2021年4月25日

横浜ゴム、日本ゼオン、理研
世界初の新技術を開発

バイオマスからブタジエン生成

横浜ゴム(山石昌孝社長)、日本ゼオン(田中公章社長)、理化学研究所(松本紘理事長、以下、理研)の3者は、共同で設置している「バイオモノマー生産研究チーム」の共同研究によって、バイオマス(生物資源)から効率的にブタジエンを生成できる世界初の新技術を開発した。ブタジエンは自動車タイヤなどの原料として使われる合成ゴムの主原料として使用されている。現在、ブタジエンはナフサ熱分解の副生成物として工業的に生産が行われているが、バイオマス由来ブタジエン生成技術を確立することで石油依存度を低減でき、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素削減に貢献することができる。

優れた生成能を持つ細胞の創製に成功

今回、同チームは新しい人工代謝経路と酵素で優れたブタジエン生成能を持つ細胞の創製に成功。これにより、今までの代謝経路と比較し、微生物によるバイオ合成から生成される一層安価なムコン酸(示性式(HOOC)CH=CH-CH=CH(COOH)で表される不飽和ジカルボン酸。trans-trans―ムコン酸、cis-trans―ムコン酸、cis-cis―ムコン酸と呼ばれる3種類の異性体が存在し、本研究ではcis-cis―ムコン酸が用いられている。cis-cis―ムコン酸は、ある種の細菌がさまざまな芳香族化合物を酵素分解することによって生成する)を中間体として経ることが可能となったほか、これまで開発が行われてきた酵素の知見を取り入れることによってブタジエンの発酵生産でのコストを大幅に削減することが期待できるとしている。これらはロンドンなどを拠点とし、自然科学分野の研究論文が掲載されているオンライン専用ジャーナル「Nature Communications」に掲載されることになった。また、本技術によって世界初の発酵生産により生成したブタジエンを用いてブタジエンゴムを得ることにも成功した。

同チームは、同じく合成ゴムの主原料であるイソプレンについても、2018年に世界初となる新しい人工経路の構築と高活性酵素の作成によって優れたイソプレン生成能を持つ細胞を創製。この細胞内で出発原料であるバイオマス(糖)からイソプレン生成までを一貫して行うことに成功している。

横浜ゴム、日本ゼオン、理研(環境資源科学研究センター・CSRS)は13年から共同研究を推進。同チームは、昨年4月に理研内に設置され、社会実装に向けた研究を加速させるため理研の「産業界との融合的連携研究制度」を利用している。今後、さらに高生産酵素と効率的な精製技術確立に向けて横浜ゴム、日本ゼオン、理研の知見・技術を有機的に融合して研究を進めていく。

横浜ゴム、ゼオングループは今後も産官学の垣根を超えた研究に積極的に取り組み、「持続可能な開発目標(SDGs)」達成に向けて、独創的技術開発を推進していくとしている。