝大胆なハード再編〟と〝DXによるソフト改革〟を展開、新たに販売体制を抜本的に変革、固定費を大幅に削減するとともにデジタルを活用した営業の高度化、営業基盤の変革により重点商品販売比率を向上させる。アジアでは、マレーシア工場を起点とした地域特化型の商品開発をテコにしながら販売ネットワークを拡充。ブランドアンバサダーをコンテンツとして活用したデジタルマーケティングを強化することで、ブランドポジションの向上を図る。
新車向けの戦略については、タイヤと自動車部品といったモビリティに不可欠な二つの事業を展開しているという特長を生かし、両事業を組み合わせた同社ならではのアプローチによって電動化や次世代モビリティの発展に貢献していく。同時に販路拡大、ブランド認知度向上、回帰需要獲得といった市販用タイヤ事業への波及効果を取り込み、収益力のスパイラルアップを図っていく。
生産・供給戦略については、アメリカ工場のワイドライトトラック用タイヤ増強設備の稼働を開始し、来年4月からはセルビア工場が稼働。セルビアからは域内で調達した最先端材料、最新鋭設備を駆使した高性能商品、重点商品を立地優位性の高い物流網に乗せて供給していく。仙台工場比で総コストを30%削減し、米国に200万本、欧州エリアに300万本を展開する。中国工場は、中国・日本市場のニーズの変化に素早く適応、日本工場は高付加価値品を製造する供給拠点へと進化させ、地産地消と北米向け供給を推進していく。
ソリューションビジネス化に向けては、CASE時代の本格化に伴い、従来以上に安全性や経済性が求められるタイヤにおいて、同社では安全性を意識したタイヤセンシング技術、経済性を意識した摩耗診断技術を足掛かりに、独自のソリューションビジネスを展開していく。
資本業務提携を行っている三菱商事とは同社のネットワーク・機能を活用した国内市場でのタイヤ増販、物流・保険などのコスト削減などにより、本年までに営業利益14億円の押し上げを実現。提携効果として100億円を創出するための施策を実施する。採算面、効果創出速度の観点から、まずは日本、アジア市場に注力し、本年よりターゲットを設定、拡販活動を本格化していく。アジア市場ではSUV用タイヤのビジネス機会の増大、小売店舗の陳列棚の確保等の新車用・市販用タイヤの販路拡大に向けた取り組みを開始している。
持続的な成長を支える経営基盤の構築に向けてはグローバル、長期的視点で物事を考え、事業と融合を主導的に図り、価値を創出していく。その経営基盤の新しい役割によって財務体質を強固にしながらデジタルイノベーション、サステナビリティ、人財基盤の強化・推進に取り組んでいく。