2021年10月15日

ダイセル
京都大学と包括連携協定

双方の研究開発資源最大限活用

ダイセル(小河義美社長)は10月8日、京都市左京区の京都大学・百周年時計台記念館において記者発表会を開催し、京都大学(湊長博総長)との間で自然と共生した循環型、低炭素社会の実現、新しい産業の創出などを目指し、共同で研究を推進してきた取り組みの延長上における包括連携協定の締結を行ったことを明らかにした。2017年度より共同で実施してきた双方の研究開発資源を最大限に活用し、〝組織〟対〝組織〟の包括連携を推進する。

同社と京都大学が包括連携協定を行った取り組み内容は、木材や農水産廃棄物などといったバイオマスを高機能な材料や化学品に変換し、その価値を森林の再生や、農水産廃棄物の高付加価値利用に還元することで森、川、海、農山漁村、都市を再生し、自然と共生する低炭素社会の実現、新産業創出などに寄与することを目的としている。

今回の包括連携協定の下、同社のリサーチセンターでは、同大学の大学院農学研究科、大学院人間・環境学研究科、化学研究所、エネルギー理工学研究所および生存圏研究所との間で、包括的研究連携協定を締結。バイオマスの新しい変換プロセス「新バイオマスプロダクトツリー」実現に向けた研究開発と、持続的循環利用を共通テーマとした基礎的研究ならびに研究成果の社会への還元を目指す。国内外の多様な分野から優秀な人材が集い、学術分野、産業界、地域をつなぐハブとして機能する産学連携共同研究の拠点としてバイオマスプロダクトツリー産学共同研究部門を京都大学宇治キャンパス内に設置し、京都大学生存圏研究所、化学研究所、エネルギー理工学研究所とダイセルの共同ラボとして活用する。

新バイオマスプロダクトツリーにおいては、ダイセルの技術を発展。同社の主力製品である酢酸セルロースは、木材由来のパルプを原料とするバイオマス製品ながら、木材などの天然高分子はもとより溶解が困難、製造プロセスはエネルギー多消費型であり、同社ではこの課題に対し、京都大学との共同研究によって常温常圧で木材を溶かす技術の確立を目指している。この技術によってセルロースに加え、木材に含まれるヘミセルロース、リグニンなども活用した高機能製品の開発も可能となる。

将来的には、バイオマスバリューチェーン構想を描いており、共同研究中の新技術によって、木材に限らず農林水産業の廃棄物からも有益な成分の抽出が可能となることから、有価で処分される素材を二次産業の原料として活用。一次産業の経済性を向上させ、一次産業と二次産業に循環を生む新しい〝産業生態系〟の構築が可能となる。この経済循環によって、林業を復活させ、森を再生するとともに、山・川・海を含む自然の生態系の回復にも寄与するという考えがダイセルが提唱するバイオマスバリューチェーン構想。同社では今後、産学官の垣根を超えて志をともにしながら、実現に向けて取り組んでいく。