2021年12月10日

横浜ゴム
AI活用タイヤ特性値予測システム

独自開発、タイヤ設計で実用開始

横浜ゴム(山石昌孝社長)は、AIを活用したタイヤの特性値予測システムを独自に開発し、タイヤ設計において実用を開始した。同社では「これにより、膨大な仮想実験が可能となることから、開発のスピードアップやコスト削減、より高性能な商品の開発に加え、経験の浅い技術者によるタイヤ設計が容易になることが期待できる」としている。

今回のシステムは同社が昨年10月に策定したAI利活用構想「HAICoLab(ハイコラボ)」に基づいて開発された。人がタイヤの設計パラメーターである構造や形状に関する仕様データ、コンパウンドなどの物性値に関する材料データ、評価条件を入力すると予測されるタイヤ特性値をAIが出力する。

また、同システムではタイヤ設計で起こりがちなAIの予測精度の低下を抑制。内部構造が異なるタイヤでは設計パラメーターの種類や数が異なるため、AIの学習に利用する全データを構造特徴に合わせて細分化して使い分ける必要があるが、学習データの細分化によってAIの予測精度が低くなることが少なくない。そこで関連する他の領域で学習したAIの予測能力を移植(転移学習)することにより、予測精度を向上させている。

ハイコラボは〝Humans and AI collaborate for digital innoⅴation〟を基にした造語で、人とAIとの共同研究所という意味合いも込められており、人間特有のひらめきや発想力とAIが得意とする膨大なデータ処理能力を生かした〝人とAIとの協奏〟によってデジタル革新を目指す構想。人が設定する仮説に沿ったデータの生成・収集とAIによる予測・分析・探索を繰り返すことによって未踏領域での知見の発見を目指す。

同社はこれまでにも2017年にマテリアルズ・インフォマティクスによるゴム材料開発技術、インフォマティクス技術を活用したタイヤ設計技術を発表するなど、材料およびタイヤの設計開発プロセスでAIを活用した技術開発を進めてきた。現在はこのハイコラボの下、プロセスに加え製品やサービスなどの革新を目指しAI利活用を推し進めており、ユーザーエクスペリエンスの向上および内閣府が提唱するAIやIoTなどの革新技術により実現する新たな未来社会の姿「Society5・0」の実現に貢献する。

加えて同社は昨年12月にAIを活用したタイヤ用ゴムの配合物性値予測システムを実用化していることから、今後は今回のタイヤ特性値予測システムと組み合わせることによって、多岐にわたるタイヤ商品開発に利用していく。