2021年7月5日

島津製作所
堀場製作所と計測機器発売

技術の融合で新たな価値を提供

島津製作所(上田輝久社長)と堀場製作所(足立正之社長)は、島津製作所の高速液体クロマトグラフ(HPLC、以下、LC)および堀場製作所のラマン分光装置(以下、ラマン)を融合させた計測機器「LC―Raman(エルシー・ラマン)システム」を発売した。同製品は、昨年8月に両社が開始した協業の成果で、世界初となる複合システム。LCの〝わける〟技術と、ラマンの〝みえる〟技術の結合によって、計測の精度や効率を大幅に高めるとともに、未知成分の検出も期待でき、新たな計測価値の提供を行う。

島津製作所のLCは混合試料から計測対象を抽出する技術に優れ、対象成分の正確な定量に強みがあり、一方、堀場製作所のラマンは分子構造の違いを判別する技術に優れ、未知成分の推定に強みを有している。両製品はそれぞれ日本国内でトップシェアを獲得。両社が強みを持つ2つの技術を高い次元で結合することで、イノベーションのさらなる加速を目指し、今回同システムを共同で開発した。

製品の特長としては、①「くっきり」判別・混合試料の構成成分を明確化=LCが効率的に混合試料中の成分を分離し、成分ごとにプレート上に滴下して濃縮。続いてラマンが各成分のラマンスペクトルを計測。得られたラマンスペクトルをデータベースと照合することで各成分の同定を行う。これにより、従来のラマンよりも100倍以上の超高精度で判別するとともに、複雑な構造を持つ化合物の計測および未知成分の検出などに貢献する②「すっきり」整理/「かんたん」操作・データの一元管理と直感的な操作=LCとラマンをつなぐ専用ソフトウエア「LiChRa(リクラ)」を開発。リクラは装置を一括制御するだけでなく、LCとラマンでそれぞれ得られたデータや試料情報をひも付け、一元管理するとともにシンプルかつ直感的な画面構成で、初心者でも分かりやすい操作を可能とした。計測結果など、データの一括閲覧や検索も容易③多種多様な計測アプリケーションの展開=同製品では、早稲田大学理工学術院の竹山春子教授を交え、三者共同でライフサイエンスやバイオサイエンス市場向けのアプリケーションを開発。産学連携のシナジーも生かし、さまざまな計測シーンでの課題を解決する。

また両社は、エルシー・ラマンシステムによる合成樹脂の構造解析手法も開発した。

今後期待される分野とアプリケーションはヘルスケアはバイオマーカー探索、生体中成分の分析、医薬では低分子医薬品の構造異性体分析、抗体医薬品凝集体や修飾基解析、ライフサイエンスでは微生物代謝物分析・探索(代謝物データベース構築、新規物質探索)、培地成分の分析、食品においては糖類、脂肪酸の組成比分析、新規機能性成分の探索、化成品は合成化合物の構造推定、不純物評価、化粧品などの成分構造変化分析が挙げられる。

同システムは、島津製作所が製造するLCと堀場製作所が製造するラマンならびに専用ソフトウエアのリクラを組み合わせた複合システム。同システムは両社から購入可能。希望販売価格(税別)はLC部1600万円から、LC用ソフトウエア「LabSolutions」140万円から、ラマン2750万円から、リクラ200万円からとなっている(製品の仕様や付属品の購入などにより、価格が異なることがある。また、製品の据え付け費は価格に含まれていない)。年間販売目標は購入者により購入システムの構成が異なるため、リクラの販売目標数として20式を掲げている。