2021年4月5日

JSR
経営方針説明会開く

コア事業軸に成長
過去最高益600億円更新

JSRは3月26日、ウェブを通じて2024年度(25年3月期)を目標年度とした「経営方針説明会」を開催した。説明会にはエリック・ジョンソンCEO、川橋信夫COO、宮崎秀樹取締役兼常務執行役員が出席。今回の経営方針は中期的な全社経営目標であり、コア事業であるデジタルソリューション事業、ライフサイエンス事業の事業戦略および数値目標について解説。石油化学系(エラストマー、合成樹脂)事業の戦略については「今後の事業環境を勘案し、制限なき事業構造改革の断行が必要と判断している。特にエラストマー事業は、比較的に安定的な合成樹脂事業に対し、より迅速な対応が必要な状況となっている。原料・物流コストの合理化などコスト削減、販売価格の適正化による収益改善策を実行しており、短期的な施策ではなく、持続性を維持するためには中長期的な観点での事業施策が必要」(ジョンソンCEO)と判断。そのため、現時点で中長期の具体像を示す段階ではないとしている。

同社では、これまでの歩みをひも解きながら「技術の発展とJSRの発展は同義である。先端技術を開発し、新しい分野へ提供していくことで、当社も成長が可能となった」と定義。社会課題を解決し、社会を豊かにするために比類なき技術を追求し続け、先端技術を新しい分野へ提供していくことで、同社も成長を果たす。優れた品質と顧客サポートを追求することにより、経営目標として07年度の600億円という過去最高益を更新する。ROEは10%以上を果たし、組織体制としては強じんな(レジリエント)経営基盤を構築し、イノベーション、デジタリゼーション、ESGコミットメント、従業員エンゲージメントといった基盤要素を理想的に整える。その主役となるポートフォリオが、半導体事業を中心としたデジタルソリューション、ライフサイエンス事業であり、この新しいポートフォリオである両事業によって24年度に売上高3000億円以上、コア営業利益を600億円以上、EBITDAも750億円以上にまでもっていく。

事業戦略としては、デジタルソリューション事業については、AI、IoT、小型化と省電力での高性能化の実現を背景としたスマート社会の実現により、目標年度における半導体市場を4300億㌦と推定。同社の強みである先端材料での高い市場シェアに加え、半導体事業へとリソースを集中、M&Aを含む事業規模および分野の拡大によって、フォトレジスト市場においては安定的に技術革新を推し進め20億㌦にまで成長を遂げる。

ライフサイエンス事業については、売上高のCAGR(年間平均成長率)でプラス20%、コア営業利益率20%を目指す。将来的にも高い成長、精密医療分野の拡大など、事業規模と分野の拡大が見込まれており、市場規模でみるとバイオ医薬品市場で3500億㌦、CDMO(医薬品開発製造受託機関)市場でも計60億㌦と予測されている。同社では、複雑なバイオ医薬品の開発サポート力という強みを備えており、医薬品開発の効率化や一人ひとりに適合した個別医療の実現を可能にすることで、顧客とのパイプラインの拡大による事業成長ならびにユニークな付加価値の創造によるプラスアルファの伸び代が見込まれる。

デジタルソリューション事業における半導体材料事業戦略については、半導体市場は今後も技術革新が継続、安定的な成長が見込まれていることから、市場成長の倍の売り上げ成長を目指し、ArF・多層材での高シェア維持、EUVの本格立ち上げ、取り込み、洗浄剤・CMP・実装材料の拡販に取り組む。ディスプレイ材料・エッジコンピューティングの分野においては、事業再編・選択と集中により、LCD材料事業のキャッシュフローの最大化を図る。新規ディスプレイの成長を取り込み、高速通信・センシング分野などといった新たな需要を押さえることで売り上げを拡大、新事業を創出していく。ハイエンド向けスマートフォンカメラ用の赤外線カットフィルター「ARTON NIR」の積極展開も図ることでCAGRでプラス4%を目指す。

ライフサイエンス事業では迅速で、安価に個別医療に対応する目的から、バイオ医薬品の創薬から製造までのプロセスを総合的にサポート、有効性を事前に検証する診断薬技術の開発も進める。市場を上回る成長速度で売上高1000億円以上、ROS20%以上を達成し、各事業の戦略推進に加えて、ライフサイエンスグループ全体の戦略的なシナジーを強化することで目標を上回る成長を目指す。成長シナリオとしては、CDMOの治験プロジェクトの増加・生産拡大により、24年度に向けての強い成長基盤を構築。スイス・ジュネーブ、ノースカロライナにおいては、新工場建設に着手している(ノースカロライナ工場は顧客との共同プロジェクト)。

グループ企業であるCrown社では幅広いPDx(患者主要組織移植)モデルを強みとしたオンコロジーサービスを推進。競争力を備えたスクリーニングモデルを継続的に開発し、オルガノイドモデルの販売を拡大していく。BPMでは今後、後期臨床段階のパイプラインからの数量増加よる成長にも期待を寄せている。IVDM/IVD(MBL)では中国市場へのシフトについても加速させ、コンパニオン診断薬事業の推進にも手を広げる。これら施策により、24年度の売上高のCAGRでプラス20%を目指す。

ビジョンとしては、バイオ医薬・診断薬双方の開発チェーンをサポート、ワンストップサービスの展開を目指す。ライフサイエンスグループ全体でのシナジーの強化、次世代の開発活動も加え、24年度以降も持続的な成長を実現させる構え。