2021年9月5日

日本ゼオン
物性予測の新技術開発

AIで材料の構造画像生成
CNT等開発加速

日本ゼオン(田中公章社長)は、2017年から参画している新エネルギー・産業技術総合開発機構(石塚博昭理事長、以下、NEDO)の「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト」において、先端素材高速開発技術研究組合(北弘志理事長、以下、ADMAT)、産業技術総合研究所(石村和彦理事長、以下、産総研)と共同で、人工知能(AI)によって材料の構造画像を生成し、高速・高精度で物性の予測を可能とする技術を開発した。

今回開発した技術により、カーボンナノチューブ(CNT)のような複雑な構造を持つ材料に対し、材料物性の高精度な予測の実現を可能にする。これにより、従来はAI技術を適応できなかったさまざまな材料系についても材料選定から加工・評価まで一連の実験作業を高速・高精度にコンピューター上で再現(仮想実験)することが可能となり、材料開発のさらなる加速化が期待される。

今後も同プロジェクトを通じ、CNTをはじめとするナノ材料と高分子材料との複合材料を対象としたAI開発技術に取り組むとともに、幅広い材料へと適用可能な技術開発につなげ、新技術および新材料開発の可能性拡大に貢献していく。

昨今、材料開発のさらなる高度化・高速化の要求が高まっており、ディープラーニング(深層学習)などの情報処理技術を利活用する動きが活発化している。これらは、さまざまな材料データをコンピューターに学習させることで、高性能な新しい材料の提案を可能とするAI技術で、人の勘や経験に頼る従来の材料開発をさらに高度化することができる。しかしながら、コンピューター上で扱うことができる材料は構造が定義できる低分子化合物や周期構造を持つ金属、無機化合物に限定されることが大きな課題となっていた。

こうした背景の下、今回のプロジェクトではCNTをはじめとする機能性材料開発の高速化を目指し、データ駆動を活用した研究を推進。ADMAT、産総研と共同でより汎用性の高い材料へとディープラーニングを適用する手法を開発した。

今回開発した技術では、まずは複雑な構造を持つCNT膜の構造画像と物性をAIが学習。その上で、種類の異なるCNTを任意の配合で混合したさまざまなCNT膜の構造画像としてコンピューター上で生成することで、その物性の高精度な予測を可能にした。この技術は、従来のAIでは適応が不可能であった複雑な構造を持つ材料の組成選定・加工・評価といった一連の実験作業をコンピューター上で高速・高精度に再現(仮想実験)。材料開発のさらなる加速化が期待できる。

今回の技術の詳細は、8月30日(英国時間)に、Nature Researchが発行した国際学術誌「Communications Materials」の電子版に掲載されている。