2021年12月20日

TOYO TIRE
エアレスタイヤ装着ゴルフカート

実車の試乗会開催
進化した「ノアイア」体感

TOYO TIRE(清水隆史社長)は、空気の充てんを必要としないエアレスタイヤ「noair(ノアイア)」の実用化に向けた施策の一環として「ゴルフカート用プロトタイプ」を制作、宮崎県宮崎市のフェニックスカントリークラブにおいて11月29日に試乗・技術説明会を行った。ノアイアは、パンクや空気圧不適切を排除したコンセプトタイヤとして2017年に発表。既に軽自動車に装着し、試乗会を行うことで乗り心地を体験する機会を設け、実用に足る性能を披露した。自動車メーカーや素材メーカーからの感想や意見を基に研究開発を継続しており、今回ゴルフカートに装着し、報道陣などに向けて性能の高まり具合をアピールした。

同社では〝エアレスタイヤの社会実装を展望するノアイアビジョン〟を策定。業界に先駆けて、実車での走行が可能なレベルでの近未来型エアレスタイヤの実現に向けてまい進している。今回の試乗会は、そのロードマップにおけるマイルストーンの役割を担うもので、社会実装に向けての実証の一端を果たした。エアレスタイヤはパンクレスに加え、空気圧の管理不要といったメンテナンスフリーの観点からも利点を発揮。リングやスポークは樹脂製であることから、リサイクル性も高く、摩耗したトレッド部分を貼り替えるリトレッドにも対応する。

実装化に向けた方向性としては、実路の走破性を得るための耐久性能の向上を図ると同時に、メーカーサイドでは、製品化における工程改善、機械化、自動化の推進により生産性の向上に向けた取り組みを実施。実用車を用いた開発においては、同社のテストコースにおいて実路を想定しながら舗装良路だけでなく、荒れた路面、凹凸路、登坂/降坂路、駆制動などによって装着走行評価を継続してきた。しかしながら現状では一般道路を走ることができない状況にあることから、ゴルフ場や遊園施設などといった管理されたエリア・区間における活用モデルなどさまざまなマーケットへの順応を確認、乗用車以外での付加価値を創出することで実証を促進させる。既に同社のオールシーズンタイヤ「セルシアス」の性能を踏襲した全天候型のトレッドを採り入れたノアイアをカートに装着し、実路条件で実車走行評価を行った結果、走破性を確認した。今後は、ノアイアのメリットを生かすことができる事業者や運営者の評価を通じてソリューション・マーケットの開拓を図る。

実際の試乗に先立ち、水谷保執行役員技術開発本部長および榊原一泰先行技術開発部設計研究・技術企画グループ長がノアイアの技術について説明。榊原グループ長は「将来に向けては、地域や観光地において今後、低炭素型交通として普及が見込まれるグリーンスローモビリティこそがエアレスタイヤのメリットを生かすことのできる市場であるととらえており、実用化を目指していく。エアレスタイヤはパンクの心配がなく、空気圧によるトラブルも排除したメンテナンスフリーという大きなメリットを備えており、これまでにはない価値が訴求力として効果を発揮するだろう」と将来性について強調した。

水谷本部長は「実用化に向けて、耐久性能の向上と生産性の高まりに向けた取り組みを進めてきた。生産性向上では、樹脂の混合から金型における成形、トレッドの接着などといった製造工程において量的な生産を想定し、自動化を図ることによって、品質面だけではなく、安定した製造の実現に至った。将来的には、小型のEVにおける実用化を目指しているが、まずはゴルフカートで実用化させる目的から、ゴルフ場への提案を行っている」と今後の展望について述べた。

実際の試乗における乗り心地としては、走り出しの感触、ハンドル操作の応答性、ブレーキングなどを体感。特に操縦安定性の高さ、優れたハンドル応答性を感じ取ることができた。カート停止中に据え切りを行い、タイヤの接地状態を見てみると、芝生との接地面においてパターンがゴルフ場向けにカスタマイズ設計がされている状態が見てとれた。説明によると「ゴルフ場でのカート使用環境を考慮し、芝生を傷めないようトレッド部の剛性をできるだけ落とすよう設計されている」という。「パターンデザインは当社の空気入りタイヤ開発で培ってきた技術領域の応用であり、用途に合わせた提案が可能である」という解説から、汎用性の高い仕様であることもメリットの一つであることが認識できた。同社では、実証試験を深めると同時にチューニングを進めることによって実社会への浸透を加速させる。

今回のエアレスゴルフカート試乗会には、同社のサポートアスリートである比嘉真美子選手も参加。インタビューを受けた比嘉選手は、試乗後の感想として「やや硬めのイメージで、ハンドルとの連動がよく、カーブではとても曲がりやすかった。カートのタイヤでパンクした経験があるが、ゴルフ場では狭い道や、崖の近くを走るケースもあることから、パンクの心配もなく安全に走ることができることは、ゴルフを楽しむ上で非常に大きな要素であると思う」と述べていた。