2022年1月5日

新春トップインタビュー
三ツ星ベルト

事業環境変化に強い会社に
技術、競争力生かす

【昨年6月29日に新社長として就任以来、約半年が経過しましたが】
社長としての経営方針としては、当社を事業環境の変化に強い会社にしたいと考えている。「’21中期経営計画」に掲げている通り〝持続可能な社会〟を目指してSDGsに取り組みながら、強みである技術と競争力を生かし、〝品質を作り、品質を売る〟をモットーに、環境にブレない強い企業を目指す。今期はその計画の初年度であり、業績面においては、第2四半期まで納得できる内容で進めることができた。現状でも同様に好調を維持しているが、半導体不足の問題や、コロナ禍の収束の見通しの不透明さから通期の業績予想は当初予想値を据え置いている。

SDGsについては、当社では〝人を想い、地球を想う〟という基本理念の下で事業活動を行っており、SDGsの意識の浸透も進んでいる。コスト面も大切であり技術開発、製造にわたって全社的にコスト削減に取り組み、環境対応も実施していく。持続可能な社会に必要とされる企業として、50年後、100年後を見据えて存在感を発揮し続けていきたい。

【2021年を振り返って】
コロナ禍によって、さまざまな新しい取り組みに対応する必要があり、新たなビジネススタイルの模索に追われた一年でもあった。全社的な在宅勤務の推進は初めての経験であり、システムを含めた環境の整備に苦労した。猛威を振るったコロナ禍も、国内ではやや落ち着いてきたことから、第3四半期を過ぎた辺りから営業体制も徐々に通常に近い状態に戻せると思っていたが、新型コロナウイルス感染症の新株が出現するなど、年が明けてからも予断が許されない状況が継続している。

また、海外拠点で新しい生産設備を導入する際、国内からスタッフを派遣し、現地で据え付け作業を行う予定を立てていたが、現地への渡航が不可能となったことで変更を余儀なくされた。検討を重ねた結果、リモートによって連絡を取り合い、現地のスタッフのみで対応することになったが、予定通りに設置することができた。

困難な問題に直面した場合でも、努力によって克服できる自信が得られたことで、さまざまな難局に対して前向きに取り組んでいこうという信念を一段と強く持てた。対面営業についても顧客との信頼関係構築に有効であることには違いないが、リモートで賄える部分については取り入れていく必要性を感じている。フェイス・トゥ・フェイスといった本来の姿勢を基本としながら、新しい働き方が導き出されれば、業務の一環として浸透させていく。

【需要業界の現状と今後の展望、そうした状況に対する対応について】
ベルトについては、国内の自動車向け、工作機械向けが回復傾向にあり、海外においてはATV(四輪バギー)、スノーモービル向けが引き続き好調に推移している。タイやインドネシアといった東南アジアや中国においては、コンバインなど農業機械用の補修用ベルトが引き続き売り上げを伸ばした。欧米の農業機械市場への進出に向けた取り組みも行っており、大型農業機械用のベルトを評価する設備を設けるなど設備投資も実施している。

日本の自動車メーカーからの要求品質を満たすために培ってきた技術力には自信を持っており、欧米のベルトメーカーの品質には決して負けない。自動車業界は世界的にEV化の潮流にあるが、自動車の補修用ベルトについては、ガソリン車の需要が残る地域では、補修用途は増えるものと予想している。新車のエンジン向け需要は減少する見通しにあるが、電動パワステや電動パーキングブレーキ、電動スライドドア向けのベルト需要は伸びている。電動パワステ向けについては樹脂製品も採用されており、新たな伸び代として期待している。

また、医療機器などの筐体として使われているストラクチュラルフォーム(SF)成形品も採用実績が増えており、今後さまざまな分野において採用が広がれば、新たな可能性が開かれるのではないかと見ている。SF成形は大型で複雑な形状を成形する上で有効な成形法で、寸法安定性に優れているという特長がある。

【中計の進ちょく状況については】
中長期的に成長が期待できる海外市場での事業拡大を行う基本戦略の一環として、インド市場での需要拡大に対応して新工場を設立する。マハラシュトラ州の工業団地に8万平方㍍の土地を確保し、その敷地内において23年から新工場を稼働させる計画。自動車用、二輪車用および一般産業用ベルトの生産も視野に入れている。

カーボンニュートラルに向けては目標値を掲げながら推進しており、まずは製造工程においてCO2削減を目指し、新工場の建設では太陽光パネルを設置する。既存工場についても策を練って取り組むが、海外拠点については、国ごとに状況も異なることから、それぞれ独自のやり方で進めていく。

これまでの固定観念や既成概念といったハードルも取り払いながら、中期経営計画で掲げた目標は確実にやり遂げる。