2021年10月25日

住友理工・産総研
産総研のテストコースに6種類の特殊路面新設

最先端の施設で実験研究
乗り心地、快適さ等

住友理工(清水和志社長)と産業技術総合研究所(石村和彦理事長、以下、産総研)は、共同研究の一環として産総研つくば北サイトに設置されている車両実験用試走路(テストコース)の一部を改修し、新たに6種類の特殊路面を設置して実験を開始した。

自動車産業界ではCASEによって新たなクルマづくりが求められる中、快適性や静粛性、操縦安定性などの向上を目的とした測定ニーズが生まれている。これらの要求に対応するため、実際の多様な走行路面を模擬し、車両の走行性能を詳細に評価できる設備への要望が高まっている。

産総研では1981年に1周3200㍍、3車線からなるテストコースを開設し、最先端のクルマづくりを担うさまざまな実験をこれまで行ってきたが、近年の評価・測定ニーズの高まりを受け、テストコース改修の検討を行っていた。加えて、両者は昨年10月、情報・人間工学領域ヒューマンモビリティ研究センターに「住友理工―産総研 先進高分子デバイス連携研究室」を設立し、運転時の生体の情報や状態を推定する共同研究を同研究室を軸に実施してきたが、一層複雑な路面状況での評価実験が必要であった。そこで、両者は共同研究をさらに推進するため、テストコースの一部に新たな6つの特殊路を設置することとした。

本格的な実験開始を前に、10月18日にテストコース竣工式が挙行され、試走も行われた。住友理工の清水社長は「次代を担う最先端の研究に対応した開発施設であると確信した。産総研の知能とタイアップし、これまでにない開発ができるのは大きな喜び。時代のニーズを迅速かつ的確につかみながら変化に柔軟に対応することで、新たな製品・サービスを生み出していく」と、研究開発のさらなる加速へ意気込みを示した。産総研の石村理事長は「実際に乗車して初めて、路面ごとにさまざまな揺れや騒音、快不快があることを体感した。急速に進展するモビリティの変化に追随するだけでなく、その先を見越した新たな提案に結び付けてほしい」と期待を込めた。

今回、テストコースの東西全3車線が改修され、それぞれ最外周の第3車線には合計6つの特殊路(車両評価のための特殊な路面)を設置。これによって、直線部の走行がよりスムーズになるとともに、実際の路面を模擬した特殊路を活用して、乗り心地などに関して実際の走行状況に即した車両評価が行えるようになった。特殊路は①道路がより深く削られ、一部に砂利が露出した路面のロードノイズ路②道路表面のモルタル部分まですり減った路面の乗り心地路③ベルギーにあるような石畳を再現した道路のベルジャン路④波上にうねった道路を再現した路面の波状路⑤道路を構成する砂利や砂(骨材)が多く露出した路面の路面こもり⑥道路を横断する形で突起や溝を設置した路面のハーシュネス路の6種(長さ100~200㍍、幅3㍍)で構成。路面に凹凸や異なるテクスチャー(素材や表面形状)の変化を設けることによって、NVH(振動・騒音・ハーシュネス)を効果的に計測・評価することが可能となった。

今後はテストコースを活用し、センシングデバイスを実装した車両を用いて実際の走行を再現した実験研究や人間工学に基づいた乗り心地の定量評価を行い、その中で評価技術の高度化(官能定量化技術、データ解析技術の進化)を図り、それらを活用して安全・安心・快適の向上に寄与する、高付加価値を有した新技術や新製品の研究開発を推進していく。また、高度化した評価技術を用いて研究開発を加速させることで、自動運転や電動化が進展する新たなモビリティ時代にふさわしい乗り心地や快適な車室空間の提案へとつなげていく。